令和7年度 秋期 情報処理安全確保支援士試験 午後 問題 問4 製造業のセキュリティ管理体制構築
テクノロジセキュリティ管理セキュリティ技術サービスマネジメント
この問題は2025(R7)秋 情報処理安全確保支援士 午後に出題されたものです。出題時点の法令・制度に基づく内容のため、現行の内容と一致しない場合があります。
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学習ガイド
取引先からセキュリティ管理体制の構築を求められた製造業の企業を舞台に、攻撃シナリオの検討と対策立案を行う問題です。設問には「できるだけ起こる可能性が高いもの」「できるだけ効果が高いもの」という条件が付いており、思いついた答えではなく、候補を比較して最適を選ぶ姿勢が要求されます。この記事では、ネットワーク図と業務フローから攻撃経路を洗い出し、条件に沿って絞り込む解答手順を示します。
この記事で押さえる論点
- ネットワーク図と業務の流れから攻撃シナリオを構成する
- 効果の高い対策とその導入箇所をセットで選定する
- アクセス権限や運用手順の見直しを具体化する
出題情報
- 出題
- 2025(R7)秋 情報処理安全確保支援士 午後 問4
- 配点
- 50点満点
- 模範解答
- 公表(設問ごとに掲載)
出題趣旨・採点講評(IPA 公表)
サプライチェーンにおけるセキュリティリスクの管理が進んでいる現在,サプライチェーンに組み込まれている企業では,より上流又は下流に位置する企業から情報セキュリティ管理体制の構築が求められることがよくある。本問では,そのような場面を題材に,ある企業のシステム構成,ネットワーク構成及び業務の流れを前提として,攻撃シナリオの検討,並びに,その攻撃シナリオへの対策及び必要な運用手順の立案の能力を問う。
問4では,セキュリティ管理体制の構築について出題した。全体として正答率は平均的だった。
問題本文
製造業におけるセキュリティ管理に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。
L社は,従業員100名の,主に家電製品の部品を製造する企業である。精密加工技術に定評があり,他社では製造が難しい部品も製造している。L社の売上げのうち90%は大手家電製品製造企業であるJ社への売上げである。昨年度,L社はJ社の資本参加を受け入れ,J社の子会社になった。
今年度,L社は,J社から,経済産業省及びIPAが策定した“サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver 3.0”(以下,経営ガイドラインという)に基づき,対策を整備することを求められた。
要求を受けたL社は,サイバーセキュリティの専門企業であるN社のコンサルティングを受けることを決め,コンサルタントで情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)であるC氏が担当になった。L社では最高情報セキュリティ責任者(CISO)であるE取締役を中心にして,整備を開始した。
〔L社の状況〕
L社の組織図を図1に,L社とJ社の関係など,L社の状況を図2に示す。

図の説明テキスト
図1 L社の組織図
階層構造の組織図が描かれている。
- 社長
- 総務部
- 総務課
- 情報システム課
- 営業部
- 製造部
- 設計課
- 製造課
- 品質保証課
- CISO
- 総務部

図の説明テキスト
図2 L社の状況
- J社とは取引基本契約を結んでいる。その契約には,次の内容が含まれている。
- J社が秘密情報として提供した情報についての秘密保持の義務
- 秘密保持の状況についてのJ社の監査を受ける義務
- L社の責による秘密情報の漏えい時のJ社への損害賠償責任
- 納期遅延,品質不良などの発生時のJ社への損害賠償責任
- 部品製造に必要な設計情報ファイルなどの設計資料は,受注時にJ社から秘密情報として提供されている。
- L社が使用している工作機械は,コンピュータによる数値制御の機械である。
- 全ての工作機械が停止してしまった場合でも,停止時間が2時間以内であれば出荷への大きな影響は避けられる。
C氏は,E取締役に対してL社内のネットワークの説明を求めたが,L社にはネットワーク図がなかった。L社では,急ぎ,ネットワークの調査を行い,図3に示すL社のネットワーク図並びに表1に示すL社で使用しているSaaS及び機器の説明をまとめた。

