令和7年度 春期 応用情報技術者試験 午後 問10 クラウド移行と容量・能力管理
マネジメントサービスマネジメント
この問題は2025(R7)春 応用情報技術者 午後に出題されたものです。出題時点の法令・制度に基づく内容のため、現行の内容と一致しない場合があります。
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学習ガイド
製造業のシステムをオンプレミスからクラウドへ移行する場面での容量・能力管理を問うサービスマネジメントの問題です。本試験では正答率がやや低く、しきい値監視やオートスケーリングといったクラウドの仕組みを、従来のキャパシティ管理の目的に対応付けて考えられたかで差がつきました。この記事では、インシデントの再発防止という文脈から各設問の狙いを整理し、字数内で要点を表現する解答例を検討します。
この記事で押さえる論点
- キャパシティに起因するインシデントの対応と監視設定を検討する
- オートスケーリングなどクラウドの仕組みを容量管理へ活用する
- 移行後のキャパシティ計画で引き継ぐべき情報を特定する
出題情報
- 出題
- 2025(R7)春 応用情報技術者 午後 問10
- 配点
- 20点満点
- 模範解答
- 公表(設問ごとに掲載)
出題趣旨・採点講評(IPA 公表)
昨今,情報システムの稼働環境はオンプレミス環境からクラウド環境へ変化しつつある。クラウド環境においても,サービス提供における容量・能力(キャパシティ)管理に関するサービスマネジメント活動は重要である。本問では,オンプレミス環境からクラウドサービスへの移行を検討している製造業を営む企業のシステムを題材として,キャパシティ監視やキャパシティ計画についての実務能力を問う。
問10では,オンプレミス環境からクラウドサービスへの移行を検討している製造業のシステムを題材に,キャパシティ監視やキャパシティ計画に関する基本的な知識や考え方について出題した。全体として正答率はやや低かった。
問題本文
容量・能力管理に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。
A社は製造業を営む企業で,本社に併設する製造部配下の工場と営業部配下の2か所の営業所をもつ。A社の業績は好調であり,3年後の売上は,現在より2割の増加を見込んでいる。A社情報システム部には,システムの開発と保守を担当する開発課とシステムの運用を担当する運用課がある。運用課の責任者はC課長である。C課長の下でD君は,数名の運用担当者で構成された運用チームのリーダーとして,容量・能力(以下,キャパシティという)管理を含め,運用業務を行っている。
〔サービスの概要〕
情報システム部は,製造部に生産管理サービスを,営業部に販売管理サービスを提供している。生産管理サービスは生産管理システムによって,販売管理サービスは販売管理システムによって実現されている。生産管理サービス及び販売管理サービス(以下,両サービスという)の提供時間帯は,A社の営業時間帯と同じ8時〜18時である。製造部及び営業部は,情報システム部との間で両サービスに関するSLAに合意している。SLAでは,サービスレベル目標値の一つとして,オンライン処理の応答時間を“入力されたトランザクション要求の95%を3秒以内に応答すること”と定めている。
運用課は,オンプレミス環境のサーバ1台で,生産管理システム及び販売管理システム(以下,両システムという)を運用している。両システムの概要を表1に示す。

図の説明テキスト
| システム名称 | システムの概要 |
|---|---|
| 生産管理システム | ・生産計画の立案,進捗管理,在庫管理,品質管理などをサポートする。 ・生産実績情報は,工場内の自動化されたシステムを通じてオンラインで生産管理システムに反映され,集計・管理が行われる。 |
| 販売管理システム | ・営業部は,本社及び営業所の端末を用いて,販売管理システムに注文情報をオンラインで入力する。 ・前日の注文情報を対象にして販売分析バッチ処理(以下,H バッチという)を当日の昼休み(12時〜13時の時間帯)に実行する。H バッチの処理結果は,翌日の生産計画に反映する必要があるので,当日の13時30分までに生産管理システムに送信している。1) |
| 注1) H バッチの処理結果は,生産管理システムの生産計画案作成バッチ処理(以下,P バッチという)の入力情報となる。P バッチでは,翌日の生産計画案を作成する。製造部では,生産計画案に基づいて翌日の生産計画を策定している。 |
〔キャパシティ管理の概要〕
運用課では,次のキャパシティ管理を行っている。
(1) キャパシティ監視
