令和6年度 秋期 情報処理安全確保支援士試験 午後 問2 ドメイン名変更とDMARC導入

テクノロジセキュリティ技術ネットワーク

この問題は2024(R6)秋 情報処理安全確保支援士 午後に出題されたものです。出題時点の法令・制度に基づく内容のため、現行の内容と一致しない場合があります。

本ページの問題文・選択肢は、原本の体裁を Web 表示用に正規化しています(改行・記号・数式・図表参照の調整)。設問の趣旨および正解に影響する変更は加えていません。

学習ガイド

メールドメイン名の変更を機にDMARCを導入する場面を扱ったメールセキュリティの問題です。SPF・DKIMの認証がどの登録情報とどの送信経路の組合せで成否が決まるのかを正確に追えるかが問われ、旧ドメイン名の契約を維持すべき理由を攻撃者目線で説明させる設問が特徴的です。この記事では、送信元詐称対策の全体像を整理した上で、転送サービス経由で認証が失敗する仕組みを図解的にたどります。

この記事で押さえる論点

  • SPF・DKIM・DMARCの認証の仕組みと失敗条件を説明する
  • ドメイン名変更後も旧ドメインの契約維持が必要な理由を攻撃例から導く
  • メール転送サービス経由で認証が失敗するケースを仕様から分析する

問題本文

問2 ドメイン名変更に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。

 A社は,従業員 1,000 名の工作機械製造会社である。A社の技術力は高く評価されている。A社には,総務部,営業部,情報システム部,技術部及び製造部がある。
 A社の Web サイトでは,一般向けに IR 情報と関連会社へのリンクを,顧客向けに自社製の工作機械管理用アプリケーションプログラムとそのソフトウェア修正プログラムを提供している。また,A社では,電子メール(以下,メールという)を用いて,顧客との間で見積書や注文書の送受信をしたり,ニュースサイトのメールマガジンに登録して最新の情報を収集したりしている。
 A社のドメイン名を詐称したメールが毎週 2 通程度,送られていることが,多くの顧客から報告されている。情報システム部長は,顧客に詐欺などの被害が生じるおそれがあることを認識し,メールの詐称対策が必要であると考えている。

〔情報システムの現状〕

 A社は,10 年前にドメイン名 a-sha.co.jp(以下,A社ドメイン名という)を取得して以降,A社の Web サイト(以下,A-Web サイトという)及びメールアドレスのドメイン名として利用している。A社ドメイン名は,DNS サービス事業者である S社の権威 DNS サービス(以下,Sサービスという)を用いて管理している。
 A-Web サイトは,Web サービス事業者である W社の Web サービス(以下,Wサービスという)を用いて提供している。
 A社のネットワークを図1に,構成要素の機能を表1に示す。A社の従業員は,PC-LAN 内の PC で業務を行っている。

図1 A社のネットワーク(抜粋)
図の説明テキスト

インターネットを中心に各サービス・ネットワークが接続された構成図。

  • インターネットには、Wサービス、キャッシュDNSサービス、Sサービスが接続されている。
  • インターネットとA社の間はファイアウォールで接続されている。
  • A社内には、DMZ、PC-LAN、サーバLANの3つのネットワークがある。
  • ファイアウォールは、DMZ、PC-LAN、サーバLANそれぞれに接続されている。
  • DMZ内にはメールサーバが配置されている。
  • サーバLAN内にはレイヤー2スイッチがあり、複数の業務サーバが接続されている。
    注記: PC-LAN内のPCの記載は省略している。
表1 構成要素の機能(抜粋)
図の説明テキスト
構成要素 機能
メールサーバ ・S社が提供するキャッシュ DNS サービスを用いて,DNS 問合せを行う。
・インターネットとの間で,SMTP を用いてメールを転送する。
・PC-LAN 及び業務サーバから SMTP を用いて送信されるメールを受信する。
・宛先メールアドレスのドメイン名が a であるメールをメールボックスに格納する。
・第三者中継防止のためのルールを用いて,第三者中継を防止する。第三者中継防止のためのルールを表 2 に示す。
・メールボックス内のメールを,PC-LAN 内の PC が POP3 を用いて受信できるようにする。
表2 第三者中継防止のためのルール
図の説明テキスト
項番 転送元 宛先メールアドレスのドメイン名 転送処理
1 インターネット a 許可
2 PC-LAN b 許可
3 業務サーバ A社ドメイン名 許可
4 全て 全て 拒否
注記 項番が小さいルールから順に,最初に一致したルールが適用される。

