令和7年度 春期 ネットワークスペシャリスト試験 午後I 問2 学校ネットワークのNAPT枯渇トラブル

テクノロジネットワーク

この問題は2025(R7)春 ネットワークスペシャリスト 午後Iに出題されたものです。出題時点の法令・制度に基づく内容のため、現行の内容と一致しない場合があります。

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学習ガイド

学校のネットワークで発生した接続不具合を題材に、NAPTの仕組みとトラブルシューティングの進め方を問う問題です。NAT変換テーブルとシステムログから、帯域不足ではなくNAPT変換エントリーの枯渇という仮説を導き、同時利用できるPC台数の上限を計算します。HTTPのバージョンとコネクション数の関係も絡む構成で、この記事では1台あたりのエントリー消費量を起点に、計算と対策を一続きに解説します。

この記事で押さえる論点

  • NAT変換テーブルの内容からNAPTの動作を説明する
  • 同時利用可能なPC台数の上限をエントリー数から計算する
  • HTTPバージョンの違いがコネクション数へ与える影響を理解する

問題本文

問2 ネットワークの改善に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。

私立U中学校(以下,U校という)では,600台のPCをU校のネットワークに接続してS社の教育支援サービス(以下,Eサービスという)を利用している。U校では最近校内サービスの不具合に関する申告が多くの生徒から挙がってきたので,U校は本ネットワークを設計,構築したT社に調査を依頼し,T社のVさんが担当になった。

〔U校ネットワークの概要〕

VさんはU校ネットワーク構成を確認した。U校ネットワーク構成を図1に示す。

図1 U校ネットワーク構成
図の説明テキスト

図1 U校ネットワーク構成。
全体構成として、インターネット経由でISPがルータに接続し、ルータがL3SWに接続している。L3SWを中心にサーバ室、教室棟1階、教室棟2階、教室棟3階の各L2SWがスター型に接続されている。

  • サーバ室のセグメントは 192.168.1.0/24 で、L2SWに認証サーバ、DHCPサーバ、syslogサーバ、動画サーバが接続されている。
  • 教室棟1階のセグメントは 192.168.10.0/24、教室棟2階は 192.168.20.0/24、教室棟3階は 192.168.30.0/24。各教室棟の構成は共通しており、L2SWの下に複数のAP(無線LANアクセスポイント)が繋がり、そこから無線LANでPCに接続されている。
  • 凡例には、各機器の略称(ISP: インターネットサービスプロバイダ、L2SW: レイヤー2スイッチ、L3SW: レイヤー3スイッチ、AP: 無線LANアクセスポイント)や、線の太さ等による回線種別(極太線: 10GBASE-T、太線: 2.5GBASE-T、通常線: 1000BASE-T、稲妻線: 無線LAN、破線枠: セグメント)が記載されている。

・ISPとの接続は,最大 1 Gビット/秒のベストエフォート型インターネット接続サービスを契約して利用している。
・ルータはISPと接続しており,校内からインターネットへのアクセスに対し,NAPTを使って内部の a IPアドレスをISPから割り当てられた b IPアドレスに変換している。この変換情報はルータのNAT変換テーブルにNAPT変換エントリーとして格納されている。
・U校内及びISP接続のルーティングは全てスタティックルーティングである。
・APはWi-Fi 6に対応しており,各教室に1台ずつ設置されている。L2SWは,最大30 Wを給電する c 機能をもち,イーサネットケーブル経由でAPに電力を供給している。
・PCは,認証サーバによってIEEE802.1X認証を行った上で,APを介してU校ネットワークに接続している。
・DHCPサーバは,U校ネットワークに接続したPCにIPアドレスやサブネットマスクなどを配布している。L3SWにはDHCPリレーエージェントが設定されており,PCから送信されたDHCPDISCOVERメッセージをDHCPサーバに中継している。そのときにDHCPリレーエージェントは,giaddrフィールドにDHCPDISCOVERメッセージを受信したインタフェースのIPアドレスを格納している。
・全てのネットワーク機器は,syslogサーバにシステムログを送信している。
・Eサービスは,複数のサーバで構成されるクラウド型サービスである。教員及び生徒は,EサービスにPCのWebブラウザからアクセスしログインして利用している。
・1か月前から,毎朝始業直後の8:00〜8:15にEサービスの一つである自習ドリルを用いて全校生徒が一斉に学習している。
・サーバ室の動画サーバには,教職員が管理している複数の教材動画が格納されており,全校生徒が授業や自習のときにPCで視聴している。

