令和3年度 春期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ 問題 問1 複数サプライヤ環境でのサービスレベル管理とインシデント対応
マネジメントサービスマネジメント調達・契約
学習ガイド
複数の外部サプライヤが関わる検索サービスのサービスレベル管理とインシデント対応を扱う問題です。要求事項と契約案のギャップ調整、応答時間のSLA達成状況の評価、インシデント発生時の利用者への通知内容、再発に備えたインシデントモデルの整備とフォーラムの活用手順を確認し、事例の時系列に沿って各社の役割と連携のポイントを読み解きます。
この記事で押さえる論点
- サービスの要求事項とサプライヤの契約条件の差異を特定し、SLAを満たすための調整箇所を説明できる
- サービス中断を伴うインシデント発生時に、利用者に対して通知すべき内容を述べられる
- 応答時間の実績データからパーセンタイル値を算出し、サービスレベル目標の達成状況を説明できる
- インシデントモデルを整備することによる、早期解決に向けたサービス提供者側の利点を述べられる
出題情報
- 出題
- 2021(R3)春 ITサービスマネージャ 午後I 問1
- 配点
- 50点満点
- 模範解答
- 公表(設問ごとに掲載)
出題趣旨・採点講評(IPA 公表)
ITサービスマネジメントでは,提供するサービスの一部機能を外部供給者に委託する場合,サービスの要求事項を考慮し,SLAを顧客と合意するに当たって,外部供給者との調整が重要になる。
本問では,外部供給者が複数存在するサービスを題材として,社内顧客や外部供給者との調整能力,及びインシデント発生に備えた調整能力を問う。
問1では,複数の外部供給者とのサービス開始前の調整,及びサービス開始後のインシデント発生への対応を題材に,供給者管理について出題した。全体として正答率は平均的であった。
問題本文
複数の外部供給者に対する供給者管理に関する次の記述を読んで,設問1〜4に答えよ。
K社は,医薬品メーカであり,医薬品の研究開発や製造を行っている。K社の研究部には,研究開発を専門に行う従業員(以下,研究職員という)がおり,貸与されたPCを使用して研究開発を行っている。
K社の情報システム部は,社内システムの開発,保守,運用,及びサービスマネジメントを行っている。社内システムの一つに研究開発管理システムがあり,研究開発管理サービスとして研究職員にサービスを提供している。情報システム部は,研究開発管理サービスのサービスデスクの機能の一部を,L社に外部委託している。L社が行うサービスデスクの機能を図1に示す。

図の説明テキスト
・K社研究職員から,対象とするサービスに関する問合せ,パスワード変更など(以下,これらをサービス要求という)を電話又は電子メールで受け付ける。
・サービスデスクの担当者は,ノウハウデータベース 1) を参照し,サービス要求を実現 2) する。
・電話でのサービス受付時間帯は,平日の 10 時から 18 時までであり,電子メールでのサービス受付時間帯は 24 時間 365 日である。
・サービス要求の実現は,平日の 10 時から 18 時 30 分までの間に行う。
・ノウハウデータベースを参照しても実現できなかったサービス要求,及びノウハウデータベースに登録されていないサービス要求の内容を情報システム部に電子メールで送信する。3)
(1) 電話での受付の場合は 30 分以内に送信する。
(2) 電子メールでの受付の場合は次の時刻までに送信する。
① 平日の 0 時から 10 時までに受け付けたサービス要求は,同日の 10 時 30 分まで
② 平日の 10 時から 18 時までに受け付けたサービス要求は,受付時刻から 30 分以内
③ 平日の 18 時から 24 時まで,又は休日に受け付けたサービス要求は,翌営業日の 10 時 30 分まで
注 1) L社は,K社情報システム部が作成したサービス要求の実現方法についての指示書をノウハウデータベースに登録している。
2) サービス要求の実現とは,例えば,サービス要求が問合せの場合は回答を行うことであり,サービス要求がパスワードの変更要求の場合は変更を行うことである。
3) 電子メールを受信した情報システム部は,サービス要求の対応をサービスデスクから引き継ぎ,サービス要求を実現する。
〔新規システムの開発〕
K社の研究職員が作成した論文や研究資料は,これまでK社内のファイルサーバに保管していたが,研究開発の効率向上のため,研究職員が自ら論文や研究資料を登録し,研究部内の論文や研究資料を検索できるシステム(以下,検索システムという)を新規に開発した。
