令和6年度 春期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰ 問3 ローカルブレイクアウトとプロキシ自動設定

テクノロジネットワークセキュリティ技術

この問題は2024(R6)春 ネットワークスペシャリスト 午後Iに出題されたものです。出題時点の法令・制度に基づく内容のため、現行の内容と一致しない場合があります。

本ページの問題文・選択肢は、原本の体裁を Web 表示用に正規化しています(改行・記号・数式・図表参照の調整)。設問の趣旨および正解に影響する変更は加えていません。

学習ガイド

クラウド利用の増加でVPN回線が逼迫する状況を背景に、SaaS宛て通信を支社から直接インターネットへ抜くローカルブレイクアウトを設計する問題です。前半はIPsec VPNの鍵管理やIP Unnumberedといった基盤知識、後半はPACファイルのコード読解とWPADの仕組みが問われます。この記事では、PACファイルの関数を実際のURLを当てはめて机上実行しながら、プロキシ制御の設計意図を読み解きます。

この記事で押さえる論点

  • IPsec VPNの鍵管理・カプセル化・フラグメント処理を説明する
  • PACファイルの判定ロジックを読んでプロキシ経由/直接接続を判別する
  • WPADの仕組みとなりすましの脅威を理解する

問題本文

問3 ローカルブレイクアウトによる負荷軽減に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。

A社は,従業員300人の建築デザイン会社である。東京本社のほか,大阪,名古屋,仙台,福岡の4か所の支社を構えている。本社には100名,各支社には50名の従業員が勤務している。
A社は,インターネット上のC社のSaaS(以下,C社SaaSという)を積極的に利用する方針にしている。A社情報システム部ネットワーク担当のBさんは,C社SaaS宛ての通信がHTTPSであることから,ネットワークの負荷軽減を目的に,各支社のPCからC社SaaS宛ての通信を,本社のプロキシサーバを利用せず直接インターネット経由で接続して利用できるようにする,ローカルブレイクアウトについて検討することにした。

〔現在のA社のネットワーク構成〕

現在のA社のネットワーク構成を図1に示す。

図1 現在のA社のネットワーク構成(抜粋)
図の説明テキスト

インターネットとC社 SaaSに接続されている。東京本社と大阪支社がIPsecトンネルで接続されている。東京本社はUTMを介してインターネットに接続し、その下にL3SWが配置されている。L3SWにはプロキシサーバが接続され、さらにDMZと内部ネットワークが接続されている。DMZにはL2SWを介してコンテンツDNSサーバ、キャッシュDNSサーバ、Webサーバがある。内部ネットワークにはL2SWと複数のPCがある。大阪支社もUTMを介してインターネットに接続し、IPsecトンネルで東京本社のUTMと繋がっている。大阪支社の内部ネットワークにはL2SWと複数のPCがある。図の下部に「L2SW:レイヤー2スイッチ」「L3SW:レイヤー3スイッチ」「UTM:統合脅威管理装置」「太線:IPsec トンネル」の注記がある。

現在のA社のネットワーク構成の概要を次に示す。

  • 本社及び各支社は IPsec VPN機能をもつUTMでインターネットに接続している。
  • プロキシサーバは,従業員が利用するPCのHTTP通信,HTTPS通信をそれぞれ中継する。プロキシサーバではセキュリティ対策として各種ログを取得している。
  • DMZや内部ネットワークではプライベートIPアドレスを利用している。
  • PCには,DHCPを利用してIPアドレスの割当てを行っている。
  • PCが利用するサーバは,全て本社のDMZに設置されている。
  • A社からインターネット向けの通信については,本社のUTMでNAPTによるIPアドレスとポート番号の変換をしている。

