令和3年度 春期 ITストラテジスト試験 午後I 問4 AIを用いた筋電義手の製品開発と産学連携による事業戦略
学習ガイド
義手メーカがAIを活用して、指を個別に動かせる高度な筋電義手の開発と事業化に挑む問題です。技術的な課題を克服するための産学連携や、海外メーカの国内参入を見据えた開発・販売戦略が問われます。解答を導く際は、試作機の評価で得られた操作性や重量などの問題点が、どのような技術方針によって解決されるのかを整理します。その上で、自社の保有技術だけでは困難な開発を大学との協力でどう補うのか、開発した技術を他分野へどう展開して事業拡大につなげるのかという、全体的な戦略ストーリーを読み解きます。
この記事で押さえる論点
- 市場の脅威と自社の開発能力を踏まえ、最初の製品の目標を限定する判断理由を説明できる
- 産学連携において、自社のデータ提供と大学の先端技術という相互協力の利点を述べられる
- 試作機の課題に対し、エッジAI化などの技術的な解決策を対応づけて説明できる
- 保有技術を他市場へ展開し、事業拡大を図る戦略の意図を述べられる
出題情報
- 出題
- 2021(R3)春 ITストラテジスト 午後I 問4
- 配点
- 50点満点
- 模範解答
- 公表(設問ごとに掲載)
出題趣旨・採点講評(IPA 公表)
ITストラテジストには,社会の状況と自社の保有技術を基に,将来性が見込める事業を想定した新製品を企画する能力,さらには,どのように市場へ展開し事業を成り立たせるかといった戦略を立案する能力が求められる。
本問では,義手の製造メーカにおける新製品の企画を題材として,ITストラテジストに求められる,国内外の市場状況や技術動向を分析する能力,それを基に新製品を企画し必要となる技術を調達する能力,有効な目標と開発方針を設定する能力,事業拡大も踏まえた事業戦略を立案する能力を問う。
問4では,AIを用いた筋電義手の事業計画の立案について出題した。全体として正答率は平均的で,状況設定はおおむね理解されているようであった。
ITストラテジストは,社会環境,市場動向,技術動向を基に,AIなどの新たな技術も活用して,将来の事業の拡大も含めた戦略的な事業計画を立案し,推進する能力を高めてほしい。
問題本文
AIを用いた筋電義手に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。
D社は,義手の製造メーカである。義手とは,外傷や病気などで手を失った人が用いる人工の手のことである。D社は,外観の再現を目的とした装飾用義手と,肩,背中,反対の腕などを動かして機構部を操作し,物をつかむ,放すという手の基本的な機能を実現する能動義手を製造販売してきた。
D社の製品は,外観の再現性が高く,アフターサービスが良いので,利用者からの評判が良い。一方で,“日常生活をより自然に送れるように,指を個別に動かすことができる自由度の高い義手が欲しい”といった要望も多く寄せられている。
D社は,顧客の満足と社会貢献を社是として掲げ,顧客の要求に応える製品開発に取り組んできた。D社は,次に開発する自由度の高い義手について,信号処理及びモータ制御が要素技術として必要になると見越して,これらの技術研究を進める方針を策定した。また,将来は保有技術を他市場に生かして事業を拡大することが必要になると考えている。
〔義手を動かす技術〕
利用者の意思で動かせる義手には,能動義手のほか,筋肉の収縮時に発生する微弱な電位(以下,筋電という)を検出して,これを基にモータで手指を動かす義手(以下,筋電義手という)がある。
今まで海外も含め製品化された筋電義手は,手を失って残った前腕の表面から検出した筋電を基に,5本の指を同時に曲げて物をつかむものだった。しかし,最近では,検出した筋電の波形を分析する研究が進んだことによって,個々の指を動かすための筋電を別々に取り出す技術が発表されている。