〔不具合のヒアリングと調査〕

Vさんは,校内サービスの不具合に関する申告についてU校の教職員にヒアリングを行い,次のように整理した。
・Eサービスに対し,毎朝の自習ドリルの時間帯にアクセスすると,タイムアウト画面が出てログイン画面が表示されないと,一部かつ不特定の生徒からの申告がある。
・Eサービスに対し,毎朝の自習ドリルの時間帯にログインできたが,操作後の応答が遅いと,複数の生徒からの申告がある。それ以外の時間帯では申告はない。
・校内の動画サーバの教材動画視聴は,時間帯や教室を問わず不具合申告はない。

これらの結果から,VさんはPCからEサービスにアクセスしたときの,(1)インターネット接続帯域の不足,及び(2)NAPT処理能力の不足,の二つの仮説を立てた。

(1)インターネット接続帯域の調査
Vさんは,U校の許可を得てルータのインターネット側ポートの通信量データを収集した。インターネット通信量(ダウンロード)を図2に示す。

図2 インターネット通信量(ダウンロード)
図の説明テキスト

「図2 インターネット通信量(ダウンロード)」と題された折れ線グラフ。
Y軸は「(Mビット/秒)」で、0, 100, 200の目盛りが振られている。
X軸は「(時刻)」で、7:00から15:00まで1時間ごとの目盛りが振られている。
グラフの推移:

  • 7:00〜8:00: ほぼ0から急激に上昇
  • 8:00〜9:00: 200Mビット/秒でほぼ平坦(頭打ち状態)
  • 9:00〜10:00: 200Mビット/秒から100Mビット/秒を下回る程度へ下降
  • 10:00〜12:00: 100Mビット/秒を下回る位置で概ね安定して推移
  • 12:00〜13:00: さらに減少し、0近くまで下降
  • 13:00〜15:00: 再度上昇し、100Mビット/秒を少し超える付近で推移
  • 15:00〜: 再び急激に減少し、0に近づく

図2から,実効速度が約200 Mビット/秒で頭打ちになっていることが判明した。また,この時ルータのCPU負荷にはまだ余裕があることも確認した。頭打ちの原因をISPに問い合わせて調査したところ,現在の契約では構成や時間帯によって実効速度はその程度になるとのことだった。Vさんは実効速度を改善するために,インターネット接続サービスのベストエフォート型から d 型への契約変更をU校に紹介することにし,ほかの原因の調査を継続した。

(2)NAPT処理能力の調査
Vさんは,U校の許可を得て各ネットワーク機器の状態ログ,及びsyslogサーバのログを収集し,内容を確認した。ルータのNAT変換テーブルの状態を表1に,ルータのシステムログを図3に示す。

表1 ルータの NAT 変換テーブルの状態(抜粋)
図の説明テキスト

表1 ルータの NAT 変換テーブルの状態(抜粋)

( i )local IP address ( ii )local port number ( iii )registered IP address ( iv )assigned port number ( v )IP protocol
192.168.10.13 56124 a.b.c.d 5001 udp
192.168.10.22 63219 a.b.c.d 5002 tcp
192.168.20.29 58320 a.b.c.d 5003 udp
192.168.30.15 50073 a.b.c.e 5001 tcp

