令和5年度 春期 ITサービスマネージャ試験 午後II 問1 顧客とのサービスレベル合意とSLA見直しの仕組み(論文)

マネジメントサービスマネジメント

この問題は2023(R5)春 ITサービスマネージャ 午後IIに出題されたものです。出題時点の法令・制度に基づく内容のため、現行の内容と一致しない場合があります。

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学習ガイド

高度化する顧客要求に対し、サービスレベルを合意する取組を論じる午後II問題です。対象項目と背景、顧客との討議、サプライヤとの調整、SLAを見直す仕組みを一つの流れで構成します。提供者側の都合だけでなく、顧客価値から目標を説明する方法を示します。設問アからウまで同じ事例と因果関係を保ち、一般論に流れず、実施内容と評価を具体的に書き切るための構成を示します。

この記事で押さえる論点

  • 討議対象となったサービスレベル項目と、討議を要した背景を顧客の事業環境から説明する
  • 顧客とサプライヤの両方と調整して合意に至る取組を、根拠を伴う交渉の過程として書く
  • サービス開始後にSLAを再定義するためのサービスレベル管理の仕組みを具体化する
  • 取組の自己評価から今後の課題へ論理的につながる設問ウを構成する

問題本文

サービスレベル管理におけるサービスレベルの合意について

サービスレベルの維持を目的として行うサービスレベル管理において,顧客ニーズを満たすために必要なサービスレベルを定義,文書化及び合意することは,ITサービスマネージャの重要な業務である。SLAは,サービスの条件及びサービスレベル目標を記述する文書であり,顧客の視点でサービスレベル目標を定義することが望まれることから,サービス提供組織(以下,組織という)と顧客とのサービスレベルの合意に向けた取組が重要となる。

顧客のサービス要求事項は,事業環境の変化,社会環境の変化及び情報技術の進展などによって多様化・複雑化・高度化している。例えば,QRコード決済サービスへの高い耐障害性,個人情報を扱うサービスへの高いセキュリティ性などがある。

また,組織においては,AI,自動化技術などの新技術活用による品質向上・効率向上が期待される一方,設備面・体制面・費用面などの制約が考えられる。組織と顧客とのサービスレベルの合意に向けた取組に当たっては,サービス提供に関わる内部供給者及び外部供給者(以下,サプライヤという)のサービスレベル目標又は契約との整合性が必要となり,サプライヤとの協議・調整も欠かせない。

サービス開始後,サービスレベル目標を満たせない事態の発生又は兆候を認識した場合には,必要に応じてサービスの条件及びサービスレベル目標を再定義する。また,SLAの見直しに関わるサービスレベル管理の仕組みを確立することも重要である。

あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜ウに従って論述せよ。

設問と解答・解説

設問ア

あなたが携わったITサービスの概要と,サービスレベルの合意に向けて,顧客との交渉で討議の対象となったサービスレベル項目,及び討議を要することとなった背景について,800字以内で述べよ。

模範解答

模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。

採点基準(配点 34点)

知識・理解度(内容)(17点)

  • 17: 対象ITサービスの概要、討議対象となったサービスレベル項目、およびその背景が、顧客の事業環境やニーズを踏まえて非常に具体的に記述されており、ITサービスマネージャとしての高い課題認識能力が示されている。
  • 11: ITサービスの概要やサービスレベル項目、討議の背景について概ね適切に記述されているが、顧客ニーズの把握という観点で具体性にやや欠ける部分がある。
  • 5: 討議の背景などの要素が不足している、またはサービス提供者側の一方的な視点でサービスレベルが定義されており、顧客視点での理解が不十分である。
  • 0: 設問の要求事項に対する記述がない、または全く無関係の内容である。

論理性(構造)(17点)

  • 17: サービスの概要からサービスレベル項目、そして討議に至った背景への展開が極めて論理的であり、因果関係が説得力を持って記述されている。
  • 11: 全体の論理展開は概ね明確であるが、各要素間の繋がりや因果関係に一部不明瞭な部分が見られる。
  • 5: 要素の羅列に留まっており、論理の飛躍が見られ、なぜその項目が討議の対象になったのかの因果関係が読み取れない。
  • 0: 論理が破綻しており、文章として意味を成していない。

解説

本問は、ITサービスマネージャとしての業務経験に基づき、サービスレベルの合意に向けた初期段階の状況を論述する設問です。

出題の意図と背景

サービスレベル管理において、顧客ニーズを満たすために必要なサービスレベルを定義・文書化し合意することは極めて重要です。特に、顧客の事業環境の変化によって多様化・複雑化・高度化している要求事項を正確に把握する能力が問われています。

採点講評からの示唆

単にサービス提供者側の都合で一方的にサービスレベルを定義するのではなく、顧客の視点に立ち、顧客の要求するサービスレベル目標を正しく理解しようとする姿勢が求められます。一方的な条件提示の記述は、サービスレベル管理の知見不足と見なされるため注意が必要です。

