「物権変動」の過去問(権利関係・30問)
1. この分野は何か
土地や建物の所有権が、売買や相続などによって別の人に移ることを「物権変動」といいます。目に見えない権利が動くため、第三者に「これは私のものだ」と主張(対抗)するためには、目に見える証拠(対抗要件)が必要です。本分野では、不動産における対抗要件である「登記」の基本ルールと、1つの不動産をめぐって複数の人が権利を主張し合う二重譲渡などのトラブル解決のルールを学びます。
2. 学習のポイント
- 民法177条の大原則:不動産に関する物権変動は、登記をしなければ第三者に対抗することができません。たとえ先にお金を払って契約していても、先に登記を備えた方が勝つ(早い者勝ち)というのが絶対の基本ルールです。
- 登記がなくても勝てる相手:ただし、177条の「第三者」とは、「正当な利益を有する第三者」に限られます。単なる不法占拠者や、登記がないことを主張することが信義に反する者(背信的悪意者)に対しては、登記がなくても自分の所有権を主張して追い出すことができます。悪意(知っていること)だけでは背信的悪意者にはならない点に注意してください。
- 各種イベントと登記の関係:取消し、解除、時効といった他のテーマと組み合わせて、「第三者と当事者のどちらが勝つか」という事例問題が非常によく出題されます。「どちらが先に登記をしたか」で勝敗が決まるパターンと、登記がなくても勝てるパターンを整理することが重要です。
3. 実際の出題のされ方
物権変動(対抗問題)は、宅建試験で最もよく出題される最重要テーマの1つです。令和5年(2023年)問6の「時効取得と登記」、令和4年(2022年)問1などのように、単発の問題だけでなく他のテーマ(契約解除や遺産分割など)の事例問題に絡めて出題されることが多々あります。
問題文では必ず「AがBに売り、その後Cにも売った」のような関係が登場します。「誰と誰が対抗関係(ライバル関係)にあるのか」を図に書いて時系列を整理する練習を積むことが、得点アップへの近道です。
4. 間違えやすいところ
契約の「解除」と登記
- 解除「前」に現れた第三者:AがBに売り、BがCに転売した後に、AがBとの契約を解除した場合。この場合、Cは登記を備えていれば保護されます(登記がなければ保護されません)。
- 解除「後」に現れた第三者:AがBとの契約を解除した後に、Bが勝手にCに売ってしまった場合。この場合、A(本来の所有者)とC(新たな買主)は二重譲渡と同じライバル関係になります。したがって、先に登記を備えた方が勝ちます。
背信的悪意者からの転得者
Aから土地を買ったBが登記をしていない間に、Bを困らせる目的でC(背信的悪意者)がAから二重買いをして登記を備えたとします。Cは背信的悪意者なのでBに負けます。しかし、CがさらにD(単なる悪意または善意の者)に転売してDが登記を備えた場合、Dは背信的悪意者ではないため、BはDに勝つことができません(Dの勝ち)。
- 2025年度(R7) 問1 所有者AがBに甲土地を売却し、その後にBがCに甲土地を売却した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正…
- 2025年度(R7) 問6 Aが所有している甲土地についての物権変動に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。…
- 2023年度(R5) 問6 A所有の甲土地について、Bが所有の意思をもって平穏にかつ公然と時効取得に必要な期間占有を継続した場合に関する次の記述のう…
- 2022年度(R4) 問1 次の1から4までの記述のうち、民法の規定、判例及び下記判決文によれば、正しいものはどれか。 (判決文) 所有者甲から乙が…
- 2022年度(R4) 問10 AはBに対し、自己所有の甲土地を売却し、代金と引換えにBに甲土地を引き渡したが、その後にCに対しても甲土地を売却し、代金…
- 2021(R3)12月 問6 不動産に関する物権変動の対抗要件に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。…
- 2021(R3)12月 問9 AがBに対してA所有の甲建物を令和3年7月1日に①売却した場合と②賃貸した場合についての次の記述のうち、民法の規定及び判…
- 2019年度(R1) 問1 Aは、Aが所有している甲土地をBに売却した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものは…
- 2017年度(H29) 問2 所有権の移転又は取得に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。…
- 2016年度(H28) 問 3 AがA所有の甲土地をBに売却した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。…
- 2012年度(H24) 問6 A所有の甲土地についての所有権移転登記と権利の主張に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか…
- 2010年度(H22) 問4 AがBから甲土地を購入したところ、甲土地の所有者を名乗るCがAに対して連絡してきた。この場合における次の記述のうち、民法…
- 2008年度(H20) 問2 所有権がAからBに移転している旨が登記されている甲土地の売買契約に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正し…
- 2007年度(H19) 問3 Aが所有者として登記されている甲土地の売買契約に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。…
- 2007年度(H19) 問6 不動産の物権変動の対抗要件に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。なお、この問におい…
- 2005年度(H17) 問8 Aは、自己所有の甲地をBに売却し、代金を受領して引渡しを終えたが、AからBに対する所有権移転登記はまだ行われていない。こ…
- 2004年度(H16) 問3 Aは, 自己所有の建物をBに売却したが, Bはまだ所有権移転登記を行っていない。この場合, 民法の規定及び判例によれば,…
- 2004年度(H16) 問9 AはBに甲建物を売却し, AからBに対する所有権移転登記がなされた。 AB間の売買契約の解除と第三者との関係に関する次の…
- 2003年度(H15) 問3 Aは,自己所有の甲地をBに売却し引き渡したが,Bはまだ所有権移転登記を行っていない。この場合,民法の規定及び判例によれば…
- 2003年度(H15) 問12 Aが死亡し, それぞれ3分の1の相続分を持つAの子B, C及びD(他に相続人はいない。)が, 全員, 単純承認し, これ…
- 2001年度(H13) 問5 AからB, BからCに, 甲地が順次売却され, AからBに対する所有権移転登記がなされた。この場合, 民法の規定及び判例…
- 2000年度(H12) 問4 Aが, 債権者の差押えを免れるため, Bと通謀して, A所有地をBに仮装譲渡する契約をした場合に関する次の記述のうち, …
- 1998年度(H10) 問1 Aの所有する土地をBが取得したが, Bはまだ所有権移転登記を受けていない。この場合, 民法の規定及び判例によれば, Bが…
- 1997年度(H9) 問6 物権変動に関する次の記述のうち, 民法の規定及び判例によれば, 正しいものはどれか。…
- 1996年度(H8) 問3 Aの所有する土地について, AB間で, 代金全額が支払われたときに所有権がAからBに移転する旨約定して締結された売買契約…
- 1996年度(H8) 問5 A所有の土地について, AがBに, BがCに売り渡し, AからBへ, BからCへそれぞれ所有権移転登記がなされた場合に関…
- 1995年度(H7) 問2 Aの所有する土地をBが取得した後, Bが移転登記をする前に, CがAから登記を移転した場合に関する次の記述のうち, 民法…
- 1991年度(H3) 問 2 Aがその所有地をBに譲渡し, 移転登記を完了した後, Cが, Bからその土地を賃借して, 建物を建て, 保存登記を完了し…
- 1991年度(H3) 問4 Aが所有する土地について次に掲げる事実が生じた場合, 民法の規定及び判例によれば, 次の記述のうち誤っているものはどれか…
- 1989年度(H1) 問3 A 所有の土地が, A からB , B からC へと売り渡され, 移転登記も完了している。この場合, 民法の規定によれば…