令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午後I問題 問3 生命保険の窓口販売におけるタブレットを活用したペーパーレス申込手続の設計
テクノロジシステム開発技術
学習ガイド
金融機関の窓口で募集人が行う保険販売業務を、タブレット端末で電子化する再構築案件を題材とした問題です。提案書と申込書の整合性確保、告知書署名に伴うステータス制御、改ざん防止や不備チェック、効果測定指標の集計方法が問われます。解くにあたっては、現行の紙業務の流れを正確に把握した上で、新システムの要望事項が表1の機能一覧へどのように具体化されているかを対応づけて読み解くことが大切です。
この記事で押さえる論点
- 提案書再作成時に新規番号を付与して整合性を保つ業務上の理由を説明できる
- 告知書署名による書面切替制限と申込ステータス遷移の対応関係を述べられる
- 自署の真正性を保つ改ざん検知機能や入力不備防止機能の設計意図を説明できる
- 画面項目の活性制御による案内手順の統制や業務所要時間の算出方法を述べられる
出題情報
- 出題
- 2022(R4)春 システムアーキテクト 午後I 問3
- 配点
- 50点満点
- 模範解答
- 公表(設問ごとに掲載)
出題趣旨・採点講評(IPA 公表)
情報システムを再構築する際,システムアーキテクトは,業務の効率化や利便性を考慮し,新システムの要望をシステム要件として設計する必要がある。本問では,保険申込システムの再構築を題材として,現行業務の正しい理解・把握の下,新システムへの要望から情報システムに求められている機能を正しく理解し,求められている情報システムを設計する能力を問う。
問3では,保険申込システムの再構築を題材に,新システムへの要望から情報システムに求められている機能の設計について出題した。全体として正答率は平均的であった。
問題本文
問3 保険申込システムの再構築に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。
K社は,代理店や金融機関などを通じて保険商品を販売する大手生命保険会社である。K社は,金融機関で顧客に保険商品を販売する際の業務効率化,利便性向上を目的として,保険申込システムを見直し,新たな保険申込システム(以下,新システムという)を構築することにした。
〔現在の業務とK社の保険申込システムの概要〕
金融機関の窓口で保険商品を販売する職員(以下,募集人という)はK社の保険申込システム(以下,現行システムという)を利用し,業務を実施している。現在の業務と現行システムの概要は,次のとおりである。
(1) ニーズ喚起業務
募集人は,保険募集のコンプライアンス指針にのっとり,取扱いのある保険商品から顧客に最適なプランを考え,顧客に合った保険商品を提案する。
(2) 保険提案書作成業務
募集人は,現行システムを利用して保障内容や保険料などが記載されている保険提案書(以下,提案書という)を作成する。
現行システムに保険商品,生年月日,性別,保険期間と保険料の払込期間といった保険条件を入力し,これらの保険条件に合った保険料を試算し提案書を作成する。提案書を作成する際,一意となる提案書の番号(以下,提案書番号という)を現行システムが付与する。
作成した提案書を印刷して顧客に保障内容や留意事項を説明する。K社では,顧客に提案書を説明する際,必ず印刷して説明することにしている。
(3) 保険提案書再作成業務
募集人は,同じ顧客で同じ保険商品の提案書を過去に作成したことがある場合,作成済みの提案書の保険条件を利用して,新しい提案書を作成する。
現行システムを利用して新しい提案書の基となる提案書を検索し,その提案書を選択して再作成することで,元の提案書の保険条件を引き継いだ新規の提案書が作成される。
その提案書の保険条件を変更し,新しい提案書を印刷して顧客に説明する。K社では,提案書を再作成する際に①同じ提案書番号で保険条件が異なる印刷物がないようにしている。
(4) 保険申込書作成業務
募集人は,顧客から申込みがあった場合,現行システムを利用して保険申込書(以下,申込書という)を作成する。申込書には提案書番号が記載されており,申込書の基になった提案書の内容と不整合にならないようにしている。募集人は,印刷済みの提案書の提案書番号を現行システムに入力し,提案書の内容から申込書を作成する。作成した申込書を印刷し,必要書類として,保険商品ごとの重要事項説明書,引受判断に必要な健康状態を記載する告知書,保険条件が顧客の意向と一致していることを確認してもらうための意向確認書を準備する。