〔ドメイン名の変更についての検討〕

 A社は,3か月後にZ社への社名変更を予定している。情報システム部長は,メールの詐称対策の導入及び社名変更に合わせたドメイン名変更を検討するように情報システム部のN主任に指示した。N主任は情報システム部のEさんと,次のとおり検討した。

・z-sha.co.jp(以下,Z社ドメイン名という)が過去に取得されたことがないドメイン名であることを確認してから取得する。
・Z社ドメイン名の管理もSサービスで行う。
・WサービスでZ社ドメイン名のWebサイト(以下,Z-Webサイトという)も立ち上げる。
・図1のメールサーバでは,複数のドメイン名のメールを受信できないことから,商用のメールサービスに移行する。
・メールの詐称対策は,SPF,DKIM及びDMARCで対応する。

 N主任とEさんは,Z社が送信するメールの詐称対策(以下,送信対応という)と,Z社が受信するメールの詐称対策(以下,受信対応という)について方針をそれぞれ表3と表4のとおり作成した。

表3 送信対応方針
図の説明テキスト
項番 対応方針概要
1 送信するメールのエンベロープFrom及びヘッダーFromのドメイン名をZ社ドメイン名とする。
2 Z社ドメイン名のメールを受信した側でSPFによる認証及びDKIMによる認証に失敗した場合のアクションをDMARCポリシーとして定義する。
3 DMARCポリシーレコード(以下,DMARCレコードという),SPFレコード及びDKIMキーレコード(以下,DKIMレコードという)をSサービスに登録する。
4 送信するメールには,DKIM署名を付与する。
5 DMARCレポートを分析する。
6 顧客に,Z社は送信するメールについて,SPF,DKIM及びDMARCに対応済みであることを周知する。
表4 受信対応方針
図の説明テキスト
項番 対応方針概要
1 受信するメールの宛先メールアドレスのドメイン名は,Z社ドメイン名とする。
2 顧客に,送信するメールについてSPF,DKIM及びDMARCに対応するように依頼する。
3 SPFによる認証及びDKIMによる認証を行いそのいずれかが成功した場合,DMARCの認証が成功したものと判断し,受信する。
4 送信元のDMARCポリシーに基づき,メールの受信,隔離又は拒否を行う。

 N主任とEさんは,これまでの結果を,情報システム部長に報告し,了承を得た。

〔メールサービスの機能の検討〕

 N主任とEさんは,メールサービスの機能について検討し,メールサービス事業者であるU社のメールサービス(以下,Uサービスという)に移行することにした。Uサービスの機能の概要を表5に示す。

表5 Uサービスの機能の概要(抜粋)
図の説明テキスト
機能 概要
メール転送 ・インターネットとの間は,SMTPをTLSで暗号化する c を使用してメールを転送することができる。
Webメール ・Webブラウザを用いてメールを送受信する。
Uサービス管理Web ・利用者アカウントの登録や削除を行う。
・送信したメールについてDMARCレポートの分析結果を参照することができる。

〔Z-Webサイト及びUサービスへの移行手順の検討〕

 Eさんは,Z-Webサイト及びUサービスへの移行手順を検討した。検討結果を,図2及び図3にそれぞれ示す。

図2 Z-Webサイトへの移行手順
図の説明テキスト

Web-Step1 : A-Webサイトのコンテンツを全て,Z-Webサイトに同一構成で配置する。Z-Webサイトに配置したコンテンツ中のA社ドメイン名をZ社ドメイン名に書き換える。
Web-Step2 : 次を1年間,実施する。
・A-Webサイトへのアクセスを,Z-Webサイトのトップページにリダイレクトする。
Web-Step3 : A-Webサイトを停止する。A-Webサイト用のDNSレコードは削除する。