〔現在のA社のVPN構成〕

A社は,UTMの IPsec VPN機能を利用して,本社をハブ,各支社をスポークとする型のVPNを構成している。本社と各支社との間のVPNは,IP in IPトンネリング(以下,IP-IPという)でカプセル化し,さらに IPsec を利用して暗号化することで IP-IP over IPsec インタフェースを構成し,2拠点間をトンネル接続している。本社のUTMと支社のUTMのペアでは IPsec で暗号化するために同じ鍵を共有しているこの鍵はペアごとに異なる値が設定されている

IPsec の通信モードには,トランスポートモードとトンネルモードがあるが,A社のVPNではトランスポートモードを利用している

A社のVPNを構成するIPパケット構造を図2に示す。

図2 A社の VPN を構成する IP パケット構造
図の説明テキスト

(1) 元の IP パケットを IP-IP でカプセル化した IP パケット
左から順に以下のフィールドで構成される:

  • IPヘッダー
  • 元の IP パケット (内訳: 元の IP ヘッダー, 元の IP ペイロード)

(2) (1) の IP パケットを更に IPsec で暗号化した IP パケット
左から順に以下のフィールドで構成される:

  • IPヘッダー
  • ESPヘッダー
  • 元の IP パケット (内訳: 元の IP ヘッダー, 元の IP ペイロード)
  • ESPトレーラ
  • ESP認証データ

注記: 元のIPパケットは、DMZや内部ネットワークから送信された IPパケットを示す。

VPNを構成するために,本社と各支社のUTMには固定のグローバルIPアドレスを割り当てている。IP-IP over IPsec インタフェースでは,IP Unnumbered 設定が行われている。また,IP-IP over IPsecインタフェースでは,中継するTCPパケットのIPフラグメントを防止するための設定が行われている

〔プロキシサーバを利用した制御〕

BさんはUTMについて調べたところ,追加ライセンスを購入することでプロキシサーバ(以下,UTMプロキシサーバという)として利用できることが分かった。

Bさんは,ネットワークの負荷軽減のために,各支社のPCからC社SaaS宛ての通信は,各支社のUTMプロキシサーバをプロキシサーバとして指定することで直接インターネットに向けることを考えた。また,各支社のPCからその他インターネット宛ての通信は,通信相手を特定できないことから,各種ログを取得するために,これまでどおり本社のプロキシサーバをプロキシサーバとして指定することを考えた。各支社のPCから,C社SaaS宛てとその他インターネット宛ての通信の流れを図3に示す。

図3 各支社のPCから, C社 SaaS宛てとその他インターネット宛ての通信の流れ
図の説明テキスト

上部に「インターネット」の雲があり、その中に「C社 SaaS」が含まれる。左側には「東京本社」、右側には「大阪支社」のネットワーク構成図がある。東京本社の構成: DMZ(コンテンツDNSサーバ、キャッシュDNSサーバ、Webサーバ、プロキシサーバ)、UTM、L3SW、L2SW、内部ネットワーク(PC)。大阪支社の構成: UTM、UTMプロキシサーバ、L2SW、内部ネットワーク(PC)。図の下部には凡例があり、「太い破線矢印:C社 SaaS宛ての通信」「細い点線矢印:その他インターネット宛ての通信」を示す。太い破線矢印は、大阪支社のPCからL2SW、UTMプロキシサーバを経由してインターネット上のC社SaaSへ向かう。細い点線矢印は、大阪支社のPCから東京本社のUTM、L3SWを経由し、DMZのプロキシサーバを折り返して再びL3SW、UTMを通りインターネットへ向かう流れを示している。

Bさんは,各支社のPCが利用するプロキシサーバを制御するためにプロキシ自動設定(以下,PACという)ファイルとWebプロキシ自動検出(以下,WPADという)の導入を検討することにした。

〔PACファイル導入検討〕

BさんはPACファイルの作成方法について調査した。PACファイルはJavaScriptで記述する。PACファイルに記述するFindProxyForURL関数の第1引数であるurlにはアクセス先のURLが,第2引数であるhostにはアクセス先のURLから取得したホスト名が渡される。これらの引数に渡された値を様々な関数を用いて条件分けし,利用するプロキシサーバを決定する。FindProxyForURL関数の戻り値が“DIRECT”ならば,プロキシサーバを利用せず直接通信を行う。戻り値が“PROXY host:port”ならば,指定されたプロキシサーバ(host)のポート番号(port)を利用する。

