令和4年度 秋期 応用情報技術者試験 午後 問11 テレワーク環境の情報セキュリティ点検に対する監査

学習ガイド

マンション管理会社のテレワーク環境を対象にしたシステム監査の問題です。貸与PCと利用者の管理手続、発生した情報漏えいと紛失の事案、セキュリティ点検の仕組みを予備調査の記述から把握し、点検で不備が報告されなかった理由を探ります。本調査で何を確認すべきかを、内部監査部長の指示と対応付けて考えます。

この記事で押さえる論点

  • 貸与PC管理台帳・利用届・終了届・紛失届という統制の流れを把握し、予備調査の事実から不備を特定できる
  • 紛失届の提出期限(翌日まで)と実際の提出(8日後)の乖離が示す統制上の問題を説明できる
  • セキュリティ点検の項目がリスク評価に基づいて随時見直されるべきなのに、6月から使われるWeb会議システムが対象に入っていない可能性を指摘できる
  • 本調査で確認すべき監査証拠(点検結果・是正状況・リスク評価の記録)を内部監査部長の指示に沿って整理できる

問題本文

テレワーク環境の監査に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。

大手のマンション管理会社であるY社は,業務改革の推進,感染症拡大への対応などを背景として,X年4月からテレワーク環境を導入し,全従業員の約半数が業務内容に応じて利用している。このような状況の下,テレワーク環境の不適切な利用に起因して,情報漏えいなども発生するおそれがあり,情報セキュリティ管理の重要性は増大している。

Y社の内部監査部長は,このような状況を踏まえて,システム監査チームに対して,テレワーク環境の情報セキュリティ管理をテーマとして,監査を行うよう指示した。システム監査チームは,X年9月に予備調査を行い,次の事項を把握した。

〔テレワーク環境の利用状況〕

(1) テレワーク環境で利用するPCの管理
Y社の従業員は,貸与されたPC(以下,貸与PCという)を,Y社の社内及びテレワーク環境で利用する。
システム部は,全従業員分の貸与PCについて,貸与PC管理台帳に,PC管理番号,利用する従業員名,テレワーク環境の利用有無などを登録する。貸与PC管理台帳は,貸与PCを利用する従業員が所属する各部に配置されているシステム管理者も閲覧可能である。

(2) テレワーク環境の利用者の管理
従業員は,テレワーク環境の利用を申請する場合に,テレワーク環境利用開始届(以下,利用届という)を作成し,所属する部のシステム管理者の確認,及び部長の承認を得て,システム部に提出する。利用届には,申請する従業員の氏名,利用開始希望日,Y社の情報セキュリティ管理基準の遵守についての誓約などを記載する。システム部は,利用届に基づき,貸与PCをテレワーク環境でも利用できるように,VPN接続ソフトのインストールなどを行う。
各部のシステム管理者は,従業員が異動,退職などに伴い,テレワーク環境の利用を終了する場合に,テレワーク環境利用終了届(以下,終了届という)を作成し,システム部に提出する。終了届には,テレワーク環境の利用を終了する従業員の氏名,事由などを記載する。システム部は,終了届に基づき,貸与PCをテレワーク環境で利用できないようにし,終了届の写しをシステム管理者に返却する。

(3) テレワーク環境のアプリケーションシステム
テレワーク環境では,従業員の利用権限に応じて,基幹業務システム,社内ポータルサイト,Web会議システムなど,様々なアプリケーションシステムを利用することができる。これらのアプリケーションシステムのうち,Web会議システムは,X年6月から社内及びテレワーク環境で利用可能となっている。また,従業員は,基幹業務システムなどを利用して,顧客の個人情報,営業情報などにアクセスし,貸与PCのハードディスクに一時的にダウンロードして,加工・編集する場合がある。

〔テレワーク環境に関して発生した問題〕

(1) 顧客の個人情報の漏えい
Y社の情報セキュリティ管理基準では,テレワーク環境への接続に利用するWi-Fiについて,パスワードの入力を必須とすることなど,セキュリティ要件を定めている。

X年5月20日に,業務管理部の従業員が,セキュリティ要件を満たさないWi-Fiを利用してテレワーク環境に接続したことによって,貸与PCのハードディスクにダウンロードされた顧客の個人情報が漏えいする事案が発生した。