人の手,指の構造を考慮すると,関節の数や動きから,指1本当たり4自由度,手首から指先まで合わせて24自由度があり,このような製品ができれば,日常生活でほぼ不自由なく使えると考えられている。
〔市場状況〕
義手は,ほかの福祉機器と比べ,国内において対象者が少ないことから,需要が少なく量産化によるコストダウンや売上拡大が期待できない。
筋電義手は,海外において半世紀以上前に製品化されている。海外では,紛争,災害などで手を失った人が多いこともあり需要が多く,幾つもの海外メーカが筋電義手の製品を販売してきたことで製品が行き渡り,市場としては既に飽和状態にある。現在ではメーカが淘汰されたことで寡占市場になり,価格が下がりにくい状況になっている。国内においては,筋電義手を販売しているメーカはないが,海外メーカは国内市場への進出を狙い,代理店を探し始めている。
〔今後の展望〕
自由度の高い義手の技術は,IoT,仮想現実(VR)及び触感のフィードバック技術を組み合わせることによって,宇宙空間,海底など人が立ち入ることが難しい場所で補修をしたり,ケーブルをつないだりといった細やかな作業ができる遠隔操作ロボットハンドとして,さらには,視覚,聴覚及び触覚まで活用して遠隔地にいるような体験ができるテレイグジスタンス技術としても利用できる可能性がある。
〔試作機の開発〕
D社は,手首から指先までの全ての関節を別々に動かすことを目標とし,開発期間を限定して,PCを用いた筋電義手の試作機を開発した。試作機を開発した結果,筋電を検出して物をつかむことが可能であることは確認できたが,筋電の波形に基づき全ての指を別々に動かすための情報処理が難しく,例えば,“グー”,“パー”は実現できたが,“チョキ”は開発期間内に実現できなかった。この時点で,D社の保有技術だけで自由度の高い製品を開発すると開発費が高くなることが予想された。
D社は,この試作機を数名のモニターに利用してもらい,意見を収集した。
〔国の方針〕
国は,障害のある人がそれぞれの障害の種類,状況に応じ,ハンディキャップを意識せず,自立した豊かな人生を享受できるインクルーシブ(包摂)社会を実現する目標を掲げた。この目標を達成するために,国は,IoT,AIの技術開発を強化して障害のある人のICT利活用を促進する方針を定めた。
〔大学における研究〕
G大学のH教授は研究室の学生とともに,筋電義手の技術,及び筋電義手の使用時に対象に加えた圧力をフィードバックさせたり触感を感じさせたりする技術の研究を進めている。特に,個々の利用者が自由度の高い義手を違和感なく動かすために必要な先端技術をAIで実現する研究を行っている。主な研究内容を次に示す。
- 利用者には,“手を握る”,“手を開く”,“じゃんけんをする”,“2本の指でつまむ”などの感覚で筋肉に力を入れてもらい,義手が意思どおりに動いたらその時点の筋電の波形と動作を学習させる。
- 学習のための大量のデータから,規則性やルールをAIで見つけ出し,制御する。
H教授は,研究したAIの技術を搭載した筋電義手の製品を世に出すことによって,その製品に対する社会における認知度を高めるとともに,先端技術を発展させるために必要な大量のフィールドデータと研究費用を継続的に取得したいと考えている。
さらに,H教授は,筋電義手の使用時に対象に加えた圧力をフィードバックさせたり触感を感じさせたりする技術においても先駆者として取り組み,実装可能なレベルの成果を挙げている。
〔製品化の検討〕
D社のITストラテジストであるE氏は,試作機を基に自由度の高い筋電義手を製品化することを想定し,技術上の問題点の整理をシステムアーキテクトのF氏に依頼した。F氏は,機構設計の技術者と協力し,試作機を利用したモニターの意見も踏まえ,次のように問題点とその原因を整理してE氏に報告した。
(1) “反応速度が遅く使用に違和感がある”
筋電の波形から指を動かす信号を取り出す処理と,この信号を基に指ごとのモータを動かす処理を,筋電義手の接続先であるPCで行っているからである。
(2) “生卵やガラスコップを持つのが怖い”
