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2026年4月施行の区分所有法改正:管業の過去問から変わった論点

令和7年(2025年)5月30日に「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」が公布され、区分所有法の改正の大部分が2026年4月1日に施行されました。管理業務主任者試験は、出題年度の4月1日現在で施行されている法令等を出題の根拠にします。2026年度(令和8年度)の試験は、改正後の規定が根拠になります。

一方、平成28年度〜令和7年度の過去問とその解説は、改正前の規定に基づいています。この記事では、管業の過去問がよく問う論点のうち、改正で変わったものを、改正前後の条文で確認します。

本記事は、e-Gov 法令検索の建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)の条文を、改正前(2025年4月1日時点)と現行(2026年11月1日時点)で比べて作成しました。条文の正確な文言は e-Gov 法令検索で確認してください。

1. 集会の決議の数え方 — 出席者を基準にする

改正の中心は、集会の決議を「区分所有者全員」ではなく「集会に出席した区分所有者」を基準に数えるようにしたことです。

  • 普通決議: 改正前は「区分所有者及び議決権の各過半数」でした。現行は「出席した区分所有者及びその議決権の各過半数」です(第39条第1項)。
  • 書面・代理人・電磁的方法による議決権の行使: 書面や代理人によって議決権を行使した区分所有者は、出席した区分所有者の数に算入されます。電磁的方法による行使も、書面による行使とみなして同じく算入されます(第39条第2項・第3項)。
  • 議決権を有しない区分所有者: 後で触れる所在等不明区分所有者の除外の裁判を受けた区分所有者は議決権を持たず、決議や招集の定数の母数から除かれます。

主な決議の要件を、改正前後で並べるとこうなります。

決議 改正前 現行
普通決議 区分所有者及び議決権の各過半数 出席した区分所有者及びその議決権の各過半数
共用部分の変更(形状又は効用の著しい変更を伴うもの) 区分所有者及び議決権の各4分の3以上(区分所有者の定数は規約で過半数まで減らせる) 区分所有者の過半数で議決権の過半数を有する者が出席し(規約で引き上げ可)、出席した区分所有者及びその議決権の各4分の3以上(規約で2分の1を超える割合まで引き下げ可)
上のうち、共用部分の瑕疵の除去やバリアフリー化のための変更 (区別なし) 上の「4分の3」を「3分の2」とする
規約の設定・変更・廃止 区分所有者及び議決権の各4分の3以上 区分所有者の過半数で議決権の過半数を有する者が出席し(規約で引き上げ可)、出席した区分所有者及びその議決権の各4分の3以上
大規模滅失の復旧(建物の価格の2分の1を超える部分が滅失したとき) 区分所有者及び議決権の各4分の3以上 区分所有者の過半数で議決権の過半数を有する者が出席し(規約で引き上げ可)、出席した区分所有者及びその議決権の各3分の2以上
建替え決議 区分所有者及び議決権の各5分の4以上 区分所有者(議決権を有しない者を除く)及び議決権の各5分の4以上。耐震性の不足など法律が定める事由があれば各4分の3以上

共用部分の変更、規約の変更、大規模滅失の復旧は、出席の定数(定足数)と、出席者の中での割合の2段で決まるようになりました。建替え決議は、出席者ではなく区分所有者全体(議決権を有しない者を除く)を基準にしたままです。

2. 所在等不明区分所有者の除外

区分所有者を知ることができないとき、又はその所在を知ることができないときは、他の区分所有者又は管理者の請求により、裁判所が「その区分所有者以外の区分所有者による集会の決議をすることができる」旨の裁判をすることができます(第38条の2)。この裁判を受けた区分所有者は、集会での議決権を持ちません。

3. 集会の招集の通知

項目 改正前 現行
通知に示す事項 会議の目的たる事項。議案の要領は、共用部分の変更・規約の変更・建替えなどの特定の決議事項のときだけ 会議の目的たる事項及び議案の要領(決議事項を問わない)
1週間前という期間 規約で伸縮できる 規約で伸長できる(短縮はできない)
通知先 各区分所有者 各区分所有者(議決権を有しない者を除く)

区分所有者による集会の招集請求の定数(区分所有者の5分の1以上で議決権の5分の1以上)と、招集手続の省略・書面又は電磁的方法による決議に必要な全員の同意・承諾も、議決権を有しない区分所有者を除いて数えるようになりました。

4. 共用部分の工事に伴う専有部分の工事

共用部分の変更や管理の工事に伴って専有部分の工事が必要になる場合(たとえば共用の配管の更新に伴う専有部分内の工事)について、規約に特別の定めがあるときは、その専有部分の保存行為等を集会の決議で決めることができるようになりました(第17条第3項・第18条第4項)。決議で工事の態様や費用の分担を定めるときは、区分所有者間の利害の衡平が図られるようにしなければなりません。

5. 管理者の権限 — 保険金・損害賠償金の請求

管理者は、共用部分等について生じた損害賠償金や不当利得による返還金、損害保険契約に基づく保険金の請求と受領について、区分所有者を代理します。改正で、この代理の相手に、請求権を持つ区分所有者であった者(書面又は電磁的方法で別段の意思表示をした者を除く)も含まれるようになりました(第26条第2項)。