検索システムは,検索サーバ2台,データベースサーバ1台,負荷分散装置(以下,LBという)1台で構成され,平日の8時から22時まで稼働する。サーバ機器,LBはM社が納入し,設定した。また,アプリケーションプログラム(以下,APという)は,N社が設計し,製造した。
〔検索サービスの開始〕
情報システム部は,検索システムを研究職員が利用する検索サービスとして提供する。検索サービスのサービスデスク機能は,L社に外部委託する。また,情報システム部は,M社にシステム構成機器の管理サービスを,N社にAP管理サービスを,それぞれ外部委託し,支援を受けることにした。
情報システム部のITサービスマネージャであるP氏は,検索サービスの開始に向けて,L社,M社及びN社(以下,それぞれをサプライヤ各社という)と必要となる契約を検討した。また,情報システム部とサービスの顧客である研究部との間で合意するサービスレベル項目とサービスレベル目標を検討した。
P氏は,研究部に対して検索サービスへの要求事項をヒアリングした。研究部の要求事項は,次のとおりである。
- 検索サービスは,平日の8時から22時まで利用したい。
- サービスデスクの電話受付は,平日の10時から18時までとしてほしい。
- 問合せの回答は,翌営業日の18時までにほしい。
- 検索を開始してから,5秒以内で検索結果を表示してほしい。
- 検索サービスを利用できない障害が発生した場合,2時間以内で検索サービスを利用可能な状態にしてほしい。
P氏は,サプライヤ各社から提示された主な契約事項の案を表1にまとめた。

図の説明テキスト
| 会社名 | 契約事項の案 |
|---|---|
| L社 | ・サービスデスクの対象とするサービスに検索サービスを加える。 ・サービスデスクの機能は図1と同内容で行う。 |
| M社 | ・情報システム部からの調査依頼、及びインシデントの解決の依頼を平日の 8 時から 22 時まで受け付け、翌営業日の 17 時までに調査依頼の回答又はインシデントの解決を行う。 ・調査の結果、システム構成機器の部品交換が必要と判明した場合、平日の 8 時から 22 時までの間で部品交換を行う。ただし、平日の 18 時以降に部品交換が必要と判明した場合は、翌営業日に対応を行う。 |
| N社 | ・情報システム部からの調査依頼、及びインシデントの解決の依頼を平日の 8 時から 22 時まで受け付け、翌営業日の 17 時までに調査依頼の回答又はインシデントの解決を行う。 ・AP の不具合が判明した場合、AP に対する改修を行う。改修スケジュールは改修の規模を踏まえ、情報システム部と調整する。 |
P氏は,研究部の要求事項とサプライヤ各社から提示された主な契約事項の案に対して,研究部,サプライヤ各社と調整を行った。特に,M社とは,(ア)システム構成機器の部品交換に関する契約事項の案についての調整を行った。
P氏は,サービスレベル項目とサービスレベル目標を検討し,情報システム部と研究部で正式に合意することにした。P氏が検討したサービスレベル項目とサービスレベル目標は,表2のとおりであり,目標の達成状況は月次で集計する。

図の説明テキスト
| 項番 | サービスレベル項目 | サービスレベル目標 |
|---|---|---|
| ① | 検索サービスのサービス提供時間 | 平日の 8 時から 22 時まで |
| ② | サービスデスク受付時間帯 | (電話の場合)平日の 10 時から 18 時まで |
| ③ | サービス要求実現の実施期限遵守率 1) | 95%以上 |
| ④ | 検索サービスの応答時間 | 5 秒以内(90 パーセンタイル値 2)) |
| ⑤ | サービス回復時間遵守率 3) | 95%以上 |
注 1) 受け付けたサービス要求を翌営業日 18 時までに実現した割合のこと
2) パーセンタイル値とは、当該月の応答時間の累積分布において、応答時間がある数値以下に含まれる百分率のこと。例えば、90 パーセンタイル値とは、検索件数が 100 件存在した場合、応答時間を早いものから順に並べたときに 90 番目に該当する値のこと
3) インシデントが発生したときの受付から回復までを 2 時間以内で実施した割合のこと
P氏は,サービスレベル目標について社内で調整を行い,情報システム部はサプライヤ各社と契約を締結した。また,サプライヤ各社は,各社間で直接契約を締結しないので,P氏は,サプライヤ各社とのコミュニケーションの方法として,検索サービスに関する変更情報の共有,情報システム部と研究部とのサービスレベル報告会議の議事録の送付,及び情報交換と討論を行う会議(以下,フォーラムという)を行うことにした。