(5) 申込手続業務
募集人は,保険申込書作成業務で印刷した申込書,重要事項説明書,告知書,及び意向確認書を顧客に提示し,必要な項目の記入と署名を依頼して記入内容を確認する。申込書には,保険契約を結ぶ顧客(以下,契約者という)と,保険の対象になる顧客(以下,被保険者という)が署名する。契約者と被保険者が別人の契約では,被保険者が同意した上で,契約者と被保険者それぞれが署名する必要がある。必要な項目の記入完了後,顧客控え書類を顧客に手渡しする。また,保険料の口座振替依頼書の記入を依頼して記入内容を確認する。
申込書を作成開始してから申込手続業務を完了するまでの時間を手続所要時間と呼ぶ。
(6) 申込手続事後業務
募集人は,申込手続業務完了後,契約時の確認内容や特記事項を取扱報告書に記入する。募集人は,責任者に申込書,告知書,意向確認書,及び取扱報告書を確認してもらう。責任者は,書類一式の内容をチェックし,問題がない場合はK社に郵送する。
(7) 契約手続業務
K社は,郵送された書類の内容を契約管理システムに入力する。入力した内容を査定し,問題がない場合は,保険証券を契約者に郵送する。現在の業務では,申込書を作成開始してからK社へ書類一式が到着し,契約管理システムに入力するまでの時間を申込書到着所要時間と呼ぶ。
〔新システムへの要望〕
新システムに対して,次のような要望が出された。
- タブレット端末で提案書を作成したり,保障内容などを顧客に説明したりできるようにしたい。
- 申込書や告知書の作成で,顧客が入力する必要がある内容をタブレット端末で入力して手続(以下,ペーパーレス手続という)できるようにしてほしい。ただし,顧客の希望によって書面での手続(以下,書面手続という)もできるようにしてほしい。また,ペーパーレス手続の場合,手続の途中でも書面手続に切り替えられるようにしたいが,告知書に署名した後は,切り替えられないようにしてほしい。
- ペーパーレス手続の場合,画面上で自署した筆跡を電子書類として保存したい。電子書類のうち顧客控え書類は,申込手続完了後に募集人が印刷して,顧客に手渡しする。そのため,顧客控え書類は,顧客が自署した画面と同様のレイアウトにしてほしい。また,保存する電子書類の真正性を確保するために,顧客控え書類に改ざん検知の仕組みを導入してほしい。
- 申込手続事後業務の責任者の承認をシステムで支援してほしい。
- 責任者が書類の記載内容をチェックして不備があった場合,対応に時間が掛かっているので,②その不備対応の時間を短縮したい。
- 取扱報告書をシステムで入力できるようにしてほしい。書類では,募集人と責任者の押印をしている。システムでは,募集人名と責任者名を画面に表示してほしい。
- 契約手続業務を効率化するために,ペーパーレス手続の場合,顧客の申込手続と募集人の取扱報告入力,責任者承認の全ての手続が完了した後,申込書の内容をデータとイメージファイルの両方で契約管理システムに連携してほしい。
- ペーパーレス手続の場合,手続の状態(以下,申込ステータスという)が画面で分かるようにしてほしい。
- 保険料の払込方法として,口座振替かクレジットカード決済を選択できるようにしたい。また,申込時に払込方法の登録手続を電子的に完了できるようにしたい。
- ③手続を円滑に進めるために募集人が手続の順番を把握できるようにしてほしい。
- 保険申込の実績を集計したい。提案書作成件数,申込書作成件数,ペーパーレス手続選択件数を知りたい。また,新システムでペーパーレス化したことに伴う効率化の効果も知りたいので,当月にペーパーレス手続で申込手続業務が完了した申込の手続所要時間の平均と,当月に契約管理システムに連携が完了した申込の申込書到着所要時間の平均を算出してほしい。
〔新システムで実装する機能〕
新システムは,新システムへの要望を全て満たした上で,タブレット端末からも利用可能にする。新システムの機能概要を表1に示す。

図の説明テキスト
表1 新システムの機能概要
| 機能名 | 機能概要 |
|---|---|
| 提案書作成 | ・保険商品を選択し、顧客の氏名、生年月日、性別、保険期間と保険料の払込期間を入力することで、提案書番号を採番し、提案書データを登録する。入力する際に入力内容をチェックし、誤りがある場合は、画面にその内容を表示する。また、提案書データの作成日時を登録した際の日時にする。 ・提案書データから提案書の電子書類を作成し、表示する。 |