図3 Uサービスへの移行手順
図の説明テキスト

Mail-Step1 : 試行期間として次を1か月間,実施する。
・総務部及び情報システム部のメンバーだけが,Z社ドメイン名のメールアドレスを使用する。
・送信対応では,DMARCポリシーを,特定のアクションを要求しないこととし,メールを受信してもらう。
・受信対応では,DMARCの認証結果にかかわらず受信する。
Mail-Step2 : 図1のメールサーバの利用をやめ,次を3か月間,実施する。
・Z社全体が,Uサービスを用いてZ社ドメイン名のメールアドレスを使用する。
・Z社ドメイン名でのメールの利用を顧客に文書で周知するとともに,Z-Webサイトで周知する。
・A社ドメイン名宛てのメールをUサービスで受信する。
Mail-Step3 : 送信対応のDMARCポリシーを隔離に変更し,その6か月後,拒否に変更する。
Mail-Step4 : A社ドメイン名でのメールの受信を停止する。メールサーバ用のDNSレコードは削除する。
Mail-Step5 : 問題がないと確認できたら,受信対応でDMARCの処理を行う。

 Eさんは,図2及び図3をN主任に説明し,了承を得た。

〔送信対応の設定内容についての検討〕

 Eさんは,送信対応に用いる SPFレコードを,Uサービスから提供された情報に基づいて作成した。

 次に,Eさんは,送信対応に用いる DKIMレコードについて検討した。Z社がUサービスを利用した場合,送信されるメールに付与される DKIM-Signatureヘッダーのタグの内容を表6に示す。

表6 タグの内容(抜粋)
図の説明テキスト
タグ 内容
v 1
a rsa-sha256
d z-sha.co.jp
h From:To:Subject:Date:Message-ID:MIME-Version
s z2024

 表6から,DKIMレコードの名称として使用する FQDNが決まる。Eさんは,Uサービスから提供された情報に基づき DKIMレコードを作成した。

 最後に,Eさんは,Mail-Step1の送信対応では DMARCレコードを図4のとおりとすることにした。

図4 DMARCレコード
図の説明テキスト

v=DMARC1; p= <span id="q2_blank_d" class="blank-label">d</span> ; rua=mailto:rua-report@z-sha.co.jp

 Eさんは,設定内容をまとめて N主任に報告し,了承を得た。

〔A社ドメイン名の契約についての検討〕

 N主任と Eさんは,A社ドメイン名使用の契約を継続するか解約するかについて検討した。解約した場合,第三者が A社ドメイン名を取得することができる。N主任と Eさんは,第三者が A社ドメイン名を取得した場合の A社ドメイン名の悪用例を検討し,表7のとおりまとめた。

表7 A社ドメイン名の悪用例
図の説明テキスト
項目 悪用の例
Webの悪用 第三者が、A社ドメイン名を用いて、現在のA-Webサイトと見た目が同じWebサイトを立ち上げるという悪用が考えられる。さらに、第三者が、コンテンツを細工してWebサイトの見た目を変えずに顧客に影響を及ぼす攻撃をすることが考えられる。
メールの送信 第三者が、メールサーバを立ち上げ、A社ドメイン名のメールアドレスを送信元メールアドレスとしてメールを送信するという悪用が考えられる。
メールの受信 従業員が業務で用いる社外サービスがあり、メールでの連絡先として、A社ドメイン名のメールアドレスを登録していたとする。もし連絡先の変更を忘れてしまうと、第三者が、社外サービスからA社ドメイン名のメールアドレスへのメールを受信し、そのメールを使って続きの攻撃を行うという悪用が考えられる。

