「賃貸借(民法)」の過去問(権利関係・30問)

1. この分野は何か

物(アパートの部屋など)を貸して、その対価として賃料を受け取る契約を「賃貸借」といいます。本分野では、貸主(賃貸人)と借主(賃借人)の間の基本的なルール、たとえば「部屋が壊れたら誰が直すのか(修繕義務)」や、借主が勝手に別の人に部屋を貸してしまった場合(無断転貸)のルールを学びます。

※なお、建物の賃貸借については、民法よりも「借地借家法」という特別法が優先して適用されます。まずはこの民法上の大原則を理解することが重要です。

2. 学習のポイント

  • 修繕義務と費用償還請求権:貸主は、借主が目的物を使用するために必要な修繕を行う義務を負います。もし借主が自分で雨漏りを直した(必要費)場合、借主は貸主に直ちにその費用を請求できます。一方、部屋にクーラーを取り付けた(有益費)場合は、契約の終了時に請求できます。
  • 敷金の充当:借主が家賃を滞納している場合、貸主は預かっている敷金からその滞納分を差し引く(充当する)ことができます。しかし、借主の方から「敷金があるんだから、今月の家賃はそこから引いてくれ」と主張することはできません。
  • 無断譲渡・無断転貸の禁止:借主は、貸主の承諾を得なければ、賃借権を譲渡したり、物件を転貸(また貸し)したりすることはできません。無断で行った場合、貸主は契約を解除することができます(ただし、背信的行為と認めるに足りない特段の事情がある場合は解除不可)。

3. 実際の出題のされ方

宅建試験では、民法の賃貸借単独での出題のほか、「借地借家法との比較」として出題されることが非常に多いです。

特に「賃借権の対抗要件(第三者に権利を主張できるか)」について、民法上は「登記」が必要ですが、借地借家法上は「建物の引渡し」があれば対抗できる、といった対比が頻出です。また、貸主が物件を第三者に売却した場合の「敷金返還債務の引き継ぎ(新所有者に引き継がれるか)」も定番の論点です。

4. 間違えやすいところ

賃貸不動産が譲渡された場合の敷金
AがBにアパートを貸して敷金を預かっている状態で、AがそのアパートをCに売却したとします。この場合、賃貸人の地位はCに引き継がれ、預かっていた敷金返還債務も当然にC(新所有者)に引き継がれます。Bが退去する際は、Cに対して敷金の返還を請求します。

適法な転貸の場合の貸主と転借人の関係
貸主Aの承諾を得て、借主BがCに部屋を転貸(適法な転貸)している場合。Aは直接Cに対して「Bが家賃を払わないから、代わりに払ってくれ」と請求することができます。ただし、Cが負う義務の範囲は「BがAに負っている賃料債務の範囲」が限度です(民法613条1項)。つまり、原賃料と転借賃料のうち低いほうの額までしか請求できません。転借賃料のほうが安ければその額まで、原賃料のほうが安ければその額までです。また、AとBが「合意解除(話し合いで契約を終わらせること)」をしても、AはCに「出ていけ」とは言えません(Cの権利は保護されます)。しかし、Bの「債務不履行による解除」の場合は、AはCを追い出すことができます。