キャパシティ監視として,オンライン処理については,サーバのCPU使用率,トランザクション要求件数及び応答時間を監視している。バッチ処理については,サーバのCPU使用率,ストレージの使用率及び処理の終了状態を監視している。これらの監視でイベントを検知した場合には,運用チーム宛てにメッセージが出力される。イベントには三つのイベントタイプがあり,出力メッセージには,そのうち一つを設定する。イベントタイプの概要とイベント監視例を表2に示す。

図の説明テキスト
| イベントタイプ | イベントタイプの概要とイベント監視例 |
|---|---|
| 例外 | ・サーバやサービスに障害が発生したことを示す。“例外”のイベント監視例には、サーバのダウンやサービスレベル目標値の未達などがある。 ・運用チームは、“例外”のイベントをインシデントとして扱い、情報システム部が規定したインシデント管理手順を開始する。 |
| 警告 | ・“例外”のイベントタイプには該当しない異常が発生したことを示す。“警告”のイベント監視例には、リソース使用率のしきい値超えなどがある。 ・運用チームは、あらかじめ決められた対応を行う。 |
| 情報 | ・サーバの状態,オンライン処理やバッチ処理の状態などを示す。“情報”のイベント監視例には、バッチ処理の開始や正常終了などがある。 ・運用チームに,即時に要求される対応はない。 |
(2) キャパシティ計画
両サービスは,サービス開始から7年が経過している。サービス開始当初から,運用課では,次の手順でキャパシティ計画を策定している。
- 製造部と営業部から両サービスに対する将来の利用計画を入手し,両サービスの利用者数,トランザクション要求件数,ストレージ使用量などを需要予測として求め,オンライン処理とバッチ処理のリソースの使用量を見積もる。
- 見積もった使用量とサービスレベル目標値を基に,毎年,今後3年間を見通したサービスコンポーネントのキャパシティを計画する。必要に応じて,キャパシティを増強するための方式を計画する。
なお,本年のキャパシティ計画で“3年後に現在より2割の売上の増加”の見込みから求められる需要予測に対して,2年後にはキャパシティが不足することが判明した。現在使用しているサーバ機器などのハードウェアは,既に販売中止となっていてキャパシティの増強ができないので,両システムのシステム更改を検討している。
〔生産管理サービスで発生したインシデント〕
ある日,販売管理サービスのHバッチの正常終了時刻が13時15分となり,この影響で13時05分から10分間,生産管理サービスの応答時間が遅延するインシデントが発生した。インシデントの発生状況を表3に示す。

図の説明テキスト
| 時刻 | 状況 |
|---|---|
| 12時00分 | ・Hバッチが予定どおり処理を開始した。 |
| 12時40分 | ・運用チームが,ストレージ使用率のしきい値超えを示す“警告”のイベント監視のメッセージ(以下,Sメッセージという)の出力を認識した。 ・運用チームがHバッチを手動で中断し,臨時のストレージ使用量の割当て処理 1) を実施した。 ・Hバッチを再開した。 |
| 12時50分 | ・運用チームが,再びSメッセージの出力を認識した。 ・運用チームがHバッチを再度手動で中断し,臨時のストレージ使用量の割当て処理を実施した。 ・Hバッチを再開した。 |
| 13時00分 | ・生産実績情報に関するオンライン処理のトランザクション要求件数の増加とHバッチとが重なったことからCPUが高負荷状態となる事象が発生した。 |
| 13時05分 | ・CPUの高負荷状態が続いたことによって生産管理サービスの応答時間の遅延が発生し,“例外”のイベント監視のメッセージが出力された。 |
| 13時10分 | ・Hバッチの開発担当者を含む関係者が招集され,インシデント解決チームを編成して対策の検討を開始した。 |
| 13時15分 | ・Hバッチが正常終了し,インシデント解決チームが対策を実施する前に生産管理サービスの応答時間の遅延は解消した。 |
| 注1) 販売管理システムで不要となったデータを消去してHバッチのストレージ使用量の割当てを増加する処理である。その処理で使用するツールは,Sメッセージが出力された際に運用課が使用するツールとして開発課が提供したものである。 |
その後,今回のインシデント対応についての振り返り会議が開催された。その内容は次のとおりであった。
- Hバッチのストレージ使用量が増加した原因は,前日の注文データに大口顧客からの一括注文が含まれていたことである。
- インシデント対応としては,両サービスの応答時間の遅延を発生させないために,リソース使用率の状況を注視しながら,Hバッチのデータ量を操作することになる。
- この対応を行うと,Hバッチの正常終了時刻が13時30分以降となる場合があるので,その場合に備えて①翌日の工場での製造に支障が生じないように,運用課が場を設定して製造部と営業部とともに協議を行う必要がある。