| 提案書検索 | ・過去に作成した提案書データを検索する。 ・検索した結果の提案書データから提案書作成機能に連携し、提案書データの再作成を可能とする。 |
| 申込書作成 | ・提案書データから申込書データを登録する。また、登録した際、申込書データの申込日時を登録した際の日時にする。 ・“ペーパーレス手続”か“書面手続”を選択し、申込書データの手続種別として更新する。 ・書面手続が選択された場合、申込書や口座振替依頼書などの必要書類を印刷する。 ・ペーパーレス手続が選択された場合、申込ステータスを“ペーパーレス手続選択済”とする。 |
| 申込書検索 | ・申込書データを検索する。 ・提案書番号、申込書番号、契約者氏名、申込ステータス及び提案書作成日を用いて検索を可能とする。 |
| ペーパーレス手続メニュー | ・ペーパーレス手続が選択された申込書データに対して、実施する作業のメニューを画面に表示する。次に実施すべき作業メニューだけ活性化する。 |
| 申込確認 | ・ペーパーレス手続が選択された後、ペーパーレス手続メニューからペーパーレス手続の説明、意向確認の説明及び重要事項の説明が記載された画面を表示する。 ・顧客が確認した旨を入力できるようにする。入力する際に入力内容をチェックし、確認漏れがある場合は画面に表示する。 ・申込確認の完了後、申込書データの申込確認日時を完了した際の日時にし、申込ステータスを“申込確認済”とする。 |

図の説明テキスト
表1 新システムの機能概要(続き)
| 機能名 | 機能概要 |
|---|---|
| 申込書入力 | ・申込確認の完了後,ペーパーレス手続メニューから申込書に必要な内容を入力できる画面を表示する。入力する際に入力内容をチェックし,誤りがある場合は,画面にその内容を表示する。 ・申込書の内容について画面上で確認し署名できるようにする。また,契約者と被保険者が別人の場合,それぞれが署名できる画面を表示する。 ・署名完了後,顧客控え用の申込書を作成し,保存する。 ・申込書入力の完了後,申込書データの申込書入力日時を完了した際の日時にし,申込ステータスを“申込書入力済”とする。 |
| 告知手続 | ・申込書入力の完了後,ペーパーレス手続メニューから告知書に必要な内容を入力できる画面を表示する。入力する際に入力内容をチェックし,誤りがある場合は,画面にその内容を表示する。 ・告知内容について画面上で確認し署名できるようにする。 ・署名完了後,顧客控え用の告知書を作成し,保存する。 ・告知手続の完了後,申込書データの告知手続日時を完了した際の日時にし,申込ステータスを“告知手続済”とする。 |
| 払込方法選択 | ・告知手続の完了後,ペーパーレス手続メニューから保険料の払込方法として,口座振替かクレジットカード決済を選択できる画面を表示する。 ・選択された払込方法で,払込手続を電子的に完了できるようにする。 ・払込方法選択の完了後,申込書データの払込方法選択日時を完了した際の日時にし,申込ステータスを“払込方法選択済”とする。 |
| 書類印刷 | ・保存している電子書類を印刷する。 |
| 取扱報告書作成 | ・払込方法選択の完了後,取扱報告書データを登録する画面を表示する。表示項目には,募集人名と責任者名を含める。入力する際に入力内容をチェックし,誤りがある場合は,画面にその内容を表示する。 ・取扱報告書データの登録後,申込書データの報告書作成日時を登録した際の日時にし,申込ステータスを“承認待ち”とする。 |
| 申込書承認 | ・申込ステータスが“承認待ち”の申込書データを抽出し,画面に表示する。責任者が,申込の内容と取扱報告書の内容を確認し,承認をする。 ・承認後,申込書データの承認日時を承認した際の日時にし,申込ステータスを“承認済”とする。 |
| 申込書データ連携 | ・日次で夜間に,対象の申込書データを抽出し,契約管理システムに連携する。 ・連携後,申込書データの連携日時を連携した際の日時にする。 |
| 実績集計 | ・月末の夜間に,提案書作成件数,申込書作成件数,ペーパーレス手続選択件数を収集し,実績集計データとして登録する。 ・実績集計データを帳票出力する。また,効率化の効果を計るために,ペーパーレス手続の申込書データから④当月に申込手続業務が完了した申込の手続所要時間と,⑤当月に契約管理システムに連携が完了した申込の申込書到着所要時間を収集し,それぞれの平均を計算して報告する。 |