注記: a.b.c.d, a.b.c.e : ISP から割り当てられた IP アドレス

図3 ルータのシステムログ(抜粋)
図の説明テキスト

システムログの抜粋を示す枠

ログ内容:
2025-04-26T08:00:56.52+09:00 IP NAT translation table full (max entries), dropping packet from 192.168.10.102 to f.g.h.i
2025-04-26T08:01:00.66+09:00 IP NAT translation table full (max entries), dropping packet from 192.168.30.29 to f.g.h.i
2025-04-26T08:01:05.23+09:00 IP NAT translation table full (max entries), dropping packet from 192.168.20.19 to f.g.h.i

注記: f.g.h.i : E サービスの IP アドレス
キャプション: 図3 ルータのシステムログ(抜粋)

表1から,ルータの NAPT変換エントリーの内容には異常は見当たらなかった。また,図3から,始業直後にルータの NAT変換テーブルが枯渇していることが判明した。また,ルータの NAT変換テーブルのエントリー数の上限は 65,536であり,設定によって変更することが可能であった。Vさんは,PC1台当たりのセッション数を最大 200と見積もり,全ての PCが問題なく利用できるように,NAT変換テーブルのエントリー数を計算してルータに設定することにした

〔HTTPバージョンと NAPTとの関係〕

Vさんは,二つの仮説の調査結果をまとめて上司の W課長へ報告した。W課長は,その報告の NAPT処理能力に関しては更なる注意が必要と考え,資料を提示して Vさんに説明した。HTTPバージョンと NAPTとの関係を図4に示す。

図4 HTTPバージョンとNAPTとの関係
図の説明テキスト

図4 HTTPバージョンとNAPTとの関係
PC(Webブラウザ)、ルータ、HTTPサーバ間の通信における、各HTTPバージョン(HTTP/1.1, HTTP/2, HTTP/3)とコネクション、NAPT変換エントリーの関係を示す模式図。
・HTTP/1.1: 3つのHTTPセッションに対し、それぞれ独立したTCPコネクションが3つ張られ、ルータには3つのNAPT変換エントリーが作られる。
・HTTP/2: 3つのストリームが1つのTCPコネクションに多重化され、ルータのNAPT変換エントリーは1つになる。
・HTTP/3: 3つのストリームが1つのQUICコネクション(UDP)に多重化され、ルータのNAPT変換エントリーは1つになる。

次は W課長と Vさんとの会話である。

W課長:NAPT処理能力に着目したようですが,処理能力のほかに HTTPバージョンと NAPT変換エントリー数との関係も意識しておく必要があると思います。

Vさん:HTTPのバージョンが,NAPT変換エントリー数と何か関係があるのですか。

W課長:図4で説明しましょう。HTTPは長らく HTTP/1.1が主流でしたが,Webサイトが地図などの詳細画像,動画,アニメーションなどのコンテンツから構成されるようになるにつれて,HoL(Head of Line)ブロッキングの問題が表面化してきました。これは一般的に,直列処理の場合,全ての処理が完了するまでに時間が掛かるという問題です。

Vさん:HTTP/1.1では,HoLブロッキングはどのレイヤーで発生するのですか。

W課長:HTTPレイヤーと TCPレイヤーの両方で発生します。HTTPレイヤーでは,例えば Webページの表示のために 10枚の画像データをダウンロードする場合,PCからの HTTP e と,それに対するサーバからの HTTP f を一つずつ 10回実行することになり時間が掛かるので,一般的には複数の TCPコネクションで同時にダウンロードするように実装して対処します。

Vさん:HTTP/1.1では,TCPコネクションの数が増えそうですね。

W課長:それを抑えるために,HTTP/2では仮想的な通信単位であるストリームの概念が導入されました。ストリームにはそれぞれ g が付与され,一つの TCP コネクションの中で複数のストリームを利用できるようになり,HTTP セッションの多重化と h 処理ができるようになっています。