振り返り会議の内容を受けて,C課長は,今後,Hバッチの処理中にSメッセージが複数回出力されるというイベントを規定した上で,②このイベントに適切なイベントタイプを設定することにした。
C課長は,今回のキャパシティ不足の事象に対して,早急に根本的な対策が必要と考えた。そこで,C課長は,D君に,システム更改の検討を急ぐよう指示した。
〔クラウドサービスの調査〕
D君は,システム更改の検討の中で,クラウドサービスについて調査した。クラウドサービスは,利用者のリソースの使用量に応じて柔軟にリソースを追加・削除できる。なお,両システムのミドルウェアの仕様に関する指定があることから,IaaS型のクラウドサービスの採用が適していることを確認した。
D君は,複数のクラウド事業者にヒアリングし,F社のクラウドサービス(以下,Fクラウドという)を候補として選定した。Fクラウドの概要は次のとおりである。
- Fクラウドでは,サーバとストレージのリソースは,利用者の要求に応じて動的に割り当てること(以下,リソースオンデマンドという)ができる。
- Fクラウドには,キャパシティに応じてF1からF5までの契約モデルがあり,クラウド利用料が異なる。
- F社からは,リソースオンデマンド用の管理ツールとその利用権限が利用者に与えられる。管理ツールを利用すると瞬時に契約モデルのキャパシティを超えてリソースが増強され,リソース増強に見合ったクラウド利用料が加算される。増強されたリソースが不要になれば,管理ツールを利用して元のキャパシティに戻すことができる。
D君は,C課長にFクラウドについて説明した。その時のC課長とD君の会話を次に示す。
C課長: Hバッチのストレージ使用量の増加に起因する正常終了時刻の遅延を発生させないようにするには,Fクラウドではどのような対応となりますか。
D君: 運用チームがaした時点でリソースオンデマンド用の管理ツールを使って,ストレージの容量を増強します。
C課長: 了解しました。ただし,③Hバッチが正常終了した時点で実施すべきことがあるので留意してください。
C課長は,Fクラウドの導入を決定し,これによって現状のキャパシティに関する問題点を解決できると考えた。また,今月の経営会議で新製品の販売を早期化することが決定され,販売管理サービスの需要増加が見込まれた。そこで,C課長はFクラウドの契約モデルについて適切に決定していくプロセスが必要と考え,D君に対して,“契約モデルを決定していく前提となるので,事業環境の変化を踏まえ,bを見直すこと。その上で,Fクラウドの特性も踏まえつつ,両サービスの新たなcを策定すること。”と指示した。
設問と解答・解説
設問1
〔生産管理サービスで発生したインシデント〕について答えよ。
(1)
本文中の下線①について,この場で協議する内容は何か。25字以内で答えよ。
模範解答
前日の注文情報に基づく翌日の生産計画
バッチ処理遅延による生産部への業務影響と対策
採点基準(配点 3点)
知識・理解度(内容)(2点)
- 2点: オンプレミスからクラウドサービスへの移行を見据えた運用において、インシデント発生時に翌日の工場での製造業務に支障が生じないよう、具体的な施策(生産計画の見直し等)が記述されている。
- 1点: インシデント対応の必要性には触れているが、翌日の業務影響回避の観点が不十分である。
- 0点: SLAの変更を協議するなど、インシデント発生時の初動として不適切な内容が記述されている、または無解答。
論理性(構造)(1点)
- 1点: 協議すべき内容が25字以内で論理的かつ簡潔にまとまっている。
- 0点: 文意が不明確、または論理的につながっていない。
解説
クラウド環境においてもキャパシティ管理は重要です。インシデント発生時には、翌日の業務に支障を来さないための施策を最優先で検討する必要があります。
高得点のポイント
- SLAの変更ではなく、翌日の業務(製造業務)への影響回避を主眼に置いていること。
- 前日の注文情報 や 生産計画 などの具体的な業務プロセスに言及できていること。
(2)
本文中の下線②について,どのように設定するのか。15字以内で答えよ。
模範解答
例外になるように設定する。
採点基準(配点 3点)
知識・理解度(内容)(2点)
- 2点: クラウドサービスやオンプレミス環境のキャパシティ管理において、リソースを逼迫させる要因を「例外になるように」設定する旨が明確に記述されている。
- 1点: 設定変更の意図は伝わるが、「例外」などのキーワードや具体的な設定方針がやや不明確である。
- 0点: 見当違いの設定を記述しているか、無解答。
論理性(構造)(1点)
- 1点: 15字以内で設定内容が簡潔に表現されている。
- 0点: 文意が不明確である。
解説
システムの遅延を防ぐためには、リソースを逼迫させるような処理について 例外設定 などの対策を行う必要があります。
高得点のポイント
- システム遅延の要因に対する具体的な回避策として 例外 に設定することが記述できていること。