フィードバック機能がなく,持つ物に対してどの指でどれくらいの圧力を加えているのかが利用者には分からず,壊してしまうおそれを感じるからである。
(3) “義手が重く,連続使用時間が短い”
自由度が高まるに従いモータの数が増え,現在の技術では義手が重くなり,消費電力も増え,バッテリによる駆動可能時間が短くなるからである。
(4) “利用者に合わせるチューニングに長時間掛かる”
検出される筋電の波形が利用者によって異なり,筋電と義手との動きを合わせる作業に多くの時間を掛けているからである。
E氏は,試作機の開発結果とF氏の報告内容を考慮し,最初の筋電義手の製品を開発するに当たり,自由度は市場の製品の水準をやや上回る程度に限定すべきと考えた。また,信号を解析する情報処理の面では,ほかの組織から技術を得るべきと考え,H教授を訪問して意見交換を行った。
H教授は,意見交換の中で,D社と継続的に協力したいとの意向を示した。
〔目標と開発方針の設定〕
E氏は,筋電技術の最新の技術動向をF氏が調査した結果,及びH教授と意見交換した結果を踏まえ,次の目標を設定した。
- AIの技術を用いることによって,自由度の高い細やかな制御を可能にする。
- 常に先端技術を搭載した製品を開発し続ける。
- 将来的には,箸を使ったり,ギターを弾いたり,タッチタイピングでキーボードを打ったりすることができる,軽くて自由度の高い筋電義手を安価に提供する。
また,最初の筋電義手の製品開発に当たり,F氏の報告とH教授の意見も踏まえた上で製品の開発方針を次のように整理した。
- 試作機ではPCで行っていた機能を,AIチップ化して筋電義手に組み込む。
- 対象に加えた圧力をフィードバックさせたり触感を感じさせたりする装置を追加する。
- H教授に,継続的な相互協力の中で技術協力を依頼する。
- 短期間で開発し,国内市場で販売を開始する。
〔事業戦略の策定〕
E氏は,最初の筋電義手の製品開発に当たり,各種助成金を得て研究開発費に充当することができないかどうかを調査すべきと考えた。また,販売先を国内から海外へ展開し,量産化によるコストダウンや売上拡大を図るべきと考えた。さらに,遠隔操作ロボットハンドを手掛ける国内会社に技術供与の提案を進めるべきと考えた。
設問と解答・解説
設問1
〔製品化の検討〕について,(1),(2)に答えよ。
E氏が,最初の筋電義手の製品を開発するに当たり,自由度は市場の製品の水準をやや上回る程度に限定すべきと考えた目的は何か。市場状況及び開発方針を考慮して,30字以内で述べよ。
模範解答
海外メーカが国内市場に進出する前に販売を開始するため
採点基準
- 4点: 海外メーカが国内市場に進出しようとしている状況を正確に指摘している。
- 2点: 海外メーカの動向について触れているが、国内市場への進出という観点が不明確である。
- 0点: 海外メーカの動向について触れられていない。
- 3点: 海外メーカが進出してくる「前」に販売を開始するという意図が明確に構成されている。
- 1点: 販売の開始には触れているが、海外メーカの進出に対抗する時間的要因(〜の前に)が不明確である。
- 0点: 販売開始時期に関する方針が論理的に記述されていない。
解説
本問は、E氏が筋電義手の自由度を「市場の製品の水準をやや上回る程度」に限定した目的を、市場状況と開発方針の観点から答える問題です。
まず、〔市場状況〕の段落を確認します。
そこには、「海外メーカは国内市場への進出を狙い、代理店を探し始めている」と記載されています。つまり、D社にとって海外メーカが国内における強力な競合となることが予想されます。
次に、〔目標と開発方針の設定〕の段落を確認します。
開発方針の一つとして、「短期間で開発し、国内市場で販売を開始する」と記載されています。
これらを組み合わせると、機能を限定して開発期間を短縮する目的は、競合となる海外メーカが国内市場に本格的に進出してくるよりも先に、自社の製品を国内で販売開始するためであることが分かります。
高得点のポイント