図の説明テキスト
図3 L社のネットワーク図
上部には「電子メールSaaS」と「WebプロキシSaaS」があり、「インターネット」に接続されている。
インターネットはサーバ室の「FW」に接続され、FWは「L3SW」に接続される。
サーバ室には「ファイルサーバ」「LDAPサーバ」があり、L3SWに接続されている。
L3SWからは、設計課、品質保証課、総務部、営業部、製造課の各ネットワークへ接続されている。
設計課には「CAD PC」「一般PC」がある。
品質保証課には「一般PC」「製造監視用PC」がある。
総務部と営業部にはそれぞれ「一般PC」がある。
製造課には「NC PC」「一般PC」「SCADA」「工作機械」「SCADA操作用PC」「工作機械操作用PC」が接続されている。
図中の各接続経路上には黒丸(●)と矢印が配置され、それぞれに(あ)〜(す)の記号が振られている。
注記
FW: ファイアウォール
L3SW: レイヤー3スイッチ
SCADA: 監視制御システム
注記 レイヤー2スイッチは,省略している。

図の説明テキスト
表1 L社で使用しているSaaS及び機器の説明(抜粋)
| 名称 | 説明 |
|---|---|
| 電子メールSaaS | 電子メールの送受信を行う。オプションとして,表2に示すマルウェア対策機能を利用できるが,契約していない。 |
| ファイルサーバ | 設計情報ファイル,設計図ファイルなどを保存する。設計情報ファイルの保存領域,設計図ファイルの保存領域がある。領域ごとに権限を付与できる。 |
| LDAPサーバ | ファイルサーバにアクセスするときの利用者認証を行う。 |
| 一般PC | 一般事務に使用する。パターンマッチング型のマルウェア対策ソフトを導入している。 |
| CAD PC | 設計図ファイルの作成に使用する。パターンマッチング型のマルウェア対策ソフトを導入している。 |
| NC PC | NCプログラム1)の作成に使用する。パターンマッチング型のマルウェア対策ソフトを導入している。 |
| SCADA | 工作機械の監視及び制御を行う。PCで使用しているOSと同じ開発元が開発したサーバ用OSを使用している。工作機械の稼働状況を製造監視用PCに送信する。パターンマッチング型のマルウェア対策ソフトを導入している。なお,故障時の予備機を1台保管している。予備機にはOSを含め何もインストールしていない。 |
| SCADA操作用PC | SCADAの専用ポートに接続され,SCADAを直接操作する。なお,故障時の予備機としてPCを1台保管している。予備機にはOSを含め何もインストールしていない。 |
| 工作機械 | SCADAからの指示,又は工作機械操作用PCの操作に従い,材料の加工を行う。 |
| 工作機械操作用PC | 工作機械の専用ポートに接続されている。 |
注記 全PCとも同じOSを使用する。
注1) 工作機械の動作を指令するプログラム

図の説明テキスト
表2 電子メールSaaSのマルウェア対策機能
| 機能 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| パターンマッチング型のマルウェア対策機能 | ・検査時間が短い。 | ・a マルウェアは検知できない。 ・b された添付ファイル内のマルウェアは検知できない。 |
| サンドボックス型のマルウェア対策機能 | ・a マルウェアでも検知が期待できる。 | ・検査に時間が掛かる。 ・b された添付ファイル内のマルウェアは検知できない。 |
C氏がE取締役に対して部品の製造の流れの説明を求めたところ,E取締役は,試作時の製造の流れとして図4を,量産時の製造の流れとして図5を示した。

図の説明テキスト
図4 試作時の製造の流れ
- 営業部員が,J社から試作の注文書と設計情報ファイルを電子メールで受け取る。設計情報ファイルは,部品の三面図(注1)である。
- 営業部員は,設計情報ファイルをファイルサーバ内の設計情報ファイルの保存領域に保存する。保存した後,正常に読み込めるか確認する。その後,受注処理が完了したら,製造部に試作の指示を出す。
- 設計課員が,CAD PCで,設計情報ファイルを参照し,設計図ファイルを作成する。設計図ファイルは,ファイルサーバ内の設計図ファイルの保存領域に保存する。
- 製造課員が,NC PCで,設計図ファイルを参照して試作用NCプログラムを作成し,次の手順で試作品を製造する。
(1) 製造課員は,NC PCにUSBメモリを接続して,そのUSBメモリに試作用NCプログラムをコピーする。
(2) 製造課員は,SCADA操作用PCに,(1)のUSBメモリを接続して,試作用NCプログラムをSCADA内の試作用NCプログラム領域に保存する。
(3) 製造課員は,試作品を製造するように,SCADAを操作する。操作は,SCADA操作用PCで行う。
(4) SCADAは,SCADA内の試作用NCプログラムを工作機械に投入した後,工作機械に工作開始を指示する。
(5) 工作機械は,SCADAからの指示に従い,工作を行う。 - 製造課員が,工作機械から完成した試作品を取り出す。その後,設計課員,製造課員及び品質保証課員それぞれが,試作品がJ社の設計情報ファイル及びL社の品質基準に適合しているか確認する。不具合があれば,製造課員が試作用NCプログラムを修正して,再度試作を行う。最終的に適合していると確認できた試作用NCプログラムを量産用NCプログラムとする。
- 製造課員が,量産用NCプログラムを,項番4の(1),(2)と同様の手順でSCADA内の量産用NCプログラム領域に保存する。
注1) 対象物を三方向から見た形状を記した図面であり,正面図,平面図,側面図から成る。