(2) 貸与PCの紛失・盗難
テレワーク環境の導入後,貸与PCを社外で利用する機会が増えたことから,貸与PCの紛失・盗難の事案が発生していた。

各部のシステム管理者は,従業員が貸与PCを紛失した場合,貸与PCのPC管理番号,紛失日,紛失状況,最終利用日,システム部への届出日などを紛失届に記載し,遅くとも紛失日の翌日までに,システム部に提出する。システム部は,提出された紛失届の記載内容を確認し,受付日を記載した後に,紛失届の写しをシステム管理者に返却する。

営業部のZ氏は,X年8月9日に営業先から自宅に戻る途中で貸与PCを紛失したまま,紛失日の翌日から1週間の休暇を取得した。同部のシステム管理者は,Z氏からX年8月17日に報告を受け,同日中に当該PCの紛失届をシステム部に提出した。

〔情報セキュリティ管理状況の点検〕

(1) 点検の体制及び時期
システム部は毎年1月に,各部における情報セキュリティ管理状況の点検(以下,セキュリティ点検という)について,年間計画を策定する。各部のシステム管理者は,年間計画に基づき,セキュリティ点検を実施し,点検結果,及び不備事項の是正状況をシステム部に報告する。システム部は,点検結果を確認し,また,不備事項の是正状況をモニタリングする。X年の年間計画では,2月,5月,8月,11月の最終営業日にセキュリティ点検を実施することになっている。

(2) 点検の項目,内容及び対象
システム部は,毎年1月に,利用されるアプリケーションシステムなどのリスク評価結果に基づき,セキュリティ点検の項目及び内容を決定する。また,新規システムの導入,システム環境の変化などに応じて,リスク評価を随時行い,その評価結果に基づき,セキュリティ点検の項目及び内容を見直すことになっている。各部のシステム管理者は,前回点検日以降3か月間を対象にして,セキュリティ点検を実施する。X年のセキュリティ点検の項目及び内容の一部を表1に示す。

表1 セキュリティ点検の項目及び内容(一部)
図の説明テキスト
項番 点検項目 点検内容
1 テレワーク環境の利用者の管理状況 テレワーク環境を利用する必要がなくなった従業員について,終了届をシステム部に提出しているか。
2 テレワーク環境に関するセキュリティ要件の周知状況 テレワーク環境への接続に利用する Wi-Fi について,セキュリティ要件は周知されているか。
3 貸与 PC の管理状況 貸与 PC を紛失した場合,遅くとも紛失日の翌日までに,紛失届をシステム部に提出しているか。
4 アプリケーションシステムの利用権限の設定状況 セキュリティ点検対象のアプリケーションシステムに対して,適切な利用権限が設定されているか。

(3) 点検の結果
業務管理部及び営業部のシステム管理者は,テレワーク環境導入後のセキュリティ点検の結果,表1の項番2及び項番3について,不備事項を報告していなかった。

〔内部監査部長の指示〕

内部監査部長は,システム監査チームから予備調査で把握した事項について報告を受け,X年11月に実施予定の本調査で,テレワーク環境に関するセキュリティ点検について重点的に確認する方針を決定し,次のとおり指示した。

(1) 表1項番1について,aとbを照合した結果と,セキュリティ点検の結果との整合性を確認すること。
(2) 表1項番2について,業務管理部におけるセキュリティ点検の結果を考慮して,システム管理者がcしているかどうか,確認すること。
(3) 表1項番3について,紛失届に記載されているdとeを照合した結果と,セキュリティ点検の結果との整合性を確認すること。
(4) 表1項番4について,システム部がfの結果に基づいて,X年8月のセキュリティ点検対象のアプリケーションシステムとして,gの追加を検討したかどうか,確認すること。
(5) セキュリティ点検で不備事項が発見された場合,システム管理者が不備事項の是正状況を報告しているかどうか確認するだけでは,監査手続として不十分である。システム部がhしているかどうかについても確認すること。

設問と解答・解説

設問1

〔内部監査部長の指示〕(1)のa,bに入れる適切な字句を,それぞれ15字以内で答えよ。

(1)配点 3点

空欄 aについて答えよ。

模範解答

従業員の異動,退職などの状況

採点基準

正確性(内容)3点
  • 3点: 本文中の該当箇所から正確な字句を抜き出し(または要約し)、従業員の異動や退職等の状況について文脈に完全に適合する解答となっている。
  • 1点: 該当箇所からの抜き出し(または要約)は概ね正しいが、不要な字句が含まれる、または必要な字句が一部欠けているため、文脈への適合がやや不十分である。
  • 0点: 文脈に合致しない字句を解答している、または無回答である。