Vさん:HTTP/2 によって TCP コネクションの数も少なくて済むようですね。

W課長:さらに HTTP/3 では,TCP の代わりに UDP を利用し,ストリームは QUIC で実現することで,TCP レイヤーの HoL ブロッキングの問題を回避しています。最近の Web ブラウザの多くは HTTP/3 を実装しているので,どの HTTP バージョンが使われるかは主に HTTP サーバ側の実装に依存すると考えられます。

Vさん:つまり,TCP と UDP それぞれに対するルータの NAT 変換テーブルの管理方法の違いと,E サービスで利用可能な HTTP バージョンが分かれば,もっと改善できるということですね。

W課長:そうです。今回のケースでは,E サービスのサーバがもし HTTP/3 に対応していれば,表2の保持時間を調整することで,もっと NAT 変換テーブルを有効活用できると思います。ただし,極端な値にすると別の問題が発生するので,気を付けてください。

Vさん:分かりました。検討してみます。

表2 現在のルータの NAPT 変換エントリー保持時間
図の説明テキスト

表2 現在のルータの NAPT 変換エントリー保持時間

通信プロトコル 保持時間
TCP (SYN) 30 秒
TCP (FIN 又は RST 片方向) 60 秒
TCP (FIN 又は RST 双方向) 1 秒
UDP 300 秒
DNS 60 秒
ICMP 60 秒

保持時間:無通信状態の NAPT 変換エントリーを保持する時間

Vさんは,調査結果を U 校に報告した。その後 U 校で対策を行い,不具合は解決した。

設問と解答・解説

設問1

〔U校ネットワークの概要〕について答えよ。

(1)

本文中の ac に入れる適切な字句を答えよ。

模範解答

プライベート

採点基準(配点 3点)

正確性(内容)(3点)

  • 3: 「プライベート」と正確に解答している。
  • 1: 解答に軽微な誤記があるが、プライベートIPアドレスを意図していることが明確である。
  • 0: それ以外の解答、または無解答。

解説

組織内(ここではU校のネットワーク)で独自に割り当てて使用できるIPアドレスはプライベートIPアドレス(プライベートアドレス)です。

高得点のポイント

  • 正確なネットワーク用語「プライベート」が記述できているか

(2)

本文中の ac に入れる適切な字句を答えよ。

模範解答

グローバル

採点基準(配点 3点)

正確性(内容)(3点)

  • 3: 「グローバル」と正確に解答している。
  • 1: 解答に軽微な誤記があるが、グローバルIPアドレスを意図していることが明確である。
  • 0: それ以外の解答、または無解答。

解説

インターネット上で一意に識別され、外部との通信に必要なIPアドレスはグローバルIPアドレス(グローバルアドレス)です。内部ネットワークからインターネットへアクセスする際は、NAPTなどによりプライベートIPアドレスからこれに変換されます。

高得点のポイント

  • 正確なネットワーク用語「グローバル」が記述できているか

(3)

本文中の ac に入れる適切な字句を答えよ。

模範解答

PoE+

採点基準(配点 3点)

正確性(内容)(3点)

  • 3: 「PoE+」と正確に解答している。
  • 1: 解答に軽微な誤記があるが、PoE+を意図していることが明確である。
  • 0: それ以外の解答、または無解答。

解説

イーサネットケーブル経由で電力を供給する技術のうち、IEEE 802.3atに準拠し最大30W程度の給電が可能な規格はPoE+です。無線LANアクセスポイントなど、消費電力の大きい機器の給電に利用されます。

高得点のポイント

  • 正確な規格名「PoE+」が記述できているか

(4)

本文中の下線①について,DHCP サーバは受け取った giaddr フィールドの情報を使って何を識別するかを, 15字以内で答えよ。

模範解答

PCが属するセグメント

採点基準(配点 3点)

知識・理解度(内容)(2点)

  • 2: DHCPリレーエージェントが、PCが属するセグメントを識別するための情報をセットすることを理解している。
  • 1: PCのセグメント情報に関連する記述はあるが、不十分または不明確である。
  • 0: 的外れな記述、または無解答。

論理性(構造)(1点)

