「時効」の過去問(権利関係・19問)
1. この分野は何か
一定の期間が経過することによって、権利を新たに手に入れたり(取得時効)、逆に持っていた権利が消えてしまったり(消滅時効)する制度が「時効」です。法律の世界では「権利の上に眠る者は保護しない」という格言があり、長期間放置された事実状態をそのまま正当な権利として認めることで、社会の安定を図る目的があります。
2. 学習のポイント
- 時効の要件(期間):取得時効は、他人の物だと知らず過失もない(善意無過失)場合は「10年」、悪意または有過失の場合は「20年」占有を続けることで成立します。一方、消滅時効(債権)は原則として「権利を行使できることを知った時から5年」または「行使できる時から10年」で成立します。
- 時効のストップとリセット:2020年の民法改正で用語が変わり、時効の進行が一時的にストップすることを「時効の完成猶予」、時効期間が完全にリセットされてゼロから数え直しになることを「時効の更新」と呼ぶようになりました(旧用語の「停止」「中断」)。どちらに当たるかは事由ごとに決まっており、まとめて覚えると誤ります。裁判上の請求は、訴えを起こした時点ではまず完成猶予にとどまり、確定判決などで権利が確定した時に初めて更新されます(民法147条1項・2項)。これに対し、債務者が借金を認めること(承認)は、その時点で直ちに更新の事由になります(同152条1項)。
- 時効の援用:時効期間が過ぎても、自動的に権利が発生・消滅するわけではありません。利益を受ける当事者が「時効の利益を受けます」と主張(援用)して初めて効果が生じます。
3. 実際の出題のされ方
宅建試験では、取得時効を中心に毎年出題されます。令和5年(2023年)問6や令和4年(2022年)問10のように、「時効と登記」に関する事例問題が圧倒的に多く出題されます。
「Aの土地をBが長年占有して取得時効が完成した。しかし、AはCにもその土地を売却してCが登記を備えた」という事例において、BとCのどちらが勝つのか?という問題です。
この場合、CがAから土地を買ったのが「Bの時効完成の前か後か」で結論が全く逆になるため、問題文の時系列を正確に読み取る力が必要不可欠です。
4. 間違えやすいところ
時効と登記(完成前と完成後)
- 時効完成「前」に第三者が現れた場合:占有者Bの時効が完成する前に、所有者AがCに土地を売却した場合、Bは時効完成により(登記がなくても)Cに所有権を主張できます。Cは「時効期間中に単にAから名義を引き継いだだけの人(当事者と同視できる)」だからです。
- 時効完成「後」に第三者が現れた場合:Bの時効が完成した後に、AがCに土地を売却した場合、BとCは「二重譲渡」と同じ関係(対抗関係)になります。したがって、先に登記を備えた方が勝ちます(Bは登記がないとCに対抗できません)。
占有の承継
前の占有者の占有期間を引き継ぐことができます。ただし、前の占有者が悪意だった場合、その占有を引き継ぐと自分自身が善意であっても「悪意の占有」として扱われます(瑕疵の承継)。期間だけを引き継いで自分に都合の悪い事情を引き継がない、ということはできません。
- 2023年度(R5) 問6 A所有の甲土地について、Bが所有の意思をもって平穏にかつ公然と時効取得に必要な期間占有を継続した場合に関する次の記述のう…
- 2022年度(R4) 問10 AはBに対し、自己所有の甲土地を売却し、代金と引換えにBに甲土地を引き渡したが、その後にCに対しても甲土地を売却し、代金…
- 2020(R2)12月 問5 時効に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。なお、時効の対象となる債権の発生原因は、…
- 2020(R2)10月 問10 Aが甲土地を所有している場合の時効に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。…
- 2019年度(R1) 問9 AがBに対して金銭の支払を求めて訴えを提起した場合の時効の中断に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤って…
- 2018年度(H30) 問4 時効の援用に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。…
- 2015年度(H27) 問4 A所有の甲土地を占有しているBによる権利の時効取得に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか…
- 2014年度(H26) 問3 権利の取得や消滅に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。…
- 2010年度(H22) 問3 所有権及びそれ以外の財産権の取得時効に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。…
- 2009年度(H21) 問3 Aは、Bに対し建物を賃貸し、月額10万円の賃料債権を有している。この賃料債権の消滅時効に関する次の記述のうち、民法の規定…
- 2005年度(H17) 問4 Aが有する権利の消滅時効に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。…
- 2004年度(H16) 問5 A所有の土地の占有者がAからB, BからCと移った場合のCの取得時効に関する次の記述のうち, 民法の規定及び判例によれば…
- 2000年度(H12) 問2 Aは, BのCに対する金銭債務を担保するため, A所有の土地に抵当権を設定し, 物上保証人となった。この場合, 民法の規…
- 1998年度(H10) 問2 所有の意思をもって, 平穏かつ公然にA所有の甲土地を占有しているBの取得時効に関する次の記述のうち, 民法の規定及び判例…
- 1997年度(H9) 問4 AがBに対して有する100万円の貸金債権の消滅時効に関する次の記述のうち, 民法の規定及び判例によれば, 正しいものはど…
- 1995年度(H7) 問3 AのBに対する債権(連帯保証人C)の時効の中断に関する次の記述のうち, 民法の規定及び判例によれば, 誤っているものはど…
- 1992年度(H4) 問4 AがBの所有地を長期間占有している場合の時効取得に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれ…
- 1989年度(H1) 問2 Aは, Bに対し金銭債権を有しているが, 支払期日を過ぎてもBが支払いをしないので, 消滅時効が完成する前に, Bに対し…
- 1988年度(S63) 問3 時効に関する次の記述のうち, 民法の規定によれば, 正しいものはどれか。…