6. 建替え決議の要件の緩和と、新しい再生の決議

建替え決議は、原則として区分所有者及び議決権の各5分の4以上です。建物が次のどれかに当たるときは、各4分の3以上で決議できるようになりました(第62条第2項)。どの場合も、法務大臣が定める基準に当たるかどうかで決まります。

  • 地震に対する安全性について、建築基準法などの規定に準ずるものとして法務大臣が定める基準に適合していない
  • 火災に対する安全性について、同じく法務大臣が定める基準に適合していない
  • 外壁・外装材などが剝離し、落下して周辺に危害を生ずるおそれがあるものとして、法務大臣が定める基準に該当する
  • 給水・排水その他の配管設備のうち、改修工事を行うことが著しく困難なものとして法務省令で定めるものが、損傷・腐食などの劣化により著しく衛生上有害となるおそれがあるものとして、法務大臣が定める基準に該当する。法務省令(区分所有法施行規則)が定めるのは、専有部分の天井裏に設ける配管設備で、その直上階の専有部分・共用部分の給水・排水のためのもののうち、改修工事が著しく困難なものとして法務大臣が定めるものです。改修しやすい配管が劣化しているだけでは、この緩和には当たりません
  • 高齢者・障害者等の移動等の円滑化について、建築物移動等円滑化基準に準ずるものとして法務大臣が定める基準に適合していない

建替えのほかに、建物更新決議(建物の構造上主要な部分の効用を維持・回復するために共用部分の形状を変更し、これに伴って全ての専有部分の形状・面積・位置関係を変更すること)、建物敷地売却決議、建物取壊し敷地売却決議、取壊し決議が設けられました(第64条の5〜第64条の8)。

7. 新設されたその他の制度

  • 区分所有者の責務: 区分所有者は、管理が適正かつ円滑に行われるよう、相互に協力しなければならない(第5条の2)
  • 国内管理人: 国内に住所等を持たない区分所有者は、専有部分と共用部分の管理に関する事務を行わせるため、国内に住所等を持つ者から管理人を選任できる。国内管理人は、保存行為、集会の招集の通知の受領、集会での議決権の行使などをする権限を持つ(第6条の2)
  • 所有者不明専有部分管理命令・管理不全専有部分管理命令・管理不全共用部分管理命令: 所有者が分からない専有部分や、管理が不適当で他人の権利を侵害するおそれがある専有部分・共用部分について、裁判所が管理人による管理を命じる制度(第46条の2〜第46条の14)

8. 関連する法律と、標準管理規約・標準管理委託契約書

  • マンションの建替え等の円滑化に関する法律: 題名が「マンションの再生等の円滑化に関する法律」に改められました(2026年4月1日)
  • マンションの管理の適正化の推進に関する法律: マンション管理業者が管理組合の管理者等の事務(管理者事務)の委託を受ける契約について、重要事項の説明・契約の成立時の書面・管理事務の報告の規定が整えられ、利益相反のおそれがある場合の区分所有者等への事前説明が新設されました。改正の一部は2027年4月1日に施行されます
  • 被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法: 同じ改正法で改められました(2026年4月1日)
  • マンション標準管理規約: 令和7年に改正され(2025年10月公表)、総会の決議の多数決要件、招集通知の事項、所在等不明区分所有者の決議からの除外、国内管理人、共用部分の管理に伴う専有部分の保存行為、修繕積立金の使途、所有者不明・管理不全専有部分の管理制度、損害賠償請求権等の代理行使などが改正後の区分所有法に合わせて改められました
  • マンション標準管理委託契約書: 令和7年に改正され(2025年12月公表)、マンション管理業者が管理組合の管理者を務める方式への対応などが加えられました

9. 過去問を解くときの注意

Spine の過去問の正解と解説は、出題年度の4月1日時点の法令等に基づいています。この記事で挙げた論点の過去問は、次の手順で使ってください。

  1. まず出題当時の規定で解く: 問題文と選択肢は当時の規定で作られているので、解説も当時の規定で読みます
  2. 次に現行の規定に当てはめ直す: 決議の要件・招集通知・管理者の権限などは、この記事の表で現行の規定を確かめ、同じ記述が現行でも正しいかを考えます
  3. 数字は改正後で覚える: 「各4分の3」「各過半数」といった割合は、何を母数にするか(区分所有者全体か、出席者か)とセットで覚え直します

管理業務主任者試験の過去問は登録なしで解けます。区分所有法・標準管理規約の分野の出題数は分野別出題分析で確認できます。


出典

  • e-Gov 法令検索: 建物の区分所有等に関する法律(改正前 2025年4月1日時点・現行 2026年11月1日時点の比較。第5条の2、第6条の2、第17条、第18条、第26条、第31条、第34条〜第36条、第38条の2、第39条、第45条、第46条の2〜第46条の14、第61条、第62条、第64条の5〜第64条の8)
  • e-Gov 法令検索: 建物の区分所有等に関する法律施行規則(第8条 改修に関する工事を行うことが著しく困難な配管設備)
  • e-Gov 法令検索: マンションの管理の適正化の推進に関する法律(第72条、第73条、第77条、第77条の2)、マンションの再生等の円滑化に関する法律、被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法の改正履歴
  • マンション管理業協会: 令和8年度 管理業務主任者試験 実施要領(出題の根拠となる法令等)
  • 国土交通省: マンション標準管理規約(令和7年改正)、マンション標準管理委託契約書(令和7年改正)

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