 N主任とEさんは,A社ドメイン名使用の契約を継続することを情報システム部長に報告し,承認を得た。

 また,A社ドメイン名については,Mail-Step4の後で次のとおり,設定することにした。

・DMARCレコードを設定する。
・DMARCの受信対応を行った組織がA社ドメイン名からのメールを拒否できるようにする。

 そのために,A社ドメイン名について,SPFレコードを図5のように設定する。
 DKIMレコードは設定しない。

図5 SPFレコード
図の説明テキスト

v=spf1 <span id="q2_blank_e" class="blank-label">e</span>

〔Uサービスへの移行の見直し〕

 Mail-Step1において,DMARCレポートの分析結果を参照した結果,送信対応には問題がないことが確認できた。

 Mail-Step2の開始1週間後,情報システム部のEさんに営業部のHさんから,図6に示すメールの一斉配信をしても問題ないか相談があった。

図6 メールの一斉配信の説明
図の説明テキスト
  1. 定期的に、Z社の公式情報の周知のためのメールを一斉配信する。
  2. 宛先には、社内と社外のメールアドレスが含まれている。
  3. 一斉配信には、T社のサービス(以下、Tサービスという)を利用する計画であり、Tサービスの仕様は次のとおりである。
    ・配信方法
  • 宛先メールアドレスは、サービス契約者が登録できる。
  • 宛先メールアドレスごとに個別に送信する。
    ・メールのヘッダーの設定
  • From は、サービス契約者が所属する組織が保有するドメイン名を用いたメールアドレスだけを設定できる。
  • To は、宛先のメールアドレスから一つずつ、Tサービスが設定する。
  • Subject は、一斉配信の都度、サービス契約者が設定する。
  • 他のヘッダーは、Tサービスが設定する。

 Eさんから相談を受けたN主任は,図6の一斉配信メールについて,次のとおりEさんに説明した。

・Mail-Step3以降で,一斉配信されたメールが届かない場合がある。メールが届くように,Mail-Step2の期間で,表3の項番3での登録内容を見直す必要がある

 Eさんは,見直し案を作成し,N主任の了承を得てから,Hさんに問題ないことを説明した。

 Mail-Step2の開始2週間後,情報システム部に技術部のJさんから,図7に示すメーリングリストを新たに利用することが可能か相談があった。

図7 メーリングリストの説明
図の説明テキスト
  1. 使用するメーリングリストは一つである。
  2. メーリングリストの管理者は、Z社従業員である。
  3. 製品に関する情報交換のために、メーリングリストを使用する。
  4. メーリングリストの配信先となる宛先には、社内及び社外のメールアドレスを登録する(以下、登録されたメールアドレスを登録メンバーという)。
  5. 登録メンバーから、メーリングリスト宛てにメールを送信できる。
  6. メールサービス事業者である Y社のサービス(以下、Yサービスという)を利用する計画であり、Yサービスの仕様は次のとおりである。
    (1) メーリングリストのメールアドレスは、サービス契約者ごとに割り当てられた Yサービスのメールアドレスである。ドメイン名はY社のドメイン名である。
    (2) Yサービスの管理画面で設定できる項目は(3)〜(6)であり、配信されるメールに反映される。
    (3) エンベロープFrom の設定
    ・メーリングリストの管理者のメールアドレスを設定する。
    (4) ヘッダーFrom の設定
    ・次のいずれかを選択する。
    ヘッダーFrom 設定 1:メーリングリスト宛てに送信されたメールのヘッダーFrom を使用する。
    ヘッダーFrom 設定 2:メーリングリストのメールアドレスを使用する。
    (5) Subject の設定
    ・次のいずれかを選択する。
    Subject 設定 1:メーリングリスト宛てに送信されたメールの Subject を使用する。
    Subject 設定 2:メーリングリスト宛てに送信されたメールの Subject にメールの通番情報を付加する。
    (6) Reply-To の設定
    ・メーリングリストのメールアドレスを設定する。
    (7) ヘッダーFrom, Subject 及び Reply-To 以外のヘッダー
    ・メーリングリスト宛てに送信したメールのヘッダーを引き継ぐ。
    (8) Authenticated Received Chain^1) (ARC) について
    ・ARC には、対応していない。

注^1) メールが転送される場合でも、メールの認証結果を確認できるようにする仕組みとして、RFC8617 に定義されている。

 N主任は,Eさんに図8に示すとおり説明した。

図8 N主任の説明
図の説明テキスト

・Mail-Step3以降にZ社の従業員が送信したメールについて

  • ヘッダーFrom設定1とSubject設定1の組合せでは、不達の問題は起きない。
  • ヘッダーFrom設定1とSubject設定2の組合せでは、SPFによる認証及びDKIMによる認証の両方に失敗することによって不達の問題が発生することがある
  • ヘッダーFrom設定2については、Z社の従業員が送信したメールであるかどうかの判定ができないので、用いるべきではない。
    ・Mail-Step3以降にZ社の従業員以外が送信したメールについて
    (省略)

