平成30年度 問 9
権利関係債権総論
この問題は2018年度(H30)に出題されたものです。出題時点の法令・制度に基づく内容のため、現行の内容と一致しない場合があります。
本ページの問題文・選択肢は、原本の体裁を Web 表示用に正規化しています(改行・記号・表組みの調整)。設問の趣旨および正解に影響する変更は加えていません。
Aは、平成30年10月1日、A所有の甲土地につき、Bとの間で、代金1,000万円、支払期日を同年12月1日とする売買契約を締結した。この場合の相殺に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
解答・解説を読む
正解: 選択肢3
正解の根拠
選択肢3が正解です。
不法行為に基づく損害賠償債務については、「加害者から」相殺を主張すること(受働債権として相殺すること)は民法上禁止されています(民法509条)。これは、被害者に現実の金銭賠償を受けさせるためです。
しかし、本肢のように被害者(B)の側から自働債権として相殺を主張することは禁止されていません。したがって、Bは被害者として取得した損害賠償債権を自働債権として、売買代金債務と対当額で相殺することができます。
各選択肢の解説
選択肢1(誤り)
相殺をするためには、原則として自働債権(自分から相殺を主張する側の債権)の弁済期が到来していること(相殺適状)が必要です(民法505条)。本肢において、Bから主張する貸金債権(自働債権)の支払期日は12月31日であり、12月1日時点では弁済期が到来していません。そのため相殺適状にならず、原則として相殺することはできません(※Bが自ら期限の利益を放棄すれば相殺可能ですが、文脈上相殺適状を満たしていないため誤りとなります)。選択肢2(誤り)
差押えを受けた債権の第三債務者(B)は、差押え後に取得した債権による相殺をもって、差押債権者(C)に対抗することができません(民法511条1項)。本肢では、Cによる差押え(11月1日)の「後」にBが新たな債権を取得しているため、この債権を自働債権として相殺することは認められません。選択肢3(正しい)
前述の通り、不法行為の被害者側から損害賠償債権を自働債権として相殺することは可能です。選択肢4(誤り)
時効によって消滅した債権であっても、時効消滅する前に両債権が相殺適状になっていれば、相殺をすることができます(民法508条)。しかし本肢では、Bの貸金債権(自働債権)が時効消滅する日(9月30日)の翌日(10月1日)に、Aの売買代金債権(受働債権)が発生しています。つまり、両方の債権が同時に存在して相殺適状になった期間が一度もないため、Bは時効消滅した債権で相殺することはできません。