解説

解答の根拠

業務部門などのシステム管理者は、テレワーク環境の利用者を適切に管理する役割を担います。特に利用終了時の手続きにおいて、管理者が利用者の従業員の異動や退職といった状況を正確に把握できているかが、情報セキュリティを確保する上で重要となります。本問では、情報セキュリティ管理状況の点検の実効性を確認するための監査手続として、その状況確認の要点について問われています。

高得点のポイント

  • 従業員の異動や退職などの状況を把握していることを示す要素を含めること。
  • 指定された字数(15字以内)に収まるよう簡潔に記述すること。
(2)配点 3点

空欄 bについて答えよ。

模範解答

終了届の記載内容

採点基準

正確性(内容)3点
  • 3点: 本文中の該当箇所から正確な字句を抜き出し(または要約し)、終了届の記載内容について文脈に完全に適合する解答となっている。
  • 1点: 該当箇所からの抜き出し(または要約)は概ね正しいが、不要な字句が含まれる、または必要な字句が一部欠けているため、文脈への適合がやや不十分である。
  • 0点: 文脈に合致しない字句を解答している、または無回答である。

解説

解答の根拠

テレワークの利用終了に際しては、所定の手続きに従い適切な処理が行われる必要があります。業務部門のシステム管理者が提出された終了届の記載内容を正確に確認し、アクセス権の削除や機器の返却が正しく実施されるプロセスを担保しているかを監査することが求められます。

高得点のポイント

  • 提出される終了届に関する記述を含めること。
  • その記載内容が確認対象であることを明確に示すこと。

設問1は,正答率が低かった。テレワーク環境の利用者を管理するために,業務部門などのシステム管理者がどのような役割を担うのかを理解した上で,適切な監査手続を導き出してほしい。

設問2

配点 3点

〔内部監査部長の指示〕(2)のcに入れる適切な字句を15字以内で答えよ。

模範解答

セキュリティ点検を適切に実施

採点基準

正確性(内容)3点
  • 3点: 本文中の該当箇所から正確な字句を抜き出し(または要約し)、セキュリティ点検の実施状況について文脈に完全に適合する解答となっている。
  • 1点: 該当箇所からの抜き出し(または要約)は概ね正しいが、不要な字句が含まれる、または必要な字句が一部欠けているため、文脈への適合がやや不十分である。
  • 0点: 文脈に合致しない字句を解答している、または無回答である。

解説

解答の根拠

テレワーク環境におけるインシデントや問題を未然に防ぐためには、利用者自身によるセキュリティの自己点検が不可欠です。監査人は、単に点検表が存在することを確認するだけでなく、利用者がセキュリティ点検を適切に実施しているかどうかという実効性を証跡から確かめる監査手続を立案する必要があります。

高得点のポイント

  • セキュリティ点検が対象であることを明記すること。
  • それらが適切に実施されている状況を確認する旨を含めること。

設問2は,正答率がやや低かった。テレワーク環境に関して発生した問題を考慮して,情報セキュリティ管理状況の点検の実効性を確認するために,適切な監査手続を導き出してほしい。

設問3

〔内部監査部長の指示〕(3)のd,eに入れる適切な字句を,それぞれ10字以内で答えよ。

(1)配点 2点

空欄 dについて答えよ。

模範解答

貸与PCの紛失日

採点基準

正確性(内容)2点
  • 2点: 本文中の該当箇所から正確な字句を抜き出し(または要約し)、貸与PCの紛失日について文脈に完全に適合する解答となっている。
  • 1点: 該当箇所からの抜き出し(または要約)は概ね正しいが、不要な字句が含まれる、または必要な字句が一部欠けているため、文脈への適合がやや不十分である。
  • 0点: 文脈に合致しない字句を解答している、または無回答である。

解説

解答の根拠

情報セキュリティインシデント(機器の紛失など)が発生した場合、被害の拡大を防ぐために迅速な報告が求められます。監査では、事象発生の起点である貸与PCの紛失日と、報告日である届出日とを比較し、規定された時間内に速やかな報告が行われているかを確認します。