設問と解答・解説
設問1
〔現在の業務とK社の保険申込システムの概要〕について,本文中の下線①のようにしている理由を業務上の観点から40字以内で述べよ。
模範解答
申込書と基になった提案書の内容が不整合にならないようにしているから
採点基準
- 2点: 申込書と基になった提案書の内容の間に不整合が生じることを防ぐためであることが正しく記述されている。
- 1点: 不整合の防止について言及しているが、何と何の不整合であるか(申込書と提案書)が不明確である。
- 0点: 業務上の理由が正しく記述されていない。
- 2点: 理由を説明する論理構成が明確であり、文脈として適切にまとまっている。
- 1点: 論理構成にやや飛躍や不足がある。
- 0点: 論理的に意味が通らない。
解説
業務上の理由
本文〔現在の業務とK社の保険申込システムの概要〕の (4) 保険申込書作成業務 には、以下の記載があります。
- 「申込書には提案書番号が記載されており,申込書の基になった提案書の内容と不整合にならないようにしている。」
募集人が同じ顧客に過去の提案書を利用して新たな提案書を再作成する場合、保険条件を変更して再作成します。もしこのとき、同じ提案書番号 で 異なる保険条件 の提案書が印刷されてしまうと、その提案書番号を用いて申込書を作成した際に、どちらの保険条件に基づくものかシステム上や手続上で区別できなくなります。
その結果、申込書の内容と、実際に顧客に提示した(基になった)提案書の内容との間に 不整合 が生じるリスクが発生します。これを防ぐために、同じ提案書番号で保険条件が異なる印刷物が存在しないように制限しています。
高得点のポイント
- 申込書と提案書の内容の不整合 を防ぐという目的が明記されていること。
- 指定された40字以内で、簡潔かつ論理的に理由がまとめられていること。
設問2
新システムの設計について,(1)〜(4)に答えよ。
ペーパレス手続から書面手続に切替え可能な状況にある申込書データの申込ステータスを表1中の字句を用いて全て答えよ。
模範解答
“ペーパレス手続選択済”,“申込確認済”,“申込書入力済”
採点基準
- 6点: 「ペーパレス手続選択済」「申込確認済」「申込書入力済」の3つが過不足なく記載されている。
- 3点: 3つのうち、1つまたは2つが正しく記載されている。
- 0点: 正しく記載されていない。
解説
書面手続への切替え条件
本文〔新システムへの要望〕の2番目の項目に、ペーパーレス手続から書面手続への切り替えに関する以下の条件が記載されています。
- 「ペーパーレス手続の場合,手続の途中でも書面手続に切り替えられるようにしたいが,告知書に署名した後 は,切り替えられないようにしてほしい。」
この条件から、書面手続への切り替えが可能なのは、告知書に署名する前 の状態であることがわかります。
該当する申込ステータスの特定
表1「新システムの機能概要」を確認し、ペーパーレス手続が選択されてから告知書に署名するまでの機能と、それに対応する 申込ステータス を特定します。
- 申込書作成: ペーパーレス手続が選択されると、申込ステータスは “ペーパレス手続選択済” となります。
- 申込確認: 申込確認が完了すると、申込ステータスは “申込確認済” となります。
- 申込書入力: 申込書の内容を確認し署名が完了すると、申込ステータスは “申込書入力済” となります。
- 告知手続: 告知内容を確認し署名が完了すると、申込ステータスは “告知手続済” となります。
告知書への署名が行われるのは「告知手続」機能の中です。したがって、切り替えが不可能なのは“告知手続済”以降であり、切り替え可能な状況にあるのは、それよりも前の段階である “ペーパレス手続選択済”、“申込確認済”、“申込書入力済” の3つのステータスです。
高得点のポイント
- 表1に記載されている正確な字句を使用していること。
- 該当する3つのステータスを過不足なく全て挙げていること。
改ざん検知を考慮した設計が必要な新システムの機能を,表1中の機能名を用いて全て答えよ。
模範解答
申込書入力,告知手続
採点基準
- 6点: 「申込書入力」「告知手続」の2つが過不足なく記載されている。
- 3点: 2つのうち、1つが正しく記載されている。