 N主任とEさんは,Jさんには,ヘッダーFrom設定1とSubject設定1の組合せを用いるよう説明した。

 その後,Z-Webサイト及びUサービスへの移行は,順調に進み,完了した。

設問と解答・解説

設問1

〔情報システムの現状〕について答えよ。

(1)

表1中及び表2中の a に入れる適切な字句を答えよ。

模範解答

A社ドメイン名

採点基準(配点 6点)

知識・理解度(内容)(3点)

  • 3: 「A社ドメイン名」というシステム現状における対象を正確に特定できている。
  • 0: 対象の特定が誤っている、または無回答。

論理性(構造)(3点)

  • 3: 表1および表2の文脈に合致する適切な用語として簡潔に解答が構成されている。
  • 0: 文脈にそぐわない不適切な記述となっている。

解説

情報システムの現状における、設定対象の適切な名称を問う問題です。

表1および表2の文脈において、現在運用されているメールサービスの設定やドメインに関する管理対象を特定する必要があります。問題文の状況から、移行対象あるいは管理対象となっているドメイン名は A社ドメイン名 です。

高得点のポイント

  • 文脈から対象となるドメインが「A社ドメイン名」であることを正確に特定し、そのまま用語として記述できているか。

(2)

表2中の b に入れる適切な字句を答えよ。

模範解答

全て

採点基準(配点 6点)

知識・理解度(内容)(3点)

  • 3: 「全て」という対象範囲を正確に判断できている。
  • 0: 範囲の判断が誤っている、または無回答。

論理性(構造)(3点)

  • 3: 表2の文脈に合致する適切な語として簡潔に解答が構成されている。
  • 0: 文脈にそぐわない不適切な記述となっている。

解説

ドメイン名の管理やDNSの設定等において、対象となる範囲を問う問題です。

表2の文脈から、設定の対象範囲が限定的ではなく 全て であることを読み取る必要があります。

高得点のポイント

  • 文脈を把握し、「全て」という範囲指定を正しく判断して記述できているか。

設問2

表5中の c に入れる適切な字句を英字10字以内で答えよ。

模範解答

SMTPS

採点基準(配点 5点)

知識・理解度(内容)(3点)

  • 3: SMTP通信の暗号化プロトコルとして「SMTPS」を正しく導出できている。
  • 0: S/MIMEなど誤ったプロトコルを記載している、または無回答。

論理性(構造)(2点)

  • 2: 要求されたプロトコル名が正確な綴りで記述されている。
  • 0: 綴りに誤りがある、または意味をなさない文字列となっている。

解説

SMTP通信自体を暗号化するための 通信プロトコル を問う問題です。

メール送信時に用いられる SMTP 通信を、SSL/TLSを用いて暗号化したプロトコルを SMTPS(SMTP over SSL/TLS)と呼びます。

高得点のポイント

  • SMTPの暗号化プロトコルとして SMTPS を正確に導出できているか。
  • 指定された文字数(英字10字以内)を守り、正確な綴りで記述できているか。
  • ※ 採点講評にもある通り、S/MIME はメール本文や添付ファイルそのものを暗号化・署名する方式であり、SMTPの通信経路を暗号化するプロトコルではないため誤りとなります。プロトコルの役割の違いを正確に理解しておくことが重要です。

設問2は,正答率が平均的であった。“S/MIME”といった解答が散見された。“S/MIME”は,MIMEの仕組みを使ったメール本文及び添付ファイルの暗号化の方式であって,SMTPを暗号化する方式ではない。メールに関連する暗号技術及び通信プロトコルについて,よく理解してほしい。

設問3

〔送信対応の設定内容についての検討〕について答えよ。

(1)

本文中の下線①のFQDNを解答群の中から選び,記号で答えよ。

  1. rsa-sha256._dkim.z-sha.co.jp
  2. rsa-sha256._domainkey.z-sha.co.jp
  3. z2024._dkim.z-sha.co.jp
  4. z2024._domainkey.z-sha.co.jp
  5. z2024.z-sha.co.jp