高得点のポイント

  • 起点となる貸与PCの紛失日(または発生日)を明確に示すこと。
  • 指定字数(10字以内)に過不足なくまとめること。
(2)配点 2点

空欄 eについて答えよ。

模範解答

システム部への届出日

採点基準

正確性(内容)2点
  • 2点: 本文中の該当箇所から正確な字句を抜き出し(または要約し)、システム部への届出日について文脈に完全に適合する解答となっている。
  • 1点: 該当箇所からの抜き出し(または要約)は概ね正しいが、不要な字句が含まれる、または必要な字句が一部欠けているため、文脈への適合がやや不十分である。
  • 0点: 文脈に合致しない字句を解答している、または無回答である。

解説

解答の根拠

インシデント発生時の対応状況を評価するためには、事象の発生から報告までの所要時間を確認する必要があります。貸与PCの紛失日に対して、実際に報告が行われたシステム部への届出日を照合することで、連絡体制が有効に機能しているかを監査します。

高得点のポイント

  • 報告の終点となるシステム部への届出日を明確に示すこと。
  • 指定字数(10字以内)に過不足なくまとめること。

設問4

〔内部監査部長の指示〕(4)のf,gに入れる適切な字句を,それぞれ10字以内で答えよ。

(1)配点 2点

空欄 fについて答えよ。

模範解答

リスク評価

採点基準

正確性(内容)2点
  • 2点: 本文中の該当箇所から正確な字句を抜き出し(または要約し)、リスク評価の実施について文脈に完全に適合する解答となっている。
  • 1点: 該当箇所からの抜き出し(または要約)は概ね正しいが、不要な字句が含まれる、または必要な字句が一部欠けているため、文脈への適合がやや不十分である。
  • 0点: 文脈に合致しない字句を解答している、または無回答である。

解説

解答の根拠

テレワークの常態化に伴い、新たなコミュニケーションツール等を導入する機会が増加しています。ツールの導入にあたっては、情報漏えいや不正アクセスを防ぐため、事前にシステム部などの主管部門が十分なリスク評価を実施し、安全性を確認していることが求められます。

高得点のポイント

  • 導入前に行うべきリスク評価(またはセキュリティ評価)というキーワードを含めること。
  • 指定字数(10字以内)で端的に表現すること。
(2)配点 2点

空欄 gについて答えよ。

模範解答

Web会議システム

採点基準

正確性(内容)2点
  • 2点: 本文中の該当箇所から正確な字句を抜き出し(または要約し)、Web会議システムについて文脈に完全に適合する解答となっている。
  • 1点: 該当箇所からの抜き出し(または要約)は概ね正しいが、不要な字句が含まれる、または必要な字句が一部欠けているため、文脈への適合がやや不十分である。
  • 0点: 文脈に合致しない字句を解答している、または無回答である。

解説

解答の根拠

テレワーク環境下でのコミュニケーション手段として、新たに導入された具体的なツールが監査の対象となります。事前のリスク評価を適正に受けているべき対象として、業務で利用が拡大しているWeb会議システムなどが該当します。

高得点のポイント

  • 評価の対象となっているWeb会議システムを正確に抜き出し、または記述すること。
  • 指定字数(10字以内)で端的に表現すること。

設問5

配点 3点

〔内部監査部長の指示〕(5)のhに入れる適切な字句を20字以内で答えよ。

模範解答

不備事項の是正状況をモニタリング

採点基準

正確性(内容)3点
  • 3点: 本文中の該当箇所から正確な字句を抜き出し(または要約し)、不備事項の是正状況をモニタリングする旨が文脈に完全に適合する解答となっている。
  • 1点: 該当箇所からの抜き出し(または要約)は概ね正しいが、不要な字句が含まれる、または必要な字句が一部欠けているため、文脈への適合がやや不十分である。
  • 0点: 文脈に合致しない字句を解答している、または無回答である。

解説

解答の根拠

情報セキュリティ管理状況の自己点検によって不備事項が発見された場合、業務部門内での是正措置にとどまらず、システムリスク管理を担う部門が第三者的な視点で関与することが重要です。具体的には、発見された不備事項の是正状況をモニタリングし、確実な改善が行われるよう管理・監督する役割を果たします。

高得点のポイント

  • 自己点検で発見された不備事項に対する是正状況を対象とすること。
  • システムリスク管理部門の役割であるモニタリングを実施している旨を含めること。
  • 指定字数(20字以内)で過不足なくまとめること。

設問5は,正答率が平均的であった。情報セキュリティ管理状況の点検で不備事項が発見された場合,システムリスク管理を担う部門がどのような役割を担うのかを理解した上で,適切な監査手続を導き出してほしい。

Spineチーム