テスト用に大阪支社のUTMを想定したPACファイルを作成した。Bさんが作成した大阪支社のUTMのPACファイルを図4に示す。

図4 Bさんが作成した大阪支社のUTMのPACファイル
図の説明テキスト

左側にPACファイル(JavaScript)のコード枠、右側に処理名と処理の説明文の対応表が配置されている。

左側のコード概要:
function FindProxyForURL(url, host) {
// (a)
var ip = dnsResolve(host);
// (b)
if (localHostOrDomainIs(host, "localhost") || isInNet(ip, "10.0.0.0", "255.0.0.0") || ... ) {
return "DIRECT";
}
// (c)
if (dnsDomainIs(host, "image.cdn.example") || shExpMatch(host, "*.c-saas.example") ) {
return "PROXY proxy.osaka.a-sha.jp:8080";
}
// (d)
return "PROXY proxy.a-sha.jp:8080";
}

右側の表:

処理名 処理の説明文
(a) host を IP アドレスに変換し,変数 ip に代入する。
(b) host が localhost,又は(a)で宣言した ip がプライベート IP アドレスやループバックアドレス,又は host が A 社の社内利用ドメイン名に属する場合,FindProxyForURL 関数の戻り値として "DIRECT" を返す。
(c) host が C 社 SaaS 利用ドメイン名に属する場合,又は host が C 社 SaaS 利用ドメイン名のシェルグロブ表現に一致する場合,FindProxyForURL 関数の戻り値として "PROXY proxy.osaka.a-sha.jp:8080" を返す。
(d) (b),(c) どちらにも該当しない場合,FindProxyForURL 関数の戻り値として "PROXY proxy.a-sha.jp:8080" を返す。

図の下の記述:
image.cdn.example : C社 SaaS 利用ドメイン名
c-saas.example : C社 SaaS 利用ドメイン名
a-sha.jp : A社の社内利用ドメイン名
proxy.a-sha.jp : 本社のプロキシサーバの FQDN
proxy.osaka.a-sha.jp : 大阪支社の UTM プロキシサーバの FQDN
注記 説明文中の host は,引数 host に渡された値(ホスト名)を示す。

Bさんは,テスト用のPCとテスト用のUTMプロキシサーバを用意し,作成したPACファイルを利用することで,テスト用のPCからC社SaaS宛ての通信が,期待どおりの本社のプロキシサーバを利用せずに,テスト用のUTMプロキシサーバを利用することを確認した。Bさんは各支社のPACファイルを作成した

〔WPAD導入検討〕

WPADは,の機能を利用して,PACファイルの場所を配布するプロトコルである。PCやWebブラウザのWebプロキシ自動検出が有効になっていると,サーバやサーバと通信を行い,アプリケーションレイヤープロトコルの一つであるを利用してサーバからPACファイルのダウンロードを試みる。

WPADの利用には,PCやWebブラウザのWebプロキシ自動検出を有効にするだけでよく,簡便である一方,悪意のあるサーバやサーバがあるとPCやWebブラウザが脅威にさらされる可能性も指摘されている。Bさんは,WPADは利用しないことにし,PCやWebブラウザのWebプロキシ自動検出を無効にすることにした。PCやWebブラウザにはPACファイルのを直接設定する。

Bさんが検討した対応案が承認され,情報システム部はプロジェクトを開始した。

設問と解答・解説

設問1

〔現在のA社のVPN構成〕 について答えよ。

(1)

本文中の に入れる適切な字句を答えよ。

模範解答

ハブアンドスポーク

採点基準(配点 3点)

正確性(内容)(3点)