  • 1: 問われている「何を識別するか」に対して、適切な名詞句で簡潔に答えられている。
  • 0: 文末が不自然であるか、論理的なつながりが不明確である。

解説

DHCPリレーエージェントは、PCからのブロードキャストによるIPアドレス割り当て要求(DHCP Discover)を受信すると、自身が受信したインターフェースのIPアドレスを giaddr (Gateway IP Address)フィールドにセットしてDHCPサーバに転送します。これにより、DHCPサーバは要求元のPCが属するセグメントを識別し、適切なIPプールからアドレスを割り当てることができます。

高得点のポイント

  • DHCPリレーエージェントが、PCが属するセグメントを識別するための情報をセットすることを理解しているか
  • 簡潔に適切な名詞句でまとめられているか

設問1では,(2)の正答率がやや低かった。DHCP及びDHCPリレーエージェントは企業ネットワークでは広く用いられているので,その仕組みと動作をよく理解しておいてほしい。

設問2

(1)

本文中の下線②について, Vさんがインターネット接続帯域の不足だけではなく, NAPT処理能力の不足という仮説を立てた理由を, 40字以内で答えよ。

模範解答

ログイン画面が表示されない事象が一部かつ不特定のPCだから

採点基準(配点 2点)

知識・理解度(内容)(1点)

  • 1: 事象が「一部かつ不特定のPC」で発生しているという事実を読み取れている。
  • 0: 事象の限定性について触れられていない、または無解答。

論理性(構造)(1点)

  • 1: その事象がNAPT処理能力の不足を疑う理由として論理的に結びついている。
  • 0: 論理的な繋がりが不明確である、または文意が通らない。

解説

インターネット接続帯域の不足であれば、通信の遅延が生じるため全体的に影響が出るはずです。しかし、今回は「一部かつ不特定のPC」でセッション自体が確立できずログイン画面が出ないという症状です。これはNAPTのポート枯渇やNATテーブルのエントリー数上限に達した際の典型的な挙動であり、そこからNAPT処理能力の不足を仮説として導き出しています。

高得点のポイント

  • 事象が「一部かつ不特定のPC」で発生しているという事実を読み取れているか
  • その事象がNAPT処理能力の不足を疑う理由として論理的に結びついているか

(2)

本文中の d に入れる適切な字句を答えよ。

模範解答

帯域確保

採点基準(配点 2点)

正確性(内容)(2点)

  • 2: 「帯域確保」と正確に解答している。
  • 1: 解答に軽微な誤記があるが、帯域確保を意図していることが明確である。
  • 0: それ以外の解答、または無解答。

解説

QoS(Quality of Service)の機能において、特定の重要な通信(業務システムやWeb会議など)に対して最低限必要な帯域を割り当てて確保する設定は帯域確保です。

高得点のポイント

  • ネットワーク制御の用語として「帯域確保」が記述できているか

(3)

表1について, NAPT変換エントリーを作成する際に, ルータ自身が割り当てている値を, (i)〜(v)の記号で全て答えよ。

模範解答

(ⅲ)

(ⅳ)

採点基準(配点 2点)

正確性(内容)(2点)

  • 2: 「(ⅲ)」「(ⅳ)」の両方を正しく解答している。
  • 1: 「(ⅲ)」「(ⅳ)」のいずれか一方のみ正しく解答している。
  • 0: 正答が含まれていない、または無解答。

解説

NAPT(Network Address Port Translation)では、内部ネットワークのPCからの通信をインターネットへ中継する際、送信元IPアドレスをルータ自身のWAN側IPアドレスに変換し、同時に送信元ポート番号をルータが管理・割り当てる一意のポート番号に変換します。これにより、1つのグローバルIPアドレスで複数の内部PCが同時に通信できるようになります。

高得点のポイント

  • ルータ自身が割り当てる要素として「送信元IPアドレス(iii)」と「送信元ポート番号(iv)」の両方を選択できているか

(4)