- 海外メーカが国内市場に進出を狙っているという市場状況の脅威を的確に捉えていること
- それに対抗するため、短期間で開発して「先に(進出する前に)」販売を開始するという意図を論理的に表現できていること
E氏が,信号を解析する情報処理の面では,ほかの組織から技術を得るべきと考えたのは,どのような問題を解決するためか。40字以内で述べよ。
模範解答
D社の保有技術だけで自由度の高い製品を開発すると開発費が高くなる。
採点基準
- 4点: D社の保有技術のみで自由度の高い製品を開発することの困難さを正確に指摘している。
- 2点: 自社技術の不足には触れているが、それが自由度の高い製品開発において生じる問題であることが不明確である。
- 0点: 自社技術における課題について触れられていない。
- 3点: 自社技術のみでの開発が「開発費が高くなる」という結果に繋がることを明確に構成している。
- 1点: コストの問題に触れているが、原因との因果関係が不明確である。
- 0点: 開発費が高くなるという懸念が記述されていない。
解説
本問は、E氏が信号解析の情報処理技術を他組織から得ようと考えた理由(解決すべき問題)を答える問題です。
〔試作機の開発〕の段落を確認します。
試作機を用いた結果、「筋電の波形に基づき全ての指を別々に動かすための情報処理が難しく」とあり、自社単独での開発の困難さが示されています。さらに続けて、「この時点で、D社の保有技術だけで自由度の高い製品を開発すると開発費が高くなることが予想された」と明記されています。
つまり、他組織から技術を得る(技術協力を仰ぐ)ことで解決しようとしている問題は、自社技術のみで開発を強行した場合に発生する開発費の高騰です。
高得点のポイント
- D社の保有技術だけで自由度の高い製品を開発しようとする状況を前提として挙げていること
- その結果として「開発費が高くなる」という事業上の問題を論理的につなげていること
設問1(1)は,正答率がやや低かった。市場状況と開発方針を考慮していない解答も見受けられた。海外メーカが国内市場への進出を狙う状況に対し,短期間で開発して国内市場で販売を開始する開発方針を立てたことを理解してほしい。
設問2
〔目標と開発方針の設定〕について,(1),(2)に答えよ。
E氏が,AIチップ化して筋電義手に組み込むことを考えたのは,利用者のどのような意見を参考にしたか。20字以内で述べよ。
模範解答
反応速度が遅く使用に違和感がある。
採点基準
- 4点: 「反応速度が遅い」ことを含んで正確に指摘している。
- 2点: 「使用に違和感がある」だけ、又は処理の遅延に触れているが利用者の意見としての表現が不正確である。
- 0点: 重い・連続使用時間が短い・チューニングに長時間・持つのが怖いなど、別の意見を挙げている。
- 3点: PCでの外部処理が原因となっている不満点として、適切に該当箇所を特定できている。
- 1点: 不満点を挙げているが、PC処理との因果関係の理解が不十分な表現となっている。
- 0点: 全く別の不満点(重さ、チューニング時間など)を挙げている。
解説
本問は、AIチップ化して義手本体に組み込むという方針の背景にある、利用者の意見を答える問題です。
〔製品化の検討〕の段落において、F氏が整理した問題点を確認します。
(1) に、「“反応速度が遅く使用に違和感がある”」という利用者の意見が挙げられています。そしてその原因として、「指を動かす信号を取り出す処理と、…モータを動かす処理を、筋電義手の接続先であるPCで行っているからである」と分析されています。
〔目標と開発方針の設定〕では、「試作機ではPCで行っていた機能を、AIチップ化して筋電義手に組み込む」としており、これは明らかに (1) の原因(PCでの外部処理によるタイムラグ)を解消するための対策です。したがって、参考にした利用者の意見は (1) の記述となります。
高得点のポイント
- AIチップを義手に組み込む目的が「PCでの処理による遅延」の解消であることを理解していること