  1. 2025年度(R7) 問7 Aは自己の所有する甲建物を事務所としてBに賃貸し(以下この問において「本件契約」という。)、その後、本件契約の期間中に甲…
  2. 2023年度(R5) 問9 Aを貸主、Bを借主として甲建物の賃貸借契約が令和5年7月1日に締結された場合の甲建物の修繕に関する次の記述のうち、民法の…
  3. 2022年度(R4) 問6 Aを貸主、Bを借主として、A所有の甲土地につき、資材置場とする目的で期間を2年として、AB間で、①賃貸借契約を締結した場…
  4. 2022年度(R4) 問8 AがB所有の甲土地を建物所有目的でなく利用するための権原が、①地上権である場合と②賃借権である場合に関する次の記述のうち…
  5. 2021(R3)12月 問9 AがBに対してA所有の甲建物を令和3年7月1日に①売却した場合と②賃貸した場合についての次の記述のうち、民法の規定及び判…
  6. 2021(R3)10月 問1 次の1から4までの記述のうち、民法の規定、判例及び下記判決文によれば、正しいものはどれか。 (判決文) 賃貸人は、特別の…
  7. 2020(R2)12月 問6 AはBにA所有の甲建物を令和2年7月1日に賃貸し、BはAの承諾を得てCに適法に甲建物を転貸し、Cが甲建物に居住している場…
  8. 2020(R2)10月 問4 建物の賃貸借契約が期間満了により終了した場合における次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。なお、賃貸借…
  9. 2018年度(H30) 問8 次の1から4までの記述のうち、民法の規定及び下記判決文によれば、誤っているものはどれか。 (判決文) 賃借人は、賃貸借契…
  10. 2016年度(H28) 問7 AがBから賃借する甲建物に、運送会社Cに雇用されているDが居眠り運転するトラックが突っ込んで甲建物の一部が損壊した場合(…
  11. 2016年度(H28) 問8 AがBに甲建物を月額10万円で賃貸し、BがAの承諾を得て甲建物をCに適法に月額15万円で転貸している場合における次の記述…
  12. 2015年度(H27) 問3 AB間で、Aを貸主、Bを借主として、A所有の甲建物につき、賃貸借契約を締結した場合と、使用貸借契約を締結した場合に関する…
  13. 2015年度(H27) 問9 土地の転貸借に関する次の1から4までの記述のうち、民法の規定、判例及び下記判決文によれば、誤っているものはどれか。 (判…
  14. 2014年度(H26) 問7 賃貸人Aから賃借人Bが借りたA所有の甲土地の上に、Bが乙建物を所有する場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によ…
  15. 2014年度(H26) 問11 甲土地の所有者が甲土地につき、建物の所有を目的として賃貸する場合(以下「ケース①」という。)と、建物の所有を目的とせずに…
  16. 2013年度(H25) 問8 次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。…
  17. 2011年度(H23) 問7 Aは、Bに対し建物を賃貸し、Bは、その建物をAの承諾を得てCに対し適法に転貸している。この場合における次の記述のうち、民…
  18. 2008年度(H20) 問10 Aは、自己所有の甲建物(居住用)をBに賃貸し、引渡しも終わり、敷金50万円を受領した。この場合に関する次の記述のうち、民…
  19. 2008年度(H20) 問 13 Aが所有している甲土地を平置きの駐車場用地として利用しようとするBに貸す場合と、一時使用目的ではなく建物所有目的を有する…
  20. 2006年度(H18) 問 10 AがB所有の建物について賃貸借契約を締結し、引渡しを受けた場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤って…
  21. 2005年度(H17) 問15 動産の賃貸借契約と建物の賃貸借契約(借地借家法第38条に規定する定期建物賃貸借、同法第39条に規定する取壊し予定の建物の…
  22. 2004年度(H16) 問13 AはBに対し甲建物を月20万円で賃貸し, Bは, Aの承諾を得たうえで, 甲建物の一部をCに対し月10万円で転貸している…
  23. 2003年度(H15) 問11 借主Aは, B所有の建物について貸主Bとの間で賃貸借契約を締結し, 敷金として賃料2カ月分に相当する金額をBに対して支払…
  24. 2001年度(H13) 問9 Aは, BからB所有の建物を賃借し, 特段の定めをすることなく, 敷金として50万円をBに交付した。この場合のAのBに対…
  25. 1998年度(H10) 問6 AはBから建物を賃借し, Bの承諾を得て, 当該建物をCに転貸している。この場合, 民法の規定及び判例によれば, 次の記…
  26. 1995年度(H7) 問7 AがBの所有地を賃借して,建物を建てその登記をしている場合に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいもの…
  27. 1994年度(H6) 問10 Aは, A所有の建物を, Bから敷金を受領して, Bに賃貸したが, Bは賃料の支払いを遅滞している。この場合, 民法の規…
  28. 1994年度(H6) 問12 AがBから賃借している建物をCに転貸した場合に関する次の記述のうち, 民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば, 誤っ…
  29. 1991年度(H3) 問13 AがBからBの所有する建物を賃借している場合に関する次の記述のうち, 民法及び借家法の規定によれば, 誤っているものはど…
  30. 1989年度(H1) 問6 Aは, 自己所有の建物をBに賃貸した。この場合, 民法及び借家法の規定によれば, 次の記述のうち誤っているものはどれか。…