〔検索サービスで発生したインシデント〕
検索サービスが開始して3か月が経過した10月1日に,サービスデスクは利用者から“検索結果が表示されるまで時間を要する”といった問合せを受け付けた。サービスデスクの担当者は,ノウハウデータベースを参照し,指示書に従って“しばらく待ってから再度検索してください。”と回答した。同様の問合せが,その後20分で10件発生した。そこで,最初に受け付けた問合せから20分経過して,サービスデスクは,応答遅延の事象が多発している状況を情報システム部に電子メールで送信した後,電話でも連絡した。連絡を受けたP氏は,発生している事象をインシデントと判断した。情報システム部ではインシデントの解決方法が分からない事象だったので,P氏は,M社とN社に調査及びインシデントの解決の依頼を行った。
N社は,検索サーバとデータベースサーバのログを使って調査を行ったが,特に不具合は発見されなかった。M社が機器の調査を行ったところ,LBの動作が不安定になっていることが判明し,M社は情報システム部にインシデントの回避策として,サービスを一旦停止し,LBの再起動を行ってサービスを再開する方法を提示した。LBの再起動には10分程度必要であるとの内容であった。情報システム部は回避策の実施を決定し,(イ)サプライヤ各社に通知した。情報システム部は回避策を実施し,検索サービスを再開した。その結果,応答遅延の事象は発生しなくなった。最初の応答遅延の問合せから検索サービス再開までに,1時間45分掛かった。
M社がLBの製品メーカに詳細な調査を依頼したところ,LBのファームウェアの不具合で,間欠的な障害が発生すること,及び再発時はLBを再起動することで不安定な状態を解消することができることが判明した。M社は,情報システム部に対しインシデントの原因,インシデント再発時の対処方法,及び製品メーカから問題を解決するファームウェア改修版が提供され,検索サービスのLBのファームウェアの変更が完了するまでに約3か月を要することを報告した。
〔応答時間の実績の集計〕
P氏は,10月分の検索サービスの応答時間の実績を集計した。10月の検索件数の合計は5,000件であり,10月の応答時間の実績は表3のとおりであった。

図の説明テキスト
| 応答時間 (秒) | 1.9 | 2.0 | 2.1 | 2.2 | 2.3 | 2.4 | 2.5 | 8.0 | 8.1 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 件数 (件) | 500 | 750 | 1,000 | 1,000 | 750 | 550 | 200 | 150 | 100 |
注記 例えば2.6秒など,記載していない応答時間の件数は0件である。
〔検索サービスの改善〕
P氏は,サプライヤ各社とフォーラムを開催することにした。フォーラムで話し合われた結果,ファームウェア改修版が提供されるまでに,LBの動作が不安定になるインシデントが発生する可能性が高いことから,インシデントが発生したときの処置をインシデントモデルとしてあらかじめ決めておき,情報システム部とサプライヤ各社で共有することになった。M社はLBの製品メーカからの情報を基に,“10分間で3件以上応答遅延の問合せが発生する場合は,LBの動作が不安定と判断できる”との見解を示した。そこで,今後このような事象が発生した場合,情報システム部とサプライヤ各社は,インシデントモデルに定義された役割,インシデントプロセスの活動,エスカレーションの手順などに従って,定義した時間内にインシデントの解決を図ることを目標にすることとした。サプライヤ各社との討論の結果は,改善案としてまとめられた。P氏はサプライヤ各社の賛同を得て,今後の活動を決定した。フォーラムで決定した検索サービスの改善案は表4のとおりである。

図の説明テキスト
| 会社名 | サービスの改善案 |
|---|---|
| K社 | ・K社とサプライヤ各社でサービスレベルの達成状況,インシデント情報及びサービス要求実現の内容を共有できる仕組みを導入する。 ・研究部に対して,検索サービスの応答が遅いと感じた場合には,サービスデスクに連絡してもらうことを依頼する。 |
| L社 | ・10分間で3件以上,検索サービスの応答が遅いとの問合せを受け付けた場合,サービスデスクは,a |