本文中の下線③について, 現状の設定で問題なく同時利用できるPC台数の上限を, 整数で答えよ。ここで, PC以外の通信は考慮しないものとする。

模範解答

327

配点 2

解説

NAPTにおいて同時に変換できるセッションの数は、ルータが割り当て可能なポート番号の総数に依存します。利用可能なポート総数を、PC1台あたりが消費する最大セッション数で割ることで、問題なく同時利用できるPC台数の上限が計算できます。本問の設定における理論値を算出すると 327327 台となります。

(5)

また, 全てのPCが問題なく同時利用するために, ルータのNAT変換テーブルのエントリー数を最低幾つ以上に設定すればよいかを, 整数で答えよ。ここで, PC以外の通信は考慮しないものとする。

模範解答

120000

配点 2

解説

全てのPCが問題なく同時に通信を行うためには、「全PC台数 ×\times PC1台あたりの最大同時セッション数」に相当するNAPT変換エントリーが必要になります。本問の条件に基づき計算すると、必要なNAT変換テーブルのエントリー数は 120000120000 となります。

設問2では,(1)の正答率が低かった。トラブルシューティングにおいて,事実を整理し,そこから仮説を論理的に組み立てることは重要である。本文中の情報をきちんと読み取り,正答を導き出してほしい。

設問3

(1)

本文中の下線④について, 全ての処理が完了するまでに時間が掛かる理由を, 30字以内で答えよ。

模範解答

先行の処理が終わるまで後続の処理が待たされるから

採点基準(配点 4点)

知識・理解度(内容)(2点)

  • 2: 先行の処理が完了するまで後続の処理が待機させられること(Head-of-Line Blocking)を的確に説明している。
  • 1: 処理の遅延要因について触れているが、先行処理と後続処理の関係性がやや不明確である。
  • 0: 的外れな記述、または無解答。

論理性(構造)(2点)

  • 2: 時間が掛かる理由として、論理的かつ簡潔にまとまっている。
  • 1: 理由の形にはなっているが、やや冗長であるか、文脈に少し不自然さがある。
  • 0: 理由としての構文になっていない、または意味が通らない。

解説

HTTP/1.1のパイプライン処理では、複数のリクエストを並行して送信できますが、レスポンスはリクエストの順序通りに返す必要があります。そのため、先行する重い処理のレスポンスが遅延すると、後続の処理が完了していても待たされるというHead-of-Line Blocking (HoLB) が発生します。

高得点のポイント

  • 先行の処理が完了するまで後続の処理が待機させられること(Head-of-Line Blocking)を的確に説明しているか
  • 時間が掛かる理由として、論理的かつ簡潔にまとまっているか

(2)

本文中の eh に入れる適切な字句を答えよ。

模範解答

リクエスト

採点基準(配点 4点)

正確性(内容)(4点)

  • 4: 「リクエスト」と正確に解答している。
  • 2: 解答に軽微な誤記があるが、リクエストを意図していることが明確である。
  • 0: それ以外の解答、または無解答。

解説

WebブラウザなどのクライアントからWebサーバに対して送信されるデータの要求はリクエストと呼ばれます。

高得点のポイント

  • HTTPの基本的なメッセージ「リクエスト」を正しく記述できているか

(3)

本文中の eh に入れる適切な字句を答えよ。

模範解答

レスポンス

採点基準(配点 4点)

正確性(内容)(4点)

  • 4: 「レスポンス」と正確に解答している。
  • 2: 解答に軽微な誤記があるが、レスポンスを意図していることが明確である。
  • 0: それ以外の解答、または無解答。

解説

リクエストを受け取ったサーバが、処理結果としてクライアントに返すデータはレスポンスと呼ばれます。

高得点のポイント

  • HTTPの基本的なメッセージ「レスポンス」を正しく記述できているか

(4)

本文中の eh に入れる適切な字句を答えよ。

模範解答

ストリームID

採点基準(配点 4点)

正確性(内容)(4点)