高得点のポイント

  • ITサービスの概要が、対象となるビジネス要件とともに明確に示されていること。
  • 顧客との交渉で討議の対象となったサービスレベル項目が具体的に特定されていること。
  • その項目がなぜ討議を要することになったのかという背景(顧客の事業環境の変化や課題など)が、利害関係者のニーズの観点から論理的に説明されていること。

設問イ

設問アで述べたサービスレベル項目について,サービスレベルの合意に向けた取組,及びSLAの見直しに関わるサービスレベル管理の仕組みについて,800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。

模範解答

模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。

採点基準(配点 33点)

知識・理解度(内容)(17点)

  • 17: 顧客及びサプライヤとの積極的な調整を含め、合意に向けた取組とSLA見直しの仕組みが極めて具体的に記述されており、高度な問題解決能力が示されている。
  • 11: 合意に向けた取組と見直しの仕組みが記述されているが、利害関係者との調整プロセスや管理の仕組みの具体性がやや不足している。
  • 5: サービス提供者の一方的な取組に終始しているなど顧客ニーズを満たす調整が不十分であり、サービスレベル管理の仕組みの理解が浅い。
  • 0: 設問の要求事項に対する記述がない、または全く無関係の内容である。

説得力(考察)(16点)

  • 16: 取組や仕組みが、顧客の事業環境の変化や高度化する要求事項を踏まえた上で、極めて説得力のある実践的な内容として展開されている。
  • 10: 取組や仕組みの妥当性について考察されているが、実践的な裏付けや説得力が一部不足している。
  • 5: 一般的なSLAの枠組みをなぞっただけの表層的な記述に留まり、現場に即した説得力に乏しい。
  • 0: 考察が全くなく、説得力がない。

解説

本問は、設問アで提起した課題(討議項目と背景)に対し、具体的な解決策としての取組継続的な管理の仕組みを論述する設問です。

出題の意図と背景

SLA(Service Level Agreement)では、顧客視点でサービスレベル目標を定義することが求められます。ここでは、顧客のみならずサプライヤ等を含めた利害関係者間の調整を行い、合意に至るプロセスと、その後のSLA見直しの仕組みをどのように構築したかが評価の対象となります。

採点講評からの示唆

顧客及びサプライヤとの積極的な調整を通じて合意形成を図るプロセスが高い評価を得ます。サービス提供側の論理を押し付けるのではなく、高度化する要求に対してどのように落とし所を見つけ、維持管理していくかという問題解決能力が問われます。

高得点のポイント

  • 設問アで挙げた項目に対する合意に向けた取組が、顧客やサプライヤとの調整プロセスを含めて具体的に記述されていること。
  • 合意したサービスレベルを維持・改善するためのSLAの見直しに関わる管理の仕組みが明確に定義されていること。
  • ITサービスマネージャとしての利害関係者間の調整能力や問題解決能力が、記述から具体的に読み取れること。

設問ウ

設問イで述べたサービスレベルの合意に向けた取組を,どのように評価しているか。また,サービスレベル管理における今後の課題は何か。600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。

模範解答

模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。

採点基準(配点 33点)

説得力(考察)(17点)

  • 17: 実施した取組に対する客観的かつ妥当な評価と、ビジネス環境の多様化等を見据えた今後の課題が、深い洞察と高度な課題認識能力をもって記述されている。
  • 11: 取組の評価と今後の課題が記述されているが、中長期的な視点や洞察の深さがやや不足している。
  • 5: 評価や課題の内容が表層的または一般的であり、自身の経験に基づいたITサービスマネージャとしての深い課題認識が見られない。
  • 0: 評価や課題についての記述がない、または的外れである。

論理性(構造)(16点)

  • 16: 前段の自己評価から導き出された今後の課題への展開に明確な論理的整合性があり、説得力に富んだ首尾一貫した文章構成となっている。
  • 10: 評価と課題は記述されているが、両者の関連性や論理展開において一部繋がりが不明瞭な箇所がある。
  • 5: 評価と課題が場当たり的に羅列されているだけで、論理的なつながりに乏しい。
  • 0: 全く論理的ではなく、文章の体をなしていない。

解説

本問は、設問イで記述した一連の取組を自己評価し、ビジネス環境の変化を見据えた今後の課題を論述する設問です。

出題の意図と背景

ITサービスマネージャには、自身の取組を客観的に評価し、新たな課題を発見する能力が不可欠です。サービスレベル管理は一度合意して終わりではなく、継続的な改善のサイクルを回す必要があります。

採点講評からの示唆

顧客の事業環境の変化等により多様化・複雑化・高度化する要求事項を念頭に置き、サービスレベルの実現及び維持に向けた中長期的な視点での課題認識ができているかが評価を分けます。

高得点のポイント

  • 設問イで実行した取組の成果や不足していた点について、客観的かつ妥当な自己評価が記述されていること。
  • 顧客環境の変化や今後の事業展開を見据えたサービスレベル管理における今後の課題が設定されていること。
  • 評価と課題の間に論理的なつながりがあり、課題解決に向けたITサービスマネージャとしての前向きな姿勢が示されていること。