模範解答

選択肢エ: z2024._domainkey.z-sha.co.jp

配点 3

解説

DKIM において、送信元ドメインの公開鍵をDNSから取得する際に使用される FQDN(完全修飾ドメイン名) の形式を問う問題です。

DKIMの公開鍵は、DNSのTXTレコードとして以下の形式で公開されます。
セレクタ名._domainkey.ドメイン名

本問の状況において:

  • 使用するセレクタ名:z2024(表6より)
  • 送信元ドメイン名:z-sha.co.jp

これらを組み合わせると、公開鍵を取得するためのFQDNは z2024._domainkey.z-sha.co.jp となります。

各選択肢の解説

  • ア: セレクタ名が誤っており、また _dkim という誤ったサブドメインが使用されています。
  • イ: セレクタ名が rsa-sha256 となっており誤りです。(これは暗号化アルゴリズムです)
  • ウ: _domainkey ではなく _dkim となっており誤りです。
  • エ: 正解です。正しい形式(セレクタ名._domainkey.ドメイン名)となっています。
  • オ: _domainkey が欠落しており誤りです。

(2)

図4中の d に入れる適切な字句を解答群の中から選び,記号で答えよ。

  1. accept
  2. none
  3. quarantine
  4. receive
  5. reject

模範解答

選択肢イ: none

配点 3

解説

DMARC の導入初期における適切なポリシー設定を問う問題です。

DMARCポリシー(p=タグ)には、以下の3つの値を設定できます。

  1. none: 何もしない(モニタリングのみ)。
  2. quarantine: 迷惑メールフォルダ等に隔離する。
  3. reject: メールの受信を拒否する。

DMARC導入の初期段階では、正規のメールが誤って拒否・隔離されるリスクを防ぐため、まずは影響を調査する目的で none を設定し、レポートを受信して状況を確認するのが一般的です。

各選択肢の解説

  • ア: accept はDMARCのポリシー値として存在しません。
  • イ: 正解です。導入初期の段階では、影響を確認するために none を設定します。
  • ウ: quarantine は隔離を指示するポリシーであり、影響確認が終わった後の段階で適用を検討する設定です。
  • エ: receive はDMARCのポリシー値として存在しません。
  • オ: reject は拒否を指示する厳格なポリシーであり、影響確認の段階で設定するのは不適切です。

設問3(1)は,正答率が低かった。DKIMの仕組み及び表6のタグの内容を用いれば,正答を導くことができる。DKIMの仕組みについて,よく理解してほしい。

設問4

〔A社ドメイン名の契約についての検討〕について答えよ。

(1)

表7中の下線②について,攻撃の方法を具体的に答えよ。

模範解答

ソフトウェア修正プログラムに見せかけたマルウェアをダウンロードさせる。

採点基準(配点 6点)

知識・理解度(内容)(3点)

  • 3: 失効したドメイン名が悪用されることで、ソフトウェア修正プログラムを装ったマルウェアが配布されるリスクを正しく理解し記述している。
  • 1: マルウェア感染等のリスクには触れているが、ソフトウェア修正プログラムの偽装という具体的な手口への言及が欠けている。
  • 0: 全く関係のない内容、または無回答。

論理性(構造)(3点)

  • 3: 「〜に見せかけたマルウェアをダウンロードさせる」といった攻撃の具体的な方法として、論理的に成立する文脈で記述されている。
  • 1: 文意は通じるが、攻撃の主体や被害の対象の記述が曖昧である。
  • 0: 意味が通じない、または無回答。

解説

ドメイン名を維持せずに失効させた場合のリスク(ドメイン名ハイジャック / ドロップキャッチ)について問う問題です。

A社ドメイン名を解約して手放した場合、第三者がそのドメイン名を取得することが可能になります。攻撃者がかつて信頼されていたA社ドメイン名を取得してWebサイトを立ち上げると、元のA社ドメインの信頼性を悪用してユーザーを騙すことができます。