- 該当する利用者の意見「反応速度が遅く使用に違和感がある」を正確に抽出できていること
E氏が,継続的な相互協力の中でH教授に与えることができると考えた情報は何か。15字以内で答えよ。
模範解答
大量のフィールドデータ
採点基準
- 4点: 大学側が必要としている「フィールドデータ」であることを正確に抽出している。
- 2点: データや情報であることには触れているが、本文中の表現(フィールドデータ)から離れている。
- 0点: 全く別の要素(研究費用など)を情報として挙げている。
- 3点: 「大量の」フィールドデータという、製品を市場に出す企業ならではの価値ある情報として構成している。
- 1点: フィールドデータ等には言及しているが、企業から提供される量的な付加価値(大量の)が欠如している。
- 0点: 情報としての妥当性がない解答となっている。
解説
本問は、D社がH教授に提供できる「情報」は何かを答える問題です。
〔大学における研究〕の段落を確認します。
「H教授は、…製品に対する社会における認知度を高めるとともに、先端技術を発展させるために必要な大量のフィールドデータと研究費用を継続的に取得したいと考えている」とあります。
H教授が求めているもののうち、D社が製品化・販売・事業展開を行うことで得られ、相互協力の中で教授側に提供できる「情報」に該当するものは大量のフィールドデータです。(研究費用は資金であり情報ではありません)。
高得点のポイント
- H教授が欲しているもののうち、資金ではなく「情報」に該当するものを的確に切り分けていること
- 単なるデータではなく、製品の普及によって得られる「大量のフィールドデータ」であることを表現できていること
設問2(2)は,正答率がやや高かったが,研究費用など情報でない解答も一部に見受けられた。H教授が必要としている情報が何であるかを理解してほしい。
設問3
事業戦略について,(1)〜(3)に答えよ。
E氏が,筋電義手の開発に当たり,各種助成金を得て研究開発費に充当することができないかどうかを調査すべきと考えたのは,国のどのような方針からか。40字以内で述べよ。
模範解答
IoT,AIの技術開発を強化して障害のある人のICT利活用を促進する。
IoT,AIの技術開発を強化してインクルーシブ社会を実現する。
採点基準
- 4点: IoT、AIの技術開発を強化するという手段・方針が正確に含まれている。
- 2点: 技術開発の方針に触れているが、IoTやAIといった具体的な技術領域の指定が欠けている。
- 0点: 国の技術開発方針について適切に触れられていない。
- 3点: 技術開発の強化によって「障害のある人のICT利活用を促進する」または「インクルーシブ社会を実現する」という目的が明確に構成されている。
- 1点: 方針の目的部分への言及が曖昧であるか、文脈に合わない接続になっている。
- 0点: 方針がもたらす目的や結果について記述されていない。
解説
本問は、E氏が研究開発費のために助成金を調査した根拠となる「国の方針」を答える問題です。
〔国の方針〕の段落を確認します。
国が掲げる目標として「インクルーシブ(包摂)社会を実現する」ことが挙げられており、その目標を達成するための方針として「IoT、AIの技術開発を強化して障害のある人のICT利活用を促進する方針を定めた」と明確に記載されています。
D社が開発しようとしている筋電義手は、まさにAIやIoTを活用して障害のある人の生活を豊かにする製品であるため、この国の方針に完全に合致しており、関連する助成金を得られる可能性が高いと考えられます。
高得点のポイント
- 〔国の方針〕の段落から、助成金の根拠となり得る該当部分を的確に抽出できていること
- 「IoT、AIの技術開発を強化して」という手段と、「障害のある人のICT利活用を促進する(あるいはインクルーシブ社会を実現する)」という目的を論理的につなげて記述できていること
