令和5年度 秋期 エンベデッドシステムスペシャリスト試験 午後II 問題 問2 マルチコアプロセッサへの処理割当て設計(論文)

テクノロジ組込み・IoTハードウェアOS・ソフトウェア

この問題は2023(R5)秋 エンベデッドシステムスペシャリスト 午後IIに出題されたものです。出題時点の法令・制度に基づく内容のため、現行の内容と一致しない場合があります。

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学習ガイド

マルチコアプロセッサを用いた組込みシステムでの処理割当てを論じる午後Ⅱの問題です。解答例は非公表のため、設問ア〜ウの要求と採点基準から論述の設計図を組み立てます。鍵は、システムの用途と要求性能を踏まえて「どの処理をどのコアに、どのような理由で割り当てたか」を具体的に書くことで、リアルタイム性を要する制御処理とスループット重視の処理をどう分離したか、コア間通信の同期や競合をどう扱ったか、安全性・セキュリティにどう配慮したかまで一貫させる必要があります。抽象的な割当て論に留まらない具体性が合否を分けます。

この記事で押さえる論点

  • 組込みシステムの用途・構成とマルチコア採用の目的を結び付けて述べる
  • 各コアへの処理割当ての理由をリアルタイム性・負荷分散の観点で論述する
  • コア間通信・安全性・セキュリティへの配慮と解決策の評価を具体化する

問題本文

組み込みシステムにおけるマルチコアの利用について

組込みシステムでは,機能の複雑化・高度化,及び処理の増加に伴い,マルチコアプロセッサを用いることが増えている。例えば,一つのプロセッサ内に,CPUコアを複数内蔵したもの,CPUコアに加えDSP・GPUを内蔵したものなどが利用されている。

マルチコアプロセッサの活用に当たり,各コアにどのような処理を割り当てるかの検討が必要となる。高速化のための並列化の検討においては,タスクとデータのどちらに着目するかという観点がある。タスクの並列化では,例えば,異なるセンサーそれぞれのデータの処理を異なるタスクに分割し,それぞれのタスクを各コアに割り当て,同時並列に実行させる方法がある。データの並列化では,例えば,カメラデータの色調補正など,大量のデータを依存関係のない小単位に分割し,分割したそれぞれのデータに対して同じ処理を各コアで同時並列に実行させる方法がある。いずれの場合においても,扱うデータの依存性,処理の順序性に着目し,対象の組込みシステムに応じた処理・データの分割とコアへの割り当てを行う。

分割した処理の各コアへの割り当てには,同じCPUコアを複数持つマルチコアプロセッサの場合,OSの機能を用いて自動的に割