  • 4: 「ストリームID」と正確に解答している。
  • 2: 解答に軽微な誤記があるが、ストリームIDを意図していることが明確である。
  • 0: それ以外の解答、または無解答。

解説

HTTP/2では、1つのTCPコネクション内で複数の「ストリーム」を作成して通信を多重化します。それぞれのストリームを識別するために割り当てられる識別子がストリームIDです。

高得点のポイント

  • HTTP/2の多重化に用いられる「ストリームID」を正しく記述できているか

(5)

本文中の eh に入れる適切な字句を答えよ。

模範解答

並列

採点基準(配点 4点)

正確性(内容)(4点)

  • 4: 「並列」と正確に解答している。
  • 2: 解答に軽微な誤記があるが、並列を意図していることが明確である。
  • 0: それ以外の解答、または無解答。

解説

ストリームを用いることで、複数のリクエスト・レスポンスを並列に処理できるようになり、HTTP/1.1の課題であったHead-of-Line Blockingが解消されます。

高得点のポイント

  • 処理の実行方式として「並列」を正しく記述できているか

(6)

本文中の下線⑤の保持時間の調整について, どの通信プロトコルをどのように変更するか, 25字以内で答えよ。

模範解答

UDPの保持時間を300秒より小さくする。

採点基準(配点 4点)

知識・理解度(内容)(2点)

  • 2: 対象プロトコルが「UDP」であることと、その「保持時間を小さくする(短くする)」ことの両方を示している。
  • 1: 対象プロトコルか変更内容のいずれかが欠けている、または不正確である。
  • 0: 的外れな記述、または無解答。

論理性(構造)(2点)

  • 2: 「UDPの保持時間を300秒より小さくする」など、具体的な数値や方向性が明確に記述されている。
  • 1: 表現がやや曖昧であるか、文意が取りづらい箇所がある。
  • 0: 意味が通らない、または理由や方法の記述として不適切である。

解説

HTTP/3(QUIC)はトランスポート層プロトコルとしてUDPを使用します。UDPはコネクションレスのプロトコルであるため、NAPTルータは一定時間通信がない場合に無通信と判断してエントリーを削除します。このタイマー(保持時間)を短く設定変更することで対応します。

高得点のポイント

  • 対象プロトコルが「UDP」であることと、その「保持時間を小さくする(短くする)」ことの両方を示しているか
  • 具体的な方向性が明確に記述されているか

(7)

また, それによる効果を45字以内で答えよ。

模範解答

未使用のUDPフローによるNAPT変換エントリーを早期に削除できる。

採点基準(配点 4点)

知識・理解度(内容)(2点)

  • 2: 未使用のUDPフローによるNAPT変換エントリーが早期に削除されるというメカニズムを理解している。
  • 1: エントリーの削除やリソースの解放について触れているが、UDPや未使用フローという条件が不明確である。
  • 0: 的外れな記述、または無解答。

説得力(考察)(2点)

  • 2: タイマー変更による直接的な効果として、テーブル枯渇防止につながる論理展開が説得力を持って記述されている。
  • 1: 効果についての記述はあるが、因果関係の説得力がやや弱い。
  • 0: 論理の飛躍がある、または意味が通らない。

解説

UDPタイマーを短縮することで、すでに通信が終了している(未使用の)UDPフローに割り当てられたNAPT変換エントリーが早期に削除されます。これによりリソースが早く解放され、ポート枯渇などのトラブルを防ぐことができます。

高得点のポイント

  • 未使用のUDPフローによるNAPT変換エントリーが早期に削除されるというメカニズムを理解しているか
  • タイマー変更による直接的な効果として、NAPTのテーブル枯渇防止につながる論理展開が説得力を持って記述されているか

設問3では,(2)gの正答率が低かった。HTTP/2の基本的な用語なので覚えておいてほしい。また,(3)の正答率がやや低かった。通信に関わる各種タイマーを調整することで,ネットワークのパフォーマンスを最適化するスキルを身に付けておいてほしい。