管理業務主任者 劣化・調査診断・補修・改修 — 頻出論点と過去問

頻出論点

1. この分野は何か

ひび割れや鉄筋の錆、タイルの浮き、屋上の防水層の傷みは、マンションの年数とともに現れてきます。どの症状から何が読み取れるか、どう調べて、どの工法で直すかは、症状と原因の組合せごとに対応があり、耐震やバリアフリーの改修もその先にあります。

2. 実際の出題のされ方

ひび割れの補修工法や、劣化現象と原因の組合せ、塗装面の汚れの落とし方について、日本建築学会の建築保全標準や日本コンクリート工学会の指針に照らして最も不適切なものを選ばせる問題があります。また、中性化の仕組みやひび割れ補修工法の特徴を空欄補充の組合せで問う問題、コア採取で測定した中性化深さから鉄筋に到達するまでの年数を計算させる問題、非破壊検査などの劣化調査方法や壁面タイルの剥落による危険範囲を問う問題も出題されています。

改修工事や関係法令については、『建築改修工事監理指針』などに基づく屋上・バルコニーの防水工法や改修計画の適否を問う問題、窓サッシの改修工法の特徴を比較させる問題が出ています。さらに、鉄筋コンクリート造の耐震診断の指針や耐震改修の方法を問う問題、『高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律』(バリアフリー法)における用語の定義や建築物移動等円滑化基準の正誤を判断させる問題も出題されています。

3. 学習のポイント

劣化の症状は、原因ごとに現れ方が違います。

  • 症状と原因: 凍結と融解の繰り返しは、表面を薄くはがすスケーリングや、表層の骨材が膨らんで円すい状に欠けるポップアウトを起こします。ポップアウトはアルカリ骨材反応でも起こります。セメントの成分が水に溶けて表面で白く固まるエフロレッセンスは、鉄筋の塩害を直接示すものではありません。柱に帯筋の間隔で水平のひびと茶色のしみが出ていれば、内部の鉄筋の錆が疑われます。
  • アルカリ骨材反応の抑制: コンクリート全体のアルカリ量を抑える、抑制効果のある混合セメントを使う、無害と確かめた骨材を使う、の3つの対策のうち、どれか1つを確かめます。
  • 中性化の進み方: 中性化の深さは経過年数の平方根に比例します。式で書くと C=AtC = A\sqrt{t} で、AA は進みの速さを表す係数です。竣工後9年で深さが6mmだったコンクリートは、同じ条件が続けば竣工後81年で18mmと見込まれ、年数が9倍になっても深さは3倍にとどまります。モルタル塗りなどの仕上げは、この進みを遅らせます。
  • 調査の方法: 非破壊の調査は、何を調べるかで使い分けます。赤外線サーモグラフィはタイルの浮きを表面温度の差でとらえ、電磁誘導法は鉄筋の位置やかぶり厚さ、径を推定します。
  • ひび割れの補修: 工法は、ひびの幅と、温度変化などでひびが動くかどうかで選びます。固まると伸びにくい材料は、動くひびに入れると再び割れます。中性化や塩害で鉄筋が錆びて膨らみ、コンクリートが浮いている場合は、ひびを埋めるだけでは原因が残るので、傷んだ部分を取り除いて鉄筋の錆を止め、断面を修復します。
  • 塗装面の汚れ: 汚れの種類で落とし方が変わります。油分は洗剤で洗ってから水で流し、カビはこすり落とすだけでは残るので、薬剤で死滅させてから水洗いします。
  • 屋上の防水: 膜を作って水を止める工法をまとめてメンブレン防水と呼びます。液状の材料を塗る塗膜防水は、ひどく冷え込むと硬化不良を起こすので、そうした時期には施工を止めます。
  • 窓サッシの改修: 既存の枠を残すかどうかで工法の性格が変わります。枠を残して新しい枠をかぶせる工法は開口が一回り小さくなり、周りの躯体をはつって枠を取り除く工法は振動や粉じんが周囲に及びます。
  • 耐震診断: 耐震診断の指針では、各階の構造耐震指標 IsI_s と保有水平耐力に係る指標 qq を使います。鉄筋コンクリート造では、IsI_s が0.6以上で、かつ qq が1.0以上のとき、倒壊や崩壊の危険性が低いと判断されます。
  • 耐震改修: 屋上の高置水槽をなくして建物を軽くする方法や、独立柱に炭素繊維のシートを巻いて補強する方法があります。
  • バリアフリー法: 建築主等には、建築する人や所有者のほか、管理者や占有者も入ります。共同住宅は特別特定建築物に当たらないので、法律の上では、共同住宅の建築や建築物特定施設の修繕で建築物移動等円滑化基準に合わせることは努力義務です。基準のうち、不特定多数の人や主に高齢者、障害者が使う駐車場の車椅子使用者用駐車施設の数は、令和6年の改正(2025年6月施行)で変わりました。改正前は1以上でしたが、現在は駐車施設の総数が200以下ならその2%以上、200を超えるならその1%に2を足した数以上です(端数は切り上げ。機械式駐車場などに例外があります)。

4. 間違えやすいところ

屋上のコンクリート保護層のあるアスファルト防水の改修で、費用を抑えて居住者の負担も軽くする目的なのに、保護層と防水層を撤去して熱工法でやり直すとする誤答肢がありました。撤去にははつりの騒音や粉じん、廃材の処分費が伴い、熱工法はアスファルトを溶かすときの臭気や煙も出るので、目的と逆の選択です。

JASS 8の仕様ならシート防水層も塗膜防水層も、どの仕上げでも普通に歩けるとする誤答肢がありました。JASS 8には歩行を想定した仕様と、点検のときの軽い歩行だけを想定した仕様があり、露出の仕上げには普通の歩行に耐えないものもあります。

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