- 0点: 正しく記載されていない。
解説
改ざん検知が必要な対象
本文〔新システムへの要望〕の3つ目の項目に、以下の記載があります。
- 「電子書類のうち顧客控え書類は,申込手続完了後に募集人が印刷して,顧客に手渡しする。」
- 「保存する電子書類の真正性を確保するために,顧客控え書類 に 改ざん検知の仕組み を導入してほしい。」
この要望から、改ざん検知の仕組みが必要となるのは、システム上で 顧客控え用の書類 を作成し、保存する機能であると分かります。
該当する機能の特定
表1「新システムの機能概要」から、顧客控え用の書類を作成して保存している機能を探します。
- 申込書入力: 「署名完了後,顧客控え用の申込書を作成し,保存する。」と記載されています。
- 告知手続: 「署名完了後,顧客控え用の告知書を作成し,保存する。」と記載されています。
その他の機能では、電子書類の作成や表示(例:提案書作成)はあっても、顧客控え書類の作成・保存は行われていません。したがって、改ざん検知を考慮した設計が必要な機能は 申込書入力 と 告知手続 の2つです。
高得点のポイント
- 要望と機能概要を正しく結びつけ、対象となる書類を特定できていること。
- 表1に記載されている機能名(「申込書入力」「告知手続」)を過不足なく解答していること。
本文中の下線②の不備対応時間の短縮を考慮して設計した新システムの機能を表1中の機能名を用いて全て答えよ。
模範解答
申込確認,申込書入力,告知手続,取扱報告書作成
採点基準
- 6点: 「申込確認」「申込書入力」「告知手続」「取扱報告書作成」の4つが過不足なく記載されている。
- 3点: 4つのうち、一部が正しく記載されているが、過不足がある。
- 0点: 正しく記載されていない。
解説
不備対応に関する要望と現状の業務
本文中の下線②「その不備対応の時間を短縮したい」は、〔新システムへの要望〕の5つ目の項目にあります。
- 「責任者 が書類の記載内容をチェックして不備があった場合,対応に時間が掛かっているので,②その不備対応の時間を短縮したい。」
現行業務の「(6) 申込手続事後業務」を確認すると、責任者がチェックする対象の書類は以下の4点です。
- 申込書
- 告知書
- 意向確認書
- 取扱報告書
該当する機能の特定
新システムにおいて、不備対応の時間を短縮するためには、これらの書類に相当するデータを入力する段階でシステムによるチェックを行い、不備を未然に防ぐ必要があります。表1「新システムの機能概要」から、これらの書類に関わる入力機能を探します。
- 申込確認: 意向確認などの説明に対する確認を入力する際、「入力内容をチェックし,確認漏れがある場合は画面に表示する。」
- 申込書入力: 申込書に必要な内容を入力する際、「入力内容をチェックし,誤りがある場合は,画面にその内容を表示する。」
- 告知手続: 告知書に必要な内容を入力する際、「入力内容をチェックし,誤りがある場合は,画面にその内容を表示する。」
- 取扱報告書作成: 取扱報告書データを登録する際、「入力内容をチェックし,誤りがある場合は,画面にその内容を表示する。」
なお、「提案書作成」でも入力チェックが行われますが、提案書は責任者のチェック対象書類に含まれていないため除外されます。したがって、該当する機能は 申込確認、申込書入力、告知手続、取扱報告書作成 の4つです。
高得点のポイント
- 責任者が確認する書類を現行業務から正しく特定できていること。
- それらに対応する新システムの機能名を、表1から過不足なく抜き出せていること。
考慮した内容を20字以内で述べよ。
模範解答
入力内容をチェックすること
採点基準
- 6点: 入力時に入力内容をチェックし、不備を未然に防ぐ機能が考慮されたことが正しく記述されている。
- 3点: 入力のチェックについて言及しているが、記述が不十分である。
- 0点: 不備対応時間短縮のための考慮事項が正しく記述されていない。
解説
不備対応の短縮を実現する仕組み
前半で特定した4つの機能(申込確認、申込書入力、告知手続、取扱報告書作成)の機能概要には、共通して以下のような処理が記述されています。
- 「入力する際に 入力内容をチェックし,誤り(または確認漏れ)がある場合は,画面にその内容を表示する。」