図の説明テキスト
図5 量産時の製造の流れ
- 営業部員が,生産個数,納期を含めた量産の注文書を,電子メールで受け取る。受注処理が完了したら,製造課に製造指示を出す。
- 製造課員は,製造指示を受けた部品を製造するように,SCADAを操作する。操作は,SCADA操作用PCで行う。
- SCADAは,当該部品の量産用NCプログラムを工作機械に投入した後,工作機械に工作開始を指示する。
- 工作機械は,SCADAからの指示に従い,工作を行う。
- 工作が全て完了したら,工作機械は操作員呼出しを行うとともに,SCADAに工作の完了を通知する。
- 製造課員が,工作機械から完成した部品を取り出す。その後,品質保証課による検査を受け,梱包などを行い,出荷する。
C氏は,E取締役に対してファイルサーバの権限の設定状況について説明を求めた。
表3は,その時に提示された設計情報ファイルの保存領域での権限の設定状況である。

図の説明テキスト
表3 設計情報ファイルの保存領域での権限の設定状況
| 所属組織 | 読込権限 | 書込権限 | 権限変更権限 |
|---|---|---|---|
| 総務部総務課 | ○ | × | × |
| 総務部情報システム課 | ○ | ○ | ○ |
| 営業部 | ○ | ○ | × |
| 製造部設計課 | ○ | ○ | ○ |
| 製造部製造課 | ○ | ○ | × |
| 製造部品質保証課 | ○ | × | × |
| 注記 ○は権限があることを,×は権限がないことを示す。 |
〔経営ガイドライン〕
図6は,経営ガイドラインに示された“サイバーセキュリティ経営の重要10項目”である。C氏は,この指示1〜10に沿ってL社に対策の助言を始めた。

図の説明テキスト
図6 サイバーセキュリティ経営の重要10項目
- 指示1: サイバーセキュリティリスクの認識,組織全体での対応方針の策定
- 指示2: サイバーセキュリティリスク管理体制の構築
- 指示3: サイバーセキュリティ対策のための資源(予算,人材等)確保
- 指示4: サイバーセキュリティリスクの把握とリスク対応に関する計画の策定
- 指示5: サイバーセキュリティリスクに効果的に対応する仕組みの構築
- 指示6: PDCAサイクルによるサイバーセキュリティ対策の継続的改善
- 指示7: インシデント発生時の緊急対応体制の整備
- 指示8: インシデントによる被害に備えた事業継続・復旧体制の整備
- 指示9: ビジネスパートナーや委託先等を含めたサプライチェーン全体の状況把握及び対策
- 指示10: サイバーセキュリティに関する情報の収集,共有及び開示の促進
〔指示4に関する助言〕
経営ガイドラインにおける指示4の説明は,図7のとおりである。

図の説明テキスト
図7 経営ガイドラインにおける指示4の説明
- 事業に用いるデジタル環境,サービス及び情報を特定させ,それらに対するサイバー攻撃(過失や内部不正を含む)の脅威や影響度から,自組織や自ら提供する製品・サービスにおけるサイバーセキュリティリスクを識別させる。
- サイバー保険の活用や守るべき情報やデジタル基盤の保護に関する専門ベンダへの委託を含めたリスク対応計画を策定させ,対応後の残留リスクを識別させる。
C氏は,経営ガイドラインの指示4では,サイバー攻撃に関してリスクアセスメントを行い,対応計画を策定することを求めていると説明した。C氏は,リスクの識別と対応計画の策定を図8の手順で進めるように助言した。