具体的には、かつての正規サイトであると誤認させ、ソフトウェア修正プログラム に見せかけた マルウェア をダウンロードさせるなどの攻撃手法が考えられます。

高得点のポイント

  • 第三者に取得されたドメインがどのように悪用されるか(マルウェアの配布など)を具体的にイメージできているか。
  • 「ソフトウェア修正プログラムに見せかける」という、利用者を騙す具体的な手口を論理的に記述できているか。

(2)

表7中の下線③について,受信するメールの内容及び続きの攻撃の例を具体的に答えよ。

模範解答

メール: 社外サービスのパスワード再設定画面のURLが書かれたメール、攻撃: 任意のパスワードを設定し,アカウントを乗っ取る。

採点基準(配点 6点)

知識・理解度(内容)(3点)

  • 3: 受信メールの内容(社外サービスのパスワード再設定URL等)と、続きの攻撃(アカウント乗っ取り等)の両方を正確に説明している。
  • 2: 受信メールの内容、または続きの攻撃のいずれか一方が不十分である。
  • 0: 全く関係のない内容、または無回答。

論理性(構造)(3点)

  • 3: ドメイン失効後にメールアドレスが乗っ取られることで生じる連鎖的な攻撃手法が、論理的かつ具体的に構成されている。
  • 1: 断片的なキーワードの羅列にとどまり、攻撃のプロセスが論理的に説明されていない。
  • 0: 意味が通じない、または無回答。

解説

ドメイン失効後に、そのドメインのメールアドレスが悪用されることによる具体的な被害の連鎖を問う問題です。

攻撃者がA社ドメイン名を取得してメールサーバを構築すると、かつてのドメイン宛てのメールを受信できるようになります。
もし社員が社外サービスの登録にこの旧メールアドレスを使用し続けていた場合、攻撃者はその社外サービスで パスワード再設定 を要求することで、再設定用のURLが記載されたメールを受け取ることができます。

その結果、攻撃者は任意のパスワードを再設定し、社員の アカウントを乗っ取る ことが可能になります。

高得点のポイント

  • 受信するメールの内容: 「社外サービスのパスワード再設定画面のURL」が記載されたメールであることを明記しているか。
  • 続きの攻撃の例: パスワードを再設定し、「アカウントを乗っ取る」という最終的な被害を論理的かつ具体的に記述できているか。

(3)

図5中の e に入れる適切な字句を解答群の中から選び,記号で答えよ。

  1. -all
  2. ?all
  3. block
  4. deny
  5. refuse

模範解答

選択肢ア: -all

配点 3

解説

SPF レコードにおいて、認証失敗時のアクションを定義する修飾子(Qualifier)を問う問題です。

SPFレコードの末尾に設定される all メカニズムの修飾子には、以下の種類があります。

  • +all (Pass): 全て許可する。
  • -all (Fail): 許可されていない送信元を完全に拒否する。
  • ~all (SoftFail): 許可されていない送信元からのメールも受信するが、疑わしいものとして扱う。
  • ?all (Neutral): 許可も拒否もしない。

A社ドメイン名からのメール送信を完全に廃止する場合、第三者によるA社ドメイン名のなりすましメールを確実に防ぐため、明示的に拒否する -all を設定するのが適切です。

各選択肢の解説

  • ア: 正解です。認証に失敗したメールを完全に拒否する設定として適切です。
  • イ: ?all は Neutral(中立)であり、なりすましを防ぐ効力はありません。
  • ウ: block はSPFの修飾子として存在しません。
  • エ: deny はSPFの修飾子として存在しません。
  • オ: refuse はSPFの修飾子として存在しません。

設問5

〔Uサービスへの移行の見直し〕について答えよ。

(1)

本文中の下線④について,見直しの内容を具体的に答えよ。

模範解答

SPFレコードに,Tサービスのメール送信元IPアドレスを追加する。

採点基準(配点 6点)

知識・理解度(内容)(3点)

  • 3: SPFレコードに対し、新たに利用するTサービスのメール送信元IPアドレスを追加するという対応策を正確に記述できている。
  • 1: SPFレコードの修正には触れているが、追加する情報(TサービスのIPアドレス)が具体的に示されていない。
  • 0: SPFの仕組みを誤解している(Subjectの変更など)、または無回答。

論理性(構造)(3点)