  • 3: 正解と完全に一致している。
  • 1: 軽微な表記揺れがあるが、意味合いとして正解と同等とみなせる。
  • 0: 不正解、または解答欄が空欄。

解説

VPNのトポロジに関する問題です。本社を中心に各拠点を接続する形態はハブアンドスポーク構成と呼ばれます。

高得点のポイント

  • ネットワークトポロジの基本用語を正確に記述できること。

(2)

本文中の 下線① について,本社のUTMと支社のUTMのペアで共有する鍵を何と呼ぶか答えよ。

模範解答

事前共有鍵

採点基準(配点 3点)

正確性(内容)(3点)

  • 3: 正解と完全に一致している。
  • 1: 軽微な表記揺れがあるが、意味合いとして正解と同等とみなせる。
  • 0: 不正解、または解答欄が空欄。

解説

IPsec VPNにおいて、通信を行う機器同士であらかじめ共有しておく鍵を事前共有鍵(PSK: Pre-Shared Key)と呼びます。設問の講評にもある通り、基本的な技術用語として確実に理解しておきましょう。

高得点のポイント

  • IPsecの鍵交換に用いられる用語「事前共有鍵」を正確に解答できること。

(3)

本文中の 下線② について,鍵は全て同じではなく,ペアごとに異なる値を設定することで得られる効果を,鍵の管理に着目して25字以内で答えよ。

模範解答

鍵が漏えいした際の影響範囲を小さくできる。

採点基準(配点 3点)

知識・理解度(内容)(2点)

  • 2: 影響範囲の局所化について明確に言及している。
  • 1: 影響範囲が減る旨の記載はあるが、表現が曖昧。
  • 0: 言及がない、または不正確。

論理性(構造)(1点)

  • 1: 適切な文脈で構成されている。
  • 0: 文脈が不自然、または問いに対する答えとして成立していない。

解説

全てのVPNコネクションで同じ鍵を使用すると、1箇所の鍵が漏えいした場合に全拠点の通信が危殆化するリスクがあります。ペアごとに異なる鍵を設定することで、漏えい時の影響を当該ペアのみに局所化できます。

高得点のポイント

  • 知識・理解度: 鍵の漏えい時の影響範囲が小さくなること(局所化)に言及していること。
  • 論理性: 「影響範囲を小さくできる」など、効果として適切な文脈でまとめていること。

(4)

本文中の 下線③ について,A社のVPNで利用しているトランスポートモードとした場合は元のIPパケット(元のIPヘッダーと元のIPペイロード)とESPトレーラの範囲を暗号化するのに対し,A社のVPNをトンネルモードとした場合はどの範囲を暗号化するか。図2中の字句で全て答えよ。

模範解答

IPヘッダー,元のIPパケット,ESPトレーラ

採点基準(配点 3点)

正確性(内容)(3点)

  • 3: 正解と完全に一致している。
  • 1: 一部の範囲指定に誤りや過不足がある。
  • 0: 不正解、または解答欄が空欄。

解説

IPsecのトンネルモードでは、元のIPパケット全体(IPヘッダーとペイロード)に加えてESPトレーラが暗号化されます。ESPヘッダーは暗号化の対象外となるため、図中の適切な範囲を選択する際は注意が必要です。

高得点のポイント

  • トンネルモードにおける暗号化範囲(元のIPパケット、ESPトレーラ)を正確に列挙できること。
  • ESPヘッダーを暗号化範囲に含めないこと。

(5)

本文中の 下線④ について,IP Unnumbered設定とはどのような設定か。“IPアドレスの割当て”の字句を用いて 30 字以内で答えよ。

模範解答

インタフェースにIPアドレスの割当てを行わない設定

採点基準(配点 3点)

知識・理解度(内容)(2点)

  • 2: インタフェースに対するIPアドレスの割り当てを行わない設定であることを正確に示している。
  • 1: IPアドレスの割り当てに関する記載はあるが、対象(インタフェース)への言及が欠けているなどやや不十分。
  • 0: 不正確または言及がない。