図の説明テキスト
図8 リスクの識別と対応計画の策定の手順(概要)
- L社が管理する情報資産のうち,守るべきものを特定する。
- 守るべき情報資産について,保存場所や取扱状況を把握する。
- 守るべき情報資産に影響を与えるリスクを洗い出し,レベル分けを行う。
- 洗い出したリスクについて,対応する方法を決定し,対応計画を策定する。リスクに対応する方法は,低減,c,d,eの四つに分類される。
次は,その時のC氏とE取締役の会話である。
C氏:例えば,J社から受け取った設計情報ファイルに影響を与えるリスクについて,図8の項番3と4は実行できそうでしょうか。
E取締役:はい。例えば,LANに接続されたPCがマルウェアに感染して情報の漏えいが起きるリスクがありますが,マルウェア対策ソフトを導入していますので,追加の対策は不要だと考えています。
C氏:マルウェアによっては,パターンマッチング型のマルウェア対策ソフトでは検知できないおそれがあります。そう考えると,追加の対策は必要でしょう。リスクのレベル分けについては,別の機会に説明します。
E取締役:分かりました。
C氏:項番4について例を挙げると,設計情報ファイルを扱う業務が図4だけなら,①最小権限の原則に沿って表3の権限の設定を見直すことによって,PCがマルウェアに感染したときの設計情報ファイルに影響を与えるリスクを低減することができます。
E取締役:分かりました。
〔指示5に関する助言〕
経営ガイドラインにおける指示5の説明は,図9のとおりである。

図の説明テキスト
図9 経営ガイドラインにおける指示5の説明
- サイバーセキュリティリスクに対応するための保護対策として,防御・検知・分析の各機能を実現する仕組みを構築させる。
- 構築した仕組みについて,事業環境やリスクの変化に対応するための見直しを実施させる。
C氏は,経営ガイドラインの指示5では,指示4で識別したリスクに対応するための保護対策として,効果的な仕組みの導入と見直しを求めていると説明した。C氏は,リスクに対応するための具体的な保護対策を考えるため,図8で洗い出したリスクが顕在化する具体的な攻撃シナリオと,そのシナリオから情報やシステムを保護する対策を並べた表を作るよう助言した。C氏の助言を受けながらL社が作成した表が表4である。

図の説明テキスト
表4 攻撃シナリオと対策
| 項番 | 攻撃シナリオ | 保護する対策 |
|---|---|---|
| 1 | 営業部員が,営業部の一般PCに私有のUSBメモリを接続し,そのUSBメモリに設計情報ファイルをコピーして持ち出し,J社の競合他社に売却する。 | 図3中の営業部の一般PCのOSの設定を変更し,USBメモリを使用できなくする。 |
| 2 | 現行のFWに未修正の脆弱性があり,攻撃者がその脆弱性を悪用しインターネットから直接L社のネットワークに接続する。次に,利用者IDとパスワードを推測してファイルサーバに不正アクセスし,全てのファイルを削除する。 | 図3中のあの箇所に,現行のFWとは異なるベンダーのFWを導入する。 (省略) |
| 3 | 電子メールに添付されたマルウェアによって,社内の一般PCにマルウェアの感染が広がった後,SCADAに感染が広がり,NCプログラムが使用できなくなる。 | 図3中の電子メールSaaSで,表2の両方のマルウェア対策機能を契約する。 図3中の一般PC及びSCADAに,パターンマッチング型以外のマルウェア対策ソフトを導入する。 f を導入する。 |
| 4 | 購入したUSBメモリがマルウェアに感染していて,そのUSBメモリからSCADA操作用PCがマルウェアに感染し,マルウェアがSCADAを不正に操作した結果,SCADAが停止してしまう。 | 図3中のSCADA操作用PCに,マルウェア対策ソフトを導入する。 g を導入する。 |
| (省略) | ||
| 注記 一つのシナリオに対して複数の併用すべき対策を挙げたものもある。 |
〔指示8に関する助言〕
経営ガイドラインにおける指示8の説明は図10のとおりである。

図の説明テキスト
図10 経営ガイドラインにおける指示8の説明(抜粋)
- インシデントにより業務停止等に至った場合,企業経営への影響を考慮していつまでに復旧すべきかを特定し,復旧に向けた手順書策定や,復旧対応体制の整備をさせる。
- 制御系も含めたBCPとの連携等,組織全体として有効かつ整合のとれた復旧目標計画を定めさせる。
C氏は,経営ガイドラインの指示8では,業務停止に至るインシデントを想定して,復旧計画及びその体制を整えることを求めていると説明した。次は,その時のC氏とE取締役の会話である。
C氏:何らかの理由で工作機械が停止してしまった場合の復旧対応体制は整備していますか。
E取締役:今まで2時間を超える停止は起こっていなかったので,整備していません。
C氏:最大許容停止時間2時間以内を実現するには,まず製造が停止する被害に至るシナリオ(以下,被害のシナリオという)を想定します。次に,被害のシナリオが実際に起こった場合に2時間以内で製造を再開するために必要となるソフトウェアやハードウェアなど(以下,必要な仕組みという)及び必要な手順をまとめます。例として,表5にSCADAの偶発的な故障を発端とした被害のシナリオ,必要な仕組み及び必要な手順を挙げました。