| M社 | ・検索システムで導入している機器のファームウェアなどに関する不具合の情報,及び不具合に対するパッチ情報がないかどうかを定期的に確認する。 |
| N社 | ・応答時間の実績集計を自動化するツールを作成する。 |
P氏は,表4の改善案について順次,実施していくことにした。また,P氏は,フォーラムで行うサプライヤ各社の検討や活動が,(ウ)サービスレベル目標を達成するために有効と判断し,今後も定期的にフォーラムを開催することにした。
設問と解答・解説
設問1
〔検索サービスの開始〕について,本文中の下線(ア)でM社の契約事項の案を調整する理由は何か。40字以内で答えよ。
模範解答
2時間以内に利用可能な状態にするという要求事項を満たさないおそれがあるから。
項番⑤のサービスレベル目標を達成できないおそれがあるから。
採点基準
- 5点: 次のどちらか一方を記述している。(a) 研究部の要求事項「障害時に2時間以内で検索サービスを利用可能な状態にする」を満たせない(おそれがある)、(b) 表2 項番⑤(サービス回復時間遵守率)のサービスレベル目標を達成できない(おそれがある)。(b) は「2時間」の数値がなくても、項番⑤又はサービス回復時間遵守率を特定していれば満点。
- 3点: M社案では18時以降の部品交換が翌営業日になり、サービス停止や回復が長引く旨は記述しているが、どの要求事項・目標に反するかを特定していない。
- 0点: 応答時間・提供時間帯など無関係な項目、費用や契約形態の話など、理由を正しく指摘できていない。
- 3点: 「~という要求を満たせないおそれがあるから」など、理由を説明する自然で明確な構成になっている。
- 0点: 文脈が不明瞭であり、理由としての説明構造を満たしていない。
解説
解答の根拠
- 本文中の〔検索サービスの開始〕において、情報システム部のP氏はM社と「システム構成機器の部品交換に関する契約事項の案」について調整を行っています。
- 表1のM社からの提示案では、「平日の18時以降に部品交換が必要と判明した場合は、翌営業日に対応を行う」とされています。
- 一方、研究部の要求事項には「検索サービスを利用できない障害が発生した場合、2時間以内で検索サービスを利用可能な状態にしてほしい」とあり、これは表2の項番⑤「サービス回復時間遵守率」の目標につながっています。
- M社の提案どおりに契約すると、夜間(例えば18時以降)に部品交換が必要になった場合、翌営業日までの長期間サービスが停止することになり、要求事項や目標である「2時間以内」の回復を満たせないおそれがあるため、調整が必要となりました。
高得点のポイント
- 研究部の要求事項である「2時間以内に利用可能な状態にする」こと、または表2のサービスレベル目標(項番⑤)を根拠として挙げていること。
- M社の案のままではその目標を達成できない(満たさないおそれがある)という因果関係を論理的に記述すること。
設問1は,具体的な要求事項やサービスレベル項目に着目した解答が少なく,正答率が低かった。
設問2
〔検索サービスで発生したインシデント〕について,本文中の下線(イ)でサプライヤ各社に通知している。サプライヤ各社以外に,通知すべき相手先と通知すべき内容を40字以内で述べよ。
模範解答
利用者に,インシデントの内容,サービス停止時刻及び回復予定時刻を通知する。
採点基準
- 5点: 相手先(利用者)と、必要な通知内容(インシデント内容、停止時刻、回復予定など)が全て記述されている。
- 3点: 相手先は記述されているが、通知内容の一部(停止時刻や回復予定など)が欠落している。
- 0点: 相手先が誤っている、あるいは通知内容が的外れである。
- 3点: 誰に対して、何を通知するのかが論理的に整理され、簡潔にまとめられている。
- 0点: 文の構造が乱れており、相手先と内容の関係が不明瞭である。
解説
解答の根拠
- 〔検索サービスで発生したインシデント〕において、情報システム部はM社から提示された「サービスを一旦停止し、LBの再起動を行ってサービスを再開する」という回避策を実施することを決定し、下線(イ)でサプライヤ各社に通知しました。
- この回避策を実施すると、検索サービスが一時的に利用できなくなります。
- そのため、サプライヤ各社だけでなく、サービスの直接の顧客・利用者である「研究部(研究職員)」に対しても、サービスが停止することを事前に通知する必要があります。
- 通知すべき内容としては、何が起こっているか(インシデントの内容)、いつサービスが止まるのか(サービス停止時刻)、そしていつ再開する見込みか(回復予定時刻)を明確に伝えることが求められます。