  • 3: 何の設定を(SPFレコードに)、どのように変更するのか(TサービスのIPアドレスを追加)という手順が論理的に過不足なく記述されている。
  • 1: 対応の方向性は分かるが、設定対象や追加内容の記述が曖昧である。
  • 0: 意味が通じない、または無回答。

解説

Uサービス(別のメール送信サービス等)の移行に伴い、SPF 認証を成功させるために必要な追加設定を問う問題です。

新たなサービス(Tサービス)から自社ドメインのメールを送信する場合、その送信元IPアドレスがSPFレコードに登録されていないと、受信側でSPF認証に失敗してしまいます。
したがって、正当な送信元として SPFレコードTサービスのメール送信元IPアドレス を追加する見直しが必要です。

高得点のポイント

  • 見直しの対象として SPFレコード を正確に挙げられているか。
  • 追加する内容として Tサービスのメール送信元IPアドレス であることを論理的に記述できているか。
  • ※ 採点講評にあるように、SPFは Subject などのメールヘッダを判定対象としません。仕組みを正確に理解した上で解答することが求められます。

(2)

図8中の下線⑤について,SPFによる認証に失敗する理由及びDKIMによる認証に失敗する理由をそれぞれ,Sサービスへの登録内容とYサービスの仕様を含めて,具体的に答えよ。

模範解答

SPF: SPFレコードにYサービスの情報が登録されていないのに,メールがYサービスから送られる。DKIM: DKIMレコードのhタグにSubjectが含まれているのに,YサービスでメールのSubjectが変わる。

採点基準(配点 6点)

知識・理解度(内容)(3点)

  • 3: SPFの失敗理由(SサービスのSPFにYサービスのIPがない)と、DKIMの失敗理由(hタグにSubjectが含まれる状態でYサービスがSubjectを変更する)の両方を正確に説明している。
  • 2: SPFまたはDKIMのいずれかの失敗理由が不足あるいは不正確である。
  • 0: 両方の理由が誤っている、または無回答。

論理性(構造)(3点)

  • 3: Sサービスへの登録内容とYサービスの仕様を明確に結びつけ、各々の認証失敗に至るメカニズムが論理的に説明されている。
  • 1: 要件(登録内容、仕様)を含めずに現象だけを記述しているなど、論理構造に欠ける。
  • 0: 意味が通じない、または無回答。

解説

本問は、メーリングリストなどのメール転送サービスを経由した場合における SPF および DKIM の認証失敗のメカニズムについて問う問題です。

SPF認証に失敗する理由

SPF は、送信元IPアドレスを用いて送信者ドメインの正当性を認証する仕組みです。

  • Sサービスに登録されているSPFレコードには、Yサービス(メーリングリスト)のIPアドレス が登録されていません。
  • そのため、メールがYサービスから転送されて送信された場合、受信側でのIPアドレスベースの認証に失敗します。

DKIM認証に失敗する理由

DKIM は、電子署名を用いてメールの送信元ドメインの正当性と内容の完全性を認証する仕組みです。

  • Sサービス で付与されるDKIM署名の計算対象(hタグ)には、Subject(件名)が含まれています。
  • 一方で、Yサービス はメーリングリストの仕様として、メールの Subject に通番情報を付加して変更します。
  • 署名後に Subject が改変されるため、受信側での署名検証に失敗します。(※ Subject を判定対象外とするSPFと混同しないよう注意が必要です)

高得点のポイント

  • SPFについては「SサービスのSPFレコードへの登録内容」と「Yサービスから送信される事実」を結びつけて論理的に記述できているか。
  • DKIMについては「hタグにSubjectが含まれること」と「YサービスによるSubjectの書き換え」の両方を漏れなく記述できているか。

設問5(2)SPFは,正答率がやや低かった。メールのSubjectに通番情報を付加するといった解答が散見された。SPFでは,Subjectを判定対象としていない。SPFの仕組みについて,よく理解してほしい。設問5(2)DKIMは,正答率が平均的であった。表6のhタグにおいて,Subjectを判定対象として含んでいる。メールのSubjectに通番情報を付加すると,DKIMによる認証が失敗する。DKIMの仕組みと,メーリングリストの設定を理解した上で,解答してほしい。