論理性(構造)(1点)

  • 1: 適切な文脈でまとまっている。
  • 0: 文脈が不自然。

解説

IP Unnumberedとは、ルータなどのシリアルインタフェース等に対して個別のIPアドレスを割り当てず、他のインタフェースのIPアドレスを借用する設定です。これによりIPアドレスを節約できます。

高得点のポイント

  • 知識・理解度: インタフェースに対してIPアドレスを割り当てない設定であることを明記していること。
  • 論理性: 指定された字句「IPアドレスの割当て」を用いて自然な文にまとめていること。

(6)

本文中の 下線⑤ について,中継する TCP パケットの IP フラグメントを防止するための設定を行わず,UTM で IP フラグメント処理が発生する場合,UTM にどのような影響があるか。10 字以内で答えよ。

模範解答

転送負荷の増大

採点基準(配点 3点)

知識・理解度(内容)(2点)

  • 2: 処理負荷(転送負荷)の増加について明確に言及している。
  • 1: 負荷に関する記載はあるが、表現が曖昧。
  • 0: 誤った影響を記述している。

論理性(構造)(1点)

  • 1: 端的にまとめられている。
  • 0: 文脈が不自然。

解説

UTMでIPフラグメント(パケットの分割・再結合)処理が発生すると、CPUなどのリソースを消費するため、転送負荷の増大を招きます。機器のパフォーマンス低下に繋がるため、適切なMTU/MSS設定によるフラグメント防止が重要です。

高得点のポイント

  • 知識・理解度: フラグメンテーション処理による負荷(リソース消費)の増加を理解していること。
  • 論理性: 短い制限文字数の中で簡潔に表現していること。

設問1では,(2)の正答率がやや低かった。事前共有鍵はIPsecの基本的な技術用語なので是非知っておいてもらいたい。(3)の正答率が低かった。ESPヘッダーを含めた誤った解答が多かった。ESPヘッダーは,暗号化の範囲に含まれないことをしっかり理解してほしい。

設問2

〔PAC ファイル導入検討〕 について答えよ。

(1)

図 4 について,DMZ にある Web サーバにアクセスする際,プロキシサーバを利用する場合はプロキシサーバ名を答えよ。プロキシサーバを利用しない場合は“利用しない”と答えよ。

模範解答

利用しない

採点基準(配点 4点)

正確性(内容)(4点)

  • 4: 正解と完全に一致している。
  • 2: 軽微な表記揺れがあるが、意味合いとして正解と同等とみなせる。
  • 0: 不正解、または解答欄が空欄。

解説

PAC(Proxy Auto-Configuration)ファイルの導入において、宛先がDMZ(内部ネットワークの一部やイントラネット)に配置されているWebサーバの場合、プロキシサーバを経由せずに直接通信(DIRECT)するのが一般的です。

高得点のポイント

  • 社内(DMZ等)向けの通信ではプロキシを利用しない(DIRECT)設定とすることを理解していること。

(2)

図 4 について,インターネット上にある https://www.example.com/foo/index.html にアクセスする際,プロキシサーバを利用する場合はプロキシサーバ名を答えよ。プロキシサーバを利用しない場合は“利用しない”と答えよ。

模範解答

proxy.a-sha.jp

採点基準(配点 3点)

正確性(内容)(3点)

  • 3: 正解と完全に一致している。
  • 1: 軽微な表記揺れがあるが、意味合いとして正解と同等とみなせる。
  • 0: 不正解、または解答欄が空欄。

解説

宛先がインターネット上のURLである場合、外部との通信を中継・制御するためにプロキシサーバを経由する必要があります。図4等の設定に基づき、A社のプロキシサーバ名を指定します。

高得点のポイント

  • インターネット宛の通信において、適切に社内プロキシサーバを経由させる設定を把握していること。

(3)