従来の業務では、手続後に責任者が書類をチェックして初めて不備が発覚し、その対応に時間がかかっていました。新システムでは、データをシステムに入力する時点(入力時)でシステムが自動的に 入力内容をチェックする ように設計することで、不備のある状態での登録を防ぎ、事後の不備対応にかかる時間を大幅に短縮しています。
高得点のポイント
- 表1の機能概要に共通する「入力内容のチェック」という具体的な考慮内容を捉えられていること。
- 指定された20字以内で簡潔にまとめられていること。
本文中の下線③の要望を考慮して設計した新システムの機能を表1中の機能名を用いて答えよ。
模範解答
ペーパレス手続メニュー
採点基準
- 6点: 「ペーパレス手続メニュー」と正しく記載されている。
- 0点: 正しく記載されていない。
解説
手続の順番を把握するための要望
本文中の下線③は、〔新システムへの要望〕の10番目の項目に記載されています。
- 「③手続を円滑に進めるために募集人が 手続の順番を把握できる ようにしてほしい。」
ペーパーレス手続では、画面上で複数のステップを順番に進めていく必要があります。そのため、システム側で現在の進行状況に合わせて、次に実施すべき手続を募集人に明示する機能が求められています。
該当する機能の特定
表1「新システムの機能概要」の中で、手続の順番やナビゲーションに関する記述を探します。
- ペーパレス手続メニュー: 機能概要に「実施する作業のメニューを画面に表示する。次に実施すべき作業メニューだけ活性化する。」と記載されています。
この機能により、募集人は次にどのメニューを選択すればよいかが視覚的に分かり、手続の順番に迷うことなく円滑に業務を進めることができます。したがって、この要望に対応して設計された機能は ペーパレス手続メニュー です。
高得点のポイント
- 要望の内容(順番の把握)と合致する機能を、表1の機能概要から正しく見つけ出せていること。
考慮した内容を25字以内で述べよ。
模範解答
次に実施すべき作業メニューだけ活性化すること
採点基準
- 6点: 「次に実施すべき作業メニューだけ活性化する」旨が正しく記述されている。
- 3点: 作業メニューの制御について言及しているが、意味が不正確である。
- 0点: 手続の順番を把握するための仕組みが正しく記述されていない。
解説
考慮した具体的な設計内容
前半で特定した「ペーパレス手続メニュー」の機能概要において、募集人に手続の順番を把握させるためにどのような工夫が組み込まれているかを確認します。
表1には以下のように記述されています。
- 「次に実施すべき作業メニューだけ活性化する。」
不要なメニューやまだ実施できないメニューを非活性(選択不可)にし、直ちに行うべき操作のみを活性化(選択可能)することで、システムが自然に次の手続へと誘導します。これが、手続の順番を把握させるために考慮された具体的な設計内容です。
高得点のポイント
- 表1の機能概要に記載されている「次に実施すべき作業メニューだけ活性化する」という仕組みを抜き出し、または要約して解答に含めていること。
- 指定された25字以内で適切に記述されていること。
設問2(3)は,正答率が低かった。責任者が書類の記載内容をチェックして,不備があった場合の不備対応時間の短縮を考慮して設計した新システムの機能を問う問題であったが,責任者がチェックしている書類を十分に理解していないと思われる解答が散見された。情報システムへの要望の背景・目的を正しく理解して機能を設計することが重要であることを理解してほしい。
設問3
実績集計機能について,(1),(2)に答えよ。
表1中の下線④は,どのような値を算出すればよいか。表1中の機能概要中の字句を用いて40字以内で述べよ。
模範解答
払込方法選択日時が当月である申込書データの,払込方法選択日時と申込日時の差
採点基準
- 3点: 「払込方法選択日時と申込日時の差」であることが正しく記述されている。
- 1点: 算出に用いる日時(払込方法選択日時、申込日時)の一方が欠けている、または誤っている。
- 0点: 算出する値が正しく記述されていない。
- 2点: 対象が「払込方法選択日時が当月である」データであることが論理的に組み込まれている。
- 0点: 当月対象であることの条件が不足している、または記述の論理構造に問題がある。
解説
「手続所要時間」の定義
現行業務の「(5) 申込手続業務」の最後に、手続所要時間の定義が以下のように記載されています。
- 「申込書を作成開始 してから 申込手続業務を完了 するまでの時間を手続所要時間と呼ぶ。」