図の説明テキスト
表5 被害のシナリオ,必要な仕組み及び必要な手順の例
| 被害のシナリオ | 必要な仕組み | 必要な手順 |
|---|---|---|
| SCADAが故障して,工作機械にNCプログラムを投入できなくなる。 | SCADAのホットスタンバイ機 | ホットスタンバイ機に切り替える手順 |
E取締役:分かりました。まとめてみます。
C氏:必要な仕組み及び必要な手順が整備できた後に,演習を行う必要もあります。
この後,L社ではC氏の助言を受けながら,外部からのサイバー攻撃を発端とした被害のシナリオ,必要な仕組み及び必要な手順について表6にまとめた。

図の説明テキスト
表6 外部からのサイバー攻撃を発端とした被害のシナリオ、必要な仕組み及び必要な手順
| 被害のシナリオ | 必要な仕組み | 必要な手順 |
|---|---|---|
| 表4の項番3 | (省略) | (省略) |
| 表4の項番4 | (省略) | (省略) |
| 一般PC,CAD PC又はNC PCがマルウェアに感染し,SCADAに感染が広がり,工作ができなくなる。 | PCを復旧するための,業務アプリケーションプログラム(以下,アプリケーションプログラムをアプリという)を含むリカバリメディア | PCを一斉に復旧する手順 |
| 予備機を用いてSCADAを復旧するための,SCADAアプリを含むリカバリメディア | SCADAを復旧する手順 | |
| h | i | |
| j | k | l |
| (省略) | ||
| 注記 一つのシナリオに対して複数の併用すべき対策を挙げたものもある。 |
C氏は,その他の指示についても対策を助言し,L社は助言に従って対策を実施した。その後,L社は,対策の整備状況を報告書にまとめてJ社に報告した。
設問と解答・解説
設問1
(1)
模範解答
未知の
採点基準(配点 3点)
知識・理解度(内容)(2点)
- 2点: 「未知の」という概念を正確に理解し解答している。
- 1点: 近似の概念を記述している。
- 0点: 無回答または不適切な解答。
論理性(構造)(1点)
- 1点: 文脈に沿った適切な表現となっている。
- 0点: 文脈に合わない表現となっている。
解説
セキュリティ対策ソフトが検知できないマルウェアの特性に関する問題です。
従来型のパターンマッチング方式では、シグネチャ(定義ファイル)に登録されていない新しいマルウェアを検知することは困難です。このようなマルウェアを 未知のマルウェア と呼びます。
高得点のポイント
- 「未知の」 というキーワードを正確に記述すること
- 文脈に沿った適切な表現となっていること
(2)
模範解答
暗号化
採点基準(配点 3点)
知識・理解度(内容)(2点)
- 2点: ランサムウェアによる被害である「暗号化」という事象を正確に理解し解答している。
- 1点: 近似の事象を記述している。
- 0点: 無回答または不適切な解答。
論理性(構造)(1点)
- 1点: 文脈に沿った適切な表現となっている。
- 0点: 文脈に合わない表現となっている。
解説
ランサムウェアの代表的な振る舞いに関する問題です。
ランサムウェアは、感染したPCや接続されたファイルサーバ上のデータを 暗号化 し、復号するための鍵と引き換えに身代金を要求するマルウェアです。
高得点のポイント
- ランサムウェアの主な被害事象である 「暗号化」 を正しく記述すること
- 文脈に沿った適切な表現となっていること
設問2
〔指示4に関する助言〕について答えよ。
(1)
(1) 図8中のcに入れる適切な字句を答えよ。
模範解答
回避
採点基準(配点 4点)
知識・理解度(内容)(2点)
- 2点: リスク対応における「回避」を正確に理解し記述している。
- 1点: 類似のリスク対応用語を記述している。
- 0点: 無回答または不適切な解答。
論理性(構造)(2点)
- 2点: 図8の文脈に完全に合致する用語を選択している。
- 1点: 文脈にやや合致しない用語となっている。
- 0点: 文脈に全く合致しない。
解説
リスクマネジメントにおけるリスク対応の選択肢に関する問題です。
リスク対応は主に以下の4つに分類されます。
- 回避: リスクの原因を取り除くこと
- 低減: リスクの発生確率や影響度を下げること
- 移転(共有): 保険などに加入し、第三者とリスクを分担すること
- 保有(受容): リスクが許容範囲内であると判断し、特に対策を行わずに受け入れること