図 4 について,isInNet(ip, “172.16.0.0”, “255.240.0.0”) のアドレス空間は,どこからどこまでか。最初の IP アドレスと最後の IP アドレスを答えよ。

模範解答

最初 172.16.0.0,最後 172.31.255.255

採点基準(配点 3点)

正確性(内容)(3点)

  • 3: 正解と完全に一致している。
  • 1: 片方のみ正しいなど、部分的に一致している。
  • 0: 不正解、または解答欄が空欄。

解説

関数で指定されたIPアドレスとサブネットマスク 255.240.0.0255.240.0.0 は、プライベートIPアドレス空間の一部であるクラスBの範囲を表します。アドレス空間にはネットワークアドレスやブロードキャストアドレスも含まれるため、172.16.0.0172.16.0.0 から 172.31.255.255172.31.255.255 までとなります。

高得点のポイント

  • サブネットマスク 255.240.0.0255.240.0.0 の範囲計算を正確に行えること。
  • アドレス空間の両端(最初と最後)を正確に答えること。

(4)

図 4 について,変数 ip がプライベート IP アドレスの場合,戻り値を“DIRECT”にすることで得られる効果を,“負荷軽減”の字句を用いて 20 字以内で答えよ。

模範解答

本社のプロキシサーバの負荷軽減

採点基準(配点 3点)

知識・理解度(内容)(2点)

  • 2: 本社のプロキシサーバのリソース節約(負荷軽減)になることを明確に言及している。
  • 1: 負荷軽減については触れているが、対象(本社プロキシ)が曖昧。
  • 0: 誤った効果を記述している。

論理性(構造)(1点)

  • 1: 適切な文脈で効果が記述されている。
  • 0: 文脈が不自然。

解説

社内ネットワーク(プライベートIP)宛の通信をプロキシサーバ経由にしてしまうと、無駄なトラフィックがプロキシサーバに集中します。これを直接通信(DIRECT)に設定することで、本社のプロキシサーバの負荷軽減を図ることができます。

高得点のポイント

  • 知識・理解度: 内部宛通信をプロキシから除外する目的が、プロキシサーバのリソース節約であることを理解していること。
  • 論理性: 指定された字句「負荷軽減」を用いて、何(本社プロキシ)の負荷が軽減されるかを明確にしていること。

(5)

本文中の 下線⑥ について,PAC ファイルは支社ごとに用意する必要がある理由を 25 字以内で答えよ。

模範解答

UTMプロキシサーバのFQDNが異なるから

採点基準(配点 3点)

知識・理解度(内容)(2点)

  • 2: 各支社で経由するUTMプロキシサーバのFQDN(またはIPアドレス)が異なる点に明確に言及している。
  • 1: 拠点ごとに環境が異なることには触れているが、具体的な要素(FQDN/IP)が曖昧。
  • 0: 理由として不適切または言及がない。

論理性(構造)(1点)

  • 1: 理由として適切な文脈で結ばれている。
  • 0: 文脈が不自然。

解説

各支社にUTMを導入してローカルブレイクアウトを実現する場合、支社ごとに利用するプロキシサーバ(UTM)が異なります。そのため、プロキシサーバのFQDNやIPアドレスを指定するPACファイルは、支社ごとに個別のものを用意する必要があります。

高得点のポイント

  • 知識・理解度: 支社ごとに経由すべきプロキシサーバ(UTM)のFQDN(またはIP)が異なる点に言及していること。
  • 論理性: 「~だから」「~が異なるため」など理由として適切な文脈で結ばれていること。

設問2では,(3)の正答率が低かった。172.16.0.0や172.31.255.255はIPアドレスとして利用可能であるが,これらを含めない誤った解答が散見された。IPアドレスのアドレス空間を正しく理解することは,ネットワーク技術者として重要である。

設問3

〔WPAD 導入検討〕 について答えよ。

(1)

本文中の に入れる適切な字句を答えよ。

模範解答

DHCP

採点基準(配点 4点)