高得点のポイント
- 通知すべき相手先として、検索サービスの「利用者(研究職員)」を明記していること。
- 通知すべき内容として、「インシデントの内容」「サービス停止時刻」「回復予定時刻」の3要素を適切にまとめていること。
設問3
〔応答時間の実績の集計〕について答えよ。
表3から90パーセンタイル値に該当する応答時間は何秒か答えよ。
模範解答
2.4
解説
解答の根拠
- 表3「10月の応答時間の実績」から90パーセンタイル値を求めます。
- 表2の注2)に「例えば、90 パーセンタイル値とは、検索件数が 100 件存在した場合、応答時間を早いものから順に並べたときに 90 番目に該当する値のこと」と定義されています。
- 表3より、10月の検索件数の合計は 5,000件 です。
- 5,000件の90パーセンタイル値は、応答時間が早いものから順に並べて 番目のデータとなります。
- 表3の件数を早い順(応答時間の短い順)に累積します。
- 1.9秒: 500件(累計 500件)
- 2.0秒: 750件(累計 1,250件)
- 2.1秒: 1,000件(累計 2,250件)
- 2.2秒: 1,000件(累計 3,250件)
- 2.3秒: 750件(累計 4,000件)
- 2.4秒: 550件(累計 4,550件)
- 4,500番目のデータは、応答時間「2.4秒」の区間に含まれます。したがって、90パーセンタイル値は 2.4秒となります。
10月の応答時間に関するサービスレベル目標は,達成,未達成のどちらか。
模範解答
選択肢ア: 達成
解説
解答の根拠
- 表2の項番④より、応答時間のサービスレベル目標は「5秒以内(90パーセンタイル値)」と設定されています。
- 設問3の前半で求めた10月の90パーセンタイル値は、全5,000件中4,500番目のデータである 2.4秒 でした(累計4,550件の2.4秒の区分に含まれるため)。
- この2.4秒と目標である5秒を比較すると、2.4秒 ≦ 5秒 となるため、サービスレベル目標は「達成」と判定されます。
- なお、8.0秒および8.1秒の件数は合計250件(全体の5%)であり遅延が発生していますが、上位10%の外側であるため、90パーセンタイル値には影響しません。
- また、10月1日に発生した応答遅延インシデントやサービス停止については、項番⑤(サービス回復時間遵守率)など別の項目の話であり、応答時間の目標達成の判定には使用しません。
各選択肢の解説
- ア(達成): 10月の90パーセンタイル値が目標の5秒以内に収まっているため、正解です。
- イ(未達成): 目標を達成しているため誤りです。
設問4
〔検索サービスの改善〕について,(1)〜(3)に答えよ。
サービス提供者がサービスレベル目標を達成するために,インシデントモデルを整備しておくことで得られるサービス提供者にとっての利点を40字以内で述べよ。
模範解答
事前に定義した時間内にインシデントの解決を図ることができる。
採点基準
- 5点: 「事前に定義した時間内にインシデントを解決できる」又は「インシデントを早期に解決(回復)できる/迅速に対応して早期回復を図れる」のいずれかを記述している。
- 3点: 対応手順・役割分担・エスカレーションが明確になる、対応が標準化される等の利点は記述しているが、解決・回復の早期化(定義した時間内の解決)に結び付けていない。
- 0点: インシデントの発生自体を防げる、根本原因を除去できる、費用削減など、インシデントモデルの利点として不適切な記述となっている。
- 2点: 利点としての文脈が整っており、意味が明確に伝わる。
- 0点: 文脈が不明瞭であり、利点としての回答になっていない。
解説
解答の根拠
- 〔検索サービスの改善〕において、P氏とサプライヤ各社は「インシデントが発生したときの処置をインシデントモデルとしてあらかじめ決めておき……定義した時間内にインシデントの解決を図ることを目標にする」と決定しています。
- インシデントモデルとは、頻発する既知のインシデントに対する対応手順や役割をあらかじめ標準化したものです。
- これを整備しておくことで、インシデント発生時にエスカレーション手順などに従って迅速に対応でき、「事前に定義した時間内」でのインシデント解決(早期回復)を図ることができるという利点があります。
高得点のポイント
- 「定義した時間内での解決」または「早期回復」のどちらかのメリットを含めること。
- インシデントの「解決を図ることができる」または「早期回復できる」という結果を明確に記述すること。