図8の文脈において、リスクの原因そのものを除去する対応であるため 「回避」 が当てはまります。
高得点のポイント
- リスク対応における 「回避」 の概念を正確に理解し記述していること
- 図8の文脈に完全に合致する用語を選択していること
(2)
(1) 図8中のdに入れる適切な字句を答えよ。
模範解答
移転
保有
採点基準(配点 4点)
知識・理解度(内容)(2点)
- 2点: リスク対応における「移転」または「保有」を正確に理解し記述している。
- 1点: 類似のリスク対応用語を記述している。
- 0点: 無回答または不適切な解答。
論理性(構造)(2点)
- 2点: 図8の文脈に完全に合致する用語を選択している。
- 1点: 文脈にやや合致しない用語となっている。
- 0点: 文脈に全く合致しない。
解説
リスクマネジメントにおけるリスク対応の選択肢に関する問題です。
リスク対応の選択肢の中で、サイバー保険への加入などはリスクを第三者と分担する 「移転」 に該当します。また、リスクが許容可能と判断し特に対策を行わない対応は 「保有」 に該当します。
高得点のポイント
- リスク対応における 「移転」 または 「保有」 の概念を正確に理解し記述していること
- 図8の文脈に完全に合致する用語を選択していること
(3)
(1) 図8中のeに入れる適切な字句を答えよ。
模範解答
移転
保有
採点基準(配点 4点)
知識・理解度(内容)(2点)
- 2点: リスク対応における「移転」または「保有」を正確に理解し記述している。
- 1点: 類似のリスク対応用語を記述している。
- 0点: 無回答または不適切な解答。
論理性(構造)(2点)
- 2点: 図8の文脈に完全に合致する用語を選択している。
- 1点: 文脈にやや合致しない用語となっている。
- 0点: 文脈に全く合致しない。
解説
リスクマネジメントにおけるリスク対応の選択肢に関する問題です。
リスク対応の選択肢の中で、サイバー保険への加入などはリスクを第三者と分担する 「移転」 に該当します。また、リスクが許容可能と判断し特に対策を行わない対応は 「保有」 に該当します。
高得点のポイント
- リスク対応における 「移転」 または 「保有」 の概念を正確に理解し記述していること
- 図8の文脈に完全に合致する用語を選択していること
(4)
本文中の下線①について,見直し後の権限の設定を答えよ。
模範解答
総務部総務課: 読込権限 ×, 書込権限 ×, 権限変更権限 ×
総務部情報システム課: 読込権限 ×, 書込権限 ×, 権限変更権限 ○
営業部: 読込権限 ○, 書込権限 ○, 権限変更権限 ×
製造部設計課: 読込権限 ○, 書込権限 ×, 権限変更権限 ×
製造部製造課: 読込権限 ○, 書込権限 ×, 権限変更権限 ×
製造部品質保証課: 読込権限 ○, 書込権限 ×, 権限変更権限 ×
採点基準(配点 4点)
知識・理解度(内容)(2点)
- 2点: すべての部門・課に対する適切な権限(読込、書込、権限変更)を正しく設定している。
- 1点: 一部の権限設定に誤りがあるが、大部分は正しい。
- 0点: 権限設定の大部分が誤っている、または不適切な解答。
論理性(構造)(2点)
- 2点: 権限設定の理由や業務の実態に基づいた論理的な設定が行われている。
- 1点: 一部論理性に欠ける設定が含まれる。
- 0点: 論理的な設定となっていない。
解説
最小特権の原則に基づく権限管理の見直しに関する問題です。
各部門の業務実態に合わせ、必要最小限の権限のみを付与することが重要です。総務部情報システム課には権限変更権限を付与し、営業部や製造部の各課には業務に必要な読込・書込権限を適切に設定します。
高得点のポイント
- すべての部門・課に対する適切な権限(読込、書込、権限変更)を正しく設定していること
- 権限設定の理由や業務の実態に基づいた論理的な設定が行われていること
設問3
(1)
模範解答
図3中の(け)の箇所に,追加でFW
採点基準(配点 4点)
知識・理解度(内容)(2点)
- 2点: 対策(FWの追加)と適切な導入箇所(け)の両方を正確に記述している。
- 1点: 対策または導入箇所のいずれかのみを正しく記述している。
- 0点: 両方とも不適切または無回答。
論理性(構造)(2点)
- 2点: マルウェア対策としての有効性と業務影響を考慮した論理的な対策構成となっている。