E氏は,海外で潜在的にある需要に応えるために,どのような目標を設定したか。40字以内で述べよ。
模範解答
AIの技術を用いることによって,自由度の高い細やかな制御を可能にする。
採点基準
- 4点: 既存製品(5本指同時曲げ)に対し、自由度の高い細やかな制御を可能にすることを的確に捉えている。
- 2点: 自由度や制御について触れているが、海外市場の課題との対応付けが不正確である。
- 0点: 潜在的需要について適切に触れられていない。
- 3点: 「AIの技術を用いることによって」という手段が明記され、それが自由度の高い制御に繋がる構造になっている。
- 1点: 手段としてのAI活用への言及が欠けているか、文の繋がりが不自然である。
- 0点: 手段についての記述がなく、単なる要望の列挙になっている。
解説
本問は、飽和状態の海外市場において、潜在的な需要を掘り起こすために設定された目標を答える問題です。
まず海外市場の現状について、〔市場状況〕を確認します。既存の海外製筋電義手は「5本の指を同時に曲げて物をつかむもの」であり、製品が行き渡り市場は飽和状態にあります。ここで買い替えを促す「潜在的な需要」とは、本文第2段落にある「指を個別に動かすことができる自由度の高い義手が欲しい」という利用者の要望に応える機能です。
これに対し、E氏が設定した目標は〔目標と開発方針の設定〕に箇条書きで示されています。その1つ目に「AIの技術を用いることによって、自由度の高い細やかな制御を可能にする」とあり、これがまさに従来の5本指同時の義手しか持たない海外の利用者に対する、強力な買い替え動機(潜在需要への訴求)となります。
高得点のポイント
- 海外市場の飽和要因(既存製品の機能限界)を理解し、買い替えを促す潜在需要が「自由度の高い制御」であることを把握していること
- 〔目標と開発方針の設定〕から該当する目標を抽出し、「AI技術を用いる」という手段と紐づけて記述できていること
E氏が,遠隔操作ロボットハンドを手掛ける国内会社に技術供与の提案を進めるべきと考えた目的は何か。25字以内で述べよ。
模範解答
保有技術を他市場に生かして事業を拡大する。
採点基準
- 4点: 保有技術をロボット分野などの「他市場に生かす」という技術展開の意図を正確に捉えている。
- 2点: 技術の転用には触れているが、それが他市場への参入であることの認識が甘い表現となっている。
- 0点: 技術の他市場への展開について触れられていない。
- 4点: 技術展開の結果として「事業を拡大する」という経営上の目的が明確に構成されている。
- 2点: 事業拡大のニュアンスはあるが、戦略としての目的が不明確である。
- 0点: 事業の拡大という目的が記述されていない。
解説
本問は、E氏が遠隔操作ロボットハンドを手掛ける会社への「技術供与の提案」を進める目的を答える問題です。
冒頭の第3段落に、D社の経営的な考え方として「将来は保有技術を他市場に生かして事業を拡大することが必要になると考えている」と明記されています。
また、〔今後の展望〕の段落において、今回開発する自由度の高い義手の技術は、「人が立ち入ることが難しい場所で…細やかな作業ができる遠隔操作ロボットハンドとして…利用できる可能性がある」と分析されています。
義手の市場自体は対象者が少なく規模に限界がある(〔市場状況〕)ため、義手のために培った技術をロボットハンドという「他市場」へ展開(技術供与)し、自社の事業を拡大することが戦略的な目的となります。
高得点のポイント
- 第3段落にあるD社の事業課題(保有技術の活用と事業拡大)を的確に把握していること
- 遠隔操作ロボットへの技術供与が、まさに「保有技術を他市場に生かして事業を拡大する」ためのアクションであることを論理的に紐づけていること
設問3(2)は,正答率が平均的であった。既に飽和状態にある市場に対して,買い替えを促す潜在的需要を考慮していない解答が散見された。設問で求めている内容と本文記述をよく理解して解答してほしい。