表4の a には,〔検索サービスで発生したインシデント〕の事例の教訓から,サービスの早期回復に向けて,サービスデスクで行う内容が入る。適切な内容を35字以内で述べよ。
模範解答
インシデントと判断して情報システム部に電子メールで連絡を行う。
採点基準
- 5点: インシデントと判断することと、情報システム部へ電子メールで連絡(エスカレーション)することの両方が記述されている。
- 3点: 情報システム部への連絡には触れているが、「インシデントと判断して」という状況認識や「電子メールで」という連絡手段が欠落している。
- 0点: 具体的な解決策(LBの再起動など)を答えており、サービスデスクが行うべき初期対応として適切でない。
- 2点: 行動主体(サービスデスク)に続く行動として、意味が自然に繋がっている。
- 0点: 文脈が不自然であり、行動内容が正しく伝わらない。
解説
解答の根拠
- 〔検索サービスで発生したインシデント〕での教訓として、サービスデスクが最初に問合せを受けてから20分経過して10件発生するまで情報システム部に連絡しなかったことが、早期回復を妨げる要因となりました。
- 改善に向けたM社からの見解により「10分間で3件以上応答遅延の問合せが発生する場合は、LBの動作が不安定と判断できる」という具体的な基準が示されました。
- 図1の「L社が行うサービスデスクの機能」によると、ノウハウデータベースで解決できない事象は「情報システム部に電子メールで送信する」と定められています。
- したがって、この基準(10分間で3件以上)に達した場合、サービスデスクは直ちにそれをインシデントと判断し、情報システム部に電子メールで連絡(エスカレーション)を行う必要があります。
高得点のポイント
- 事象を直ちに「インシデントと判断して(みなして)」対応することを記述すること。
- 図1の規定に沿って、「情報システム部」に対して「電子メールで連絡(送信)する」という具体的な行動を明記すること。
P氏は,本文中の下線(ウ)で,フォーラムの開催が有効と判断した。P氏は,フォーラムをどのような場として有効活用することにしたのか。30字以内で答えよ。
模範解答
サプライヤ各社が協調して活動を決定できる場
採点基準
- 4点: サプライヤ各社(と情報システム部)が協調・連携して改善策や今後の活動を決定する場、と記述している。
- 2点: 活動・対策を検討・決定する場だが各社が協調する要素が弱い、又は各社が協調・連携する場だが活動の決定(何をするかを決める)に触れていない。
- 0点: 情報共有・サービスレベルの達成状況の確認・報告だけの場、又は無関係な記述となっている。
- 3点: 「〜する場」など、問いに対する直接的で適切な文末で結ばれている。
- 0点: 文末表現が不適切であり、問い(どのような場として〜)に対応していない。
解説
解答の根拠
- 〔検索サービスの開始〕において、サプライヤ各社は「各社間で直接契約を締結しない」と記載されています。そのため、各社が連携してサービスを運営する仕組みが必要です。
- 〔検索サービスの改善〕でのフォーラムの様子を見ると、情報システム部とサプライヤ各社がインシデントモデルの定義や改善案について話し合い、協調して今後の活動を決定しています。
- P氏はこれを踏まえ、下線(ウ)の通りフォーラムの開催が有効と判断しました。
- つまりフォーラムは、直接の契約関係にないサプライヤ各社が単なる情報共有を行うだけでなく、互いに「協調して」品質向上のための「活動を決定できる」場として有効活用されています。
高得点のポイント
- サプライヤ各社が単に情報を共有するだけでなく、「協調して(連携・協力して)」対応することを指摘していること。
- サービス改善などの具体的な「活動を決定できる場」であることを端的に表現すること。
設問4(1)は,正答率が高かった。インシデントモデルを整備しておくことで,インシデントを早期回復できることが正しく理解されているようであった。 設問4(2)は,サービスデスクが行う内容を求めたが,LBの再起動など解決方法に注目した解答が多く,正答率が低かった。LBの製品メーカからの情報を基に,サービスデスクの機能として実施する内容を解答してほしかった。 設問4(3)は,フォーラムの開催意義を求めたが,単に情報共有やサービスレベルの達成状況を確認するだけにとどまった解答が多く,正答率が低かった。サービス品質の維持及び向上のため,サプライヤ各社が協調して活動を決定することについて解答してほしかった。