- 1点: 有効性または業務影響の考慮が不十分である。
- 0点: 論理性に欠ける構成となっている。
解説
マルウェアの感染拡大を防止するためのネットワークセキュリティ対策に関する問題です。
製造系システムへの影響を最小限に抑えつつ効果的な対策を行うため、ネットワークの境界である (け) の位置に FW(ファイアウォール) を追加導入することが求められます。
高得点のポイント
- 対策としての 「FWの追加」 と適切な導入箇所 「(け)」 の両方を正確に記述していること
- マルウェア対策としての有効性と業務影響を考慮した論理的な対策構成となっていること
(2)
模範解答
USBメモリを接続したときの動きを確認するためのソフトウェアを導入した,社内LANから切り離された検査用PC
採点基準(配点 4点)
知識・理解度(内容)(2点)
- 2点: 対策の内容(ソフトウェア導入、検査用PC)と環境(LANからの切り離し)を正確に記述している。
- 1点: 対策の内容または環境のいずれかの記述が不十分である。
- 0点: どちらも不適切または無回答。
論理性(構造)(2点)
- 2点: マルウェアによる被害を防止するための安全な確認手法として論理的に妥当な構成となっている。
- 1点: 確認手法としての論理性が一部不足している。
- 0点: 論理的な確認手法となっていない。
解説
外部記憶媒体(USBメモリ等)を経由したマルウェア感染リスクを低減するための安全な確認手法に関する問題です。
被害を防ぐためには、マルウェアの動作を監視するソフトウェアを備え、かつ社内LANから 切り離された(隔離された)環境 で検査を行うことが有効です。
高得点のポイント
- 対策の内容(ソフトウェア導入、検査用PC)と環境(LANからの切り離し)を正確に記述していること
- マルウェアによる被害を防止するための安全な確認手法として論理的に妥当な構成となっていること
設問3は,正答率がやや低かった。提示された攻撃シナリオに対して有効な対策を問うたが,SCADAの利用者認証の強化という解答が散見された。マルウェアは,OSやアプリケーションの脆弱性を悪用したり,正常に認証された利用者をだましたりして実行される。マルウェア対策として利用者認証の強化はあまり効果がないことに注意してほしい。
設問4
〔指示8に関する助言〕について答えよ。
(1)
(1) 表6中のhに入れる適切な字句を答えよ。
模範解答
SCADA内のNCプログラムをバックアップ/リストアするための媒体とソフトウェア
採点基準(配点 4点)
知識・理解度(内容)(2点)
- 2点: バックアップ・リストアに必要な要素(媒体とソフトウェア)を正確に把握し記述している。
- 1点: 媒体またはソフトウェアのいずれかのみを記述している。
- 0点: どちらも記述がない、または不適切な解答。
論理性(構造)(2点)
- 2点: 平常時に準備すべきアイテムとして論理的な構成となっている。
- 1点: 平常時の準備としての構成が不十分である。
- 0点: 論理的でない構成となっている。
解説
インシデント発生時の迅速な復旧(レジリエンス)に向けた事前の準備に関する問題です。
万が一マルウェアによる被害が発生した場合に備え、平常時から バックアップ媒体 と復旧に必要な ソフトウェア を準備しておくことが不可欠です。
高得点のポイント
- バックアップ・リストアに必要な要素(媒体とソフトウェア)を正確に把握し記述していること
- 平常時に準備すべきアイテムとして論理的な構成となっていること
(2)
(1) 表6中のiに入れる適切な字句を答えよ。
模範解答
SCADAにNCプログラムをリストアする手順
採点基準(配点 4点)
知識・理解度(内容)(2点)
- 2点: 迅速な復旧に必要な「リストア手順」の準備を正確に記述している。
- 1点: 復旧に関する不十分な記述となっている。
- 0点: 不適切な解答または無回答。
論理性(構造)(2点)
- 2点: 復旧手順の文書化という平常時の対応として論理的に妥当である。
- 1点: 手順の文書化としての論理性が一部不足している。
- 0点: 論理的でない構成となっている。
解説
インシデント発生時の迅速な復旧(レジリエンス)に向けた事前の準備に関する問題です。
迅速な事業復旧のためには、バックアップデータからの リストア(復元)手順 をあらかじめ明確にし、文書化しておくことが求められます。
高得点のポイント