算出に用いる日時の特定
新システムにおいて、「申込書の作成開始」と「申込手続業務の完了」がどの日時に該当するかを表1から特定します。
開始日時(申込書を作成開始):
表1の「申込書作成」機能に「登録した際,申込書データの 申込日時 を登録した際の日時にする。」とあります。完了日時(申込手続業務を完了):
現行業務の(5)を読むと、申込手続業務の最後の作業は「保険料の口座振替依頼書の記入を依頼して記入内容を確認する」ことです。ペーパーレス手続では、これが表1の「払込方法選択」機能に該当します。この機能では「完了後,申込書データの 払込方法選択日時 を完了した際の日時にし」とあります。
したがって、手続所要時間は 「払込方法選択日時」 と 「申込日時」 の差を計算することで求められます。
対象データの絞り込み条件
下線④には「当月に 申込手続業務が完了した申込」と指定されています。業務の完了日時は「払込方法選択日時」であるため、集計対象となるデータは 「払込方法選択日時が当月である申込書データ」 となります。
以上をまとめると、「払込方法選択日時が当月である申込書データの、払込方法選択日時と申込日時の差」を算出することになります。
高得点のポイント
- 手続の開始日時(申込日時)と完了日時(払込方法選択日時)を正しく特定し、その「差」を求めると記述していること。
- 集計対象が「払込方法選択日時が当月である」データに限定されていることを論理的に示していること。
表1中の下線⑤は,どのような値を算出すればよいか。表1中の機能概要中の字句を用いて35字以内で述べよ。
模範解答
連携日時が当月である申込書データの,連携日時と申込日時の差
採点基準
- 3点: 「連携日時と申込日時の差」であることが正しく記述されている。
- 1点: 算出に用いる日時(連携日時、申込日時)の一方が欠けている、または誤っている。
- 0点: 算出する値が正しく記述されていない。
- 2点: 対象が「連携日時が当月である」データであることが論理的に組み込まれている。
- 0点: 当月対象であることの条件が不足している、または記述の論理構造に問題がある。
解説
「申込書到着所要時間」の定義
現行業務の「(7) 契約手続業務」に、申込書到着所要時間の定義が以下のように記載されています。
- 「申込書を作成開始 してからK社へ書類一式が到着し,契約管理システムに入力する までの時間を申込書到着所要時間と呼ぶ。」
新システムでの対応業務と日時の特定
ペーパーレス手続においては、物理的な書類の郵送と手入力が不要になります。本文の〔新システムへの要望〕の7番目の項目には「ペーパーレス手続の場合,(中略)申込書の内容をデータとイメージファイルの両方で 契約管理システムに連携してほしい。」とあり、これがシステム入力の代わりとなります。
これを踏まえ、表1から該当する日時を特定します。
開始日時(申込書を作成開始):
設問3(1)と同様、表1の「申込書作成」機能で登録される 「申込日時」 です。完了日時(契約管理システムに連携):
表1の「申込書データ連携」機能に「連携後,申込書データの 連携日時 を連携した際の日時にする。」とあります。
したがって、申込書到着所要時間は 「連携日時」 と 「申込日時」 の差として算出できます。
対象データの絞り込み条件
下線⑤には「当月に 契約管理システムに連携が完了した申込」と指定されています。連携が完了した日時は「連携日時」であるため、集計対象となるデータは 「連携日時が当月である申込書データ」 となります。
以上をまとめると、「連携日時が当月である申込書データの、連携日時と申込日時の差」を算出することになります。
高得点のポイント
- ペーパーレス手続における書面到着・入力の代替が「システムへの連携」であることを理解し、完了日時(連携日時)と開始日時(申込日時)の「差」を求めると記述していること。
- 集計対象が「連携日時が当月である」データに限定されていることを論理的に示していること。
設問3は,(1),(2)ともに正答率が低かった。当月に申込手続業務が完了した申込の手続所要時間と,当月に契約管理システムに連携が完了した申込の申込書到着所要時間の算出方法を問う問題であったが,これらの業務に関連しない値を用いた解答が散見された。現行業務を正しく理解した上で,情報システムの機能を設計することが重要であることを理解してほしい。