正確性(内容)(4点)

  • 4: 正解と完全に一致している。
  • 2: 軽微な表記揺れがあるが、意味合いとして正解と同等とみなせる。
  • 0: 不正解、または解答欄が空欄。

解説

Web Proxy Auto-Discovery (WPAD) プロトコルは、クライアントが自動的にプロキシ設定ファイル(PACファイル)の場所を検出するための仕組みです。WPADでは、通常 DHCP と DNS の2つの方法を用いて設定ファイルのURLを配布します。

高得点のポイント

  • WPADで利用されるプロトコル(DHCP)を正確に解答できること。

(2)

本文中の に入れる適切な字句を答えよ。

模範解答

DNS

採点基準(配点 3点)

正確性(内容)(3点)

  • 3: 正解と完全に一致している。
  • 1: 軽微な表記揺れがあるが、意味合いとして正解と同等とみなせる。
  • 0: 不正解、または解答欄が空欄。

解説

WPADにおいて、DHCPによる取得ができない場合、クライアントは DNS を利用して名前解決を試み、PACファイルの場所を特定します。

高得点のポイント

  • WPADで利用される名前解決システム(DNS)を正確に解答できること。

(3)

本文中の に入れる適切な字句を答えよ。

模範解答

HTTP

採点基準(配点 3点)

正確性(内容)(3点)

  • 3: 正解と完全に一致している。
  • 1: 軽微な表記揺れがあるが、意味合いとして正解と同等とみなせる。
  • 0: 不正解、または解答欄が空欄。

解説

WPADによって特定されたPACファイルは、通常Webサーバ上に配置されており、HTTP プロトコルを用いてクライアント(Webブラウザ)へダウンロードされます。

高得点のポイント

  • PACファイルの取得に用いられるプロトコル(HTTP)を正確に解答できること。

(4)

本文中の に入れる適切な字句を答えよ。

模範解答

URL

採点基準(配点 3点)

正確性(内容)(3点)

  • 3: 正解と完全に一致している。
  • 1: 軽微な表記揺れがあるが、意味合いとして正解と同等とみなせる。
  • 0: 不正解、または解答欄が空欄。

解説

WPADは、DHCPやDNSを利用してPACファイルが配置されている場所、すなわち URL をクライアントに通知する仕組みです。このURLをもとに、ブラウザはHTTPでファイルを取得します。

高得点のポイント

  • WPADで配布・検出されるものがPACファイルの「URL」であることを理解していること。

(5)

本文中の 下線⑦ について,どのような脅威があるか。25 字以内で答えよ。

模範解答

不正なプロキシサーバに中継される。

採点基準(配点 3点)

知識・理解度(内容)(2点)

  • 2: 悪意のある(不正な)プロキシサーバへ通信が誘導されるリスクに明確に言及している。
  • 1: 中間者攻撃などの脅威に触れているが、プロキシ誘導の具体的なメカニズムに欠ける。
  • 0: 脅威の記述として不適切。

論理性(構造)(1点)

  • 1: 簡潔に脅威が記述されている。
  • 0: 文脈が不自然。

解説

WPAD環境において、攻撃者が偽のDHCPサーバを立ち上げたり、DNSをポイズニングしたりすることで、偽のPACファイルのURLをクライアントに配布できます。その結果、通信が不正なプロキシサーバに中継される(中間者攻撃に遭う)脅威があります。

高得点のポイント

  • 知識・理解度: 偽のWPAD情報によって、悪意のあるプロキシサーバへ通信が誘導されるリスクを理解していること。
  • 論理性: どのような状態になるか(不正なプロキシに中継される等)を簡潔に記述していること。

設問3では,(1)オの正答率が低かった。企業などのインターネット接続は,プロキシサーバを組み合わせて構成されることが一般的である。PCやWebブラウザのプロキシ設定にはどのような種類があり,現場でどのように運用されているか,是非理解を深めてもらいたい。