- 迅速な復旧に必要な 「リストア手順」 の準備を正確に記述していること
- 復旧手順の文書化という平常時の対応として論理的に妥当であること
(3)
(2) 表6中のjに入れる適切な字句を答えよ。できるだけ起こる可能性が高いものを,攻撃の発端を含めて答えよ。
模範解答
マルウェアに感染した一般PCが,正常な通信を妨害するパケットを大量に送信して,SCADAと工作機械の間の通信ができなくなる。
採点基準(配点 4点)
知識・理解度(内容)(2点)
- 2点: 攻撃の発端(マルウェア感染PC)と影響(通信妨害、通信不能)の両方を正確に記述している。
- 1点: 攻撃の発端または影響のいずれかの記述が不足している。
- 0点: 不適切な解答または無回答。
論理性(構造)(2点)
- 2点: 攻撃シナリオとして起こり得る可能性が高く、一連の事象が論理的に構成されている。
- 1点: シナリオの論理的なつながりが一部不足している。
- 0点: 論理的でない構成となっている。
解説
マルウェア感染によるシステムへの具体的な影響シナリオに関する問題です。
マルウェアに感染したPCがネットワーク上で 大量の妨害パケットを送信(DoS攻撃等の状態) することで帯域が圧迫され、SCADAと工作機械間の 正常な通信が不能になる リスクが想定されます。
高得点のポイント
- 攻撃の発端(マルウェア感染PC)と影響(通信妨害、通信不能)の両方を正確に記述していること
- 攻撃シナリオとして起こり得る可能性が高く、一連の事象が論理的に構成されていること
(4)
(2) 表6中のkに入れる適切な字句を答えよ。できるだけ効果の高いものを答えよ。
模範解答
SCADA,工作機械及び製造監視用PCだけの独立したLANを構成するためのネットワーク機器
採点基準(配点 4点)
知識・理解度(内容)(2点)
- 2点: 独立したLANの構成要素と、それに必要な機器(ネットワーク機器)を正確に記述している。
- 1点: LANの構成要素または必要な機器のいずれかの記述が不足している。
- 0点: 不適切な解答または無回答。
論理性(構造)(2点)
- 2点: 攻撃被害を最小限に抑えるための論理的なネットワーク分離策となっている。
- 1点: 分離策としての論理性が一部不足している。
- 0点: 論理的でない構成となっている。
解説
被害拡大を防ぐためのネットワーク隔離策に関する問題です。
重要システムを保護するため、SCADAや工作機械などを配置した 独立したLAN を構築し、外部や他の社内ネットワークから分離するための ネットワーク機器 が必要となります。
高得点のポイント
- 独立したLANの構成要素と、それに必要な機器(ネットワーク機器)を正確に記述していること
- 攻撃被害を最小限に抑えるための論理的なネットワーク分離策となっていること
(5)
(2) 表6中のlに入れる適切な字句を答えよ。
模範解答
SCADA,工作機械及び製造監視用PCをL社のネットワークから切り離す手順
採点基準(配点 4点)
知識・理解度(内容)(2点)
- 2点: 被害発生時に迅速に行うべき対応(ネットワークからの切り離し手順)を正確に記述している。
- 1点: 対応内容の記述が不十分である。
- 0点: 不適切な解答または無回答。
論理性(構造)(2点)
- 2点: インシデント発生時の初動対応として論理的に妥当な手順となっている。
- 1点: 初動対応としての論理性が一部不足している。
- 0点: 論理的でない構成となっている。
解説
インシデント発生時の初動対応に関する問題です。
被害の拡大を防ぐためには、感染疑いのあるネットワークやシステムを迅速に 切り離す(物理的・論理的な隔離)手順 をあらかじめ定めておくことが重要です。
高得点のポイント
- 被害発生時に迅速に行うべき対応(ネットワークからの切り離し手順)を正確に記述していること
- インシデント発生時の初動対応として論理的に妥当な手順となっていること
設問4は,正答率が平均的だった。万一マルウェアなどによる被害が発生してしまった場合に,いかに早く復旧するかを問うたが,被害に至る攻撃を阻止する手段について言及した解答が散見された。迅速な復旧のためにはバックアップの取得など平常時に何を行うかが重要であり,この点についての解答を期待していた。レジリエンスという言葉に代表されるように,企業の社会的立場によっては,被害に至る経緯を解明するよりも,事業の復旧を優先する場合もあることを考えてほしい。