設問1(1)は,正答率がやや低かった。本問のケースでは,インシデントの発生によって翌日の工場での製造業務に支障が生じないように,製造部と営業部との間で協議する具体的な施策を解答することを期待したが,“合意しているSLAの変更を協議する”という解答が散見された。SLAは,インシデントの発生を理由に容易に変更されるべきものではないので,まずはインシデントが発生しても翌日の業務に支障を来さない施策を検討する必要性について理解してほしい。
設問2
〔クラウドサービスの調査〕について答えよ。
(1)
本文中のaに入れる適切な内容を,〔生産管理サービスで発生したインシデント〕に記載の字句を用いて,15字以内で答えよ。
模範解答
Sメッセージの出力を認識
採点基準(配点 2点)
正確性(内容)(2点)
- 2点: 「Sメッセージの出力を認識」と正確に抜き出されている。
- 1点: 概ね抜き出せているが、わずかな過不足や表記揺れがある。
- 0点: 全く異なる箇所を抜き出しているか、無解答。
解説
クラウドサービスではリソースの使用量の監視が重要です。指定されたアラートやメッセージをトリガーにしてアクションを起こす仕組みを理解する必要があります。
高得点のポイント
- 〔生産管理サービスで発生したインシデント〕に記載された Sメッセージの出力を認識 という字句を正確に抜き出していること。
(2)
本文中の下線③について,実施内容を20字以内で答えよ。
模範解答
増強したストレージの容量を元に戻す。
採点基準(配点 2点)
知識・理解度(内容)(1点)
- 1点: キャパシティ管理の観点から、不要になったリソース(増強したストレージ容量)を元に戻す運用について記述されている。
- 0点: クラウドリソースの運用に関する内容が含まれていない、または無解答。
論理性(構造)(1点)
- 1点: 20字以内で端的に実施内容が記述されている。
- 0点: 実施内容が不明確である。
解説
クラウドサービスはリソースの追加・削除を柔軟に行える利点があります。一時的にリソースを増やした場合、不要になった段階で元に戻す運用が求められます。
高得点のポイント
- クラウドの柔軟性を活かし、増強したストレージの容量 を 元に戻す(減らす)というアクションが明確に記載されていること。
(3)
本文中の下線③について,その理由を20字以内で答えよ。
模範解答
クラウド利用料が加算されるから
採点基準(配点 2点)
知識・理解度(内容)(1点)
- 1点: クラウドサービスにおけるリソースの適切な割当てに関連して、利用料(コスト)が加算されることに言及している。
- 0点: コストや利用料に関する言及がない、または無解答。
論理性(構造)(1点)
- 1点: 理由として成立する構造で20字以内で論理的に記述されている。
- 0点: 理由として成立していない。
解説
クラウドサービスは従量課金制であることが多いため、不要なリソースをそのままにしておくと無駄なコストが発生します。適切な割当てとコスト管理が重要です。
高得点のポイント
- クラウド利用料(コスト)が加算される点に言及していること。
- 増強したままにすると利用料が増加するという因果関係が明確であること。
(4)
本文中のbに入れる適切な内容を,本文中の字句を用いて,25字以内で答えよ。
模範解答
需要予測に基づくリソースの使用量の見積り
採点基準(配点 2点)
正確性(内容)(2点)
- 2点: 「需要予測に基づくリソースの使用量の見積り」と正確に抜き出されている。
- 1点: 該当箇所を抜き出しているが、一部に過不足がある。
- 0点: 全く異なる箇所を抜き出しているか、無解答。
解説
将来の需要を見越したキャパシティ管理においては、需要予測とそれに基づく見積もりが不可欠です。
高得点のポイント
- 本文中の 需要予測に基づくリソースの使用量の見積り という字句を正確に抜き出していること。
(5)
本文中のcに入れる適切な内容を,本文中の字句を用いて答えよ。
模範解答
キャパシティ計画
採点基準(配点 6点)
正確性(内容)(6点)
- 6点: 「キャパシティ計画」と正確に抜き出されている。
- 3点: 表記揺れ等があるが、該当語句を意図していることが読み取れる。
- 0点: 異なる語句を抜き出しているか、無解答。
解説
オンプレミス環境からクラウド環境への移行に関わらず、システムが要求されるパフォーマンスを維持するためには計画的なリソース管理が必要です。
高得点のポイント
- キャパシティ管理に関するサービスマネジメント活動の重要用語である キャパシティ計画 を正確に抜き出していること。
設問2(2)は,正答率がやや高かった。クラウドサービスは,リソースの追加・削除を柔軟に行うことができる利点がある一方で,その使用量の監視と適切な割当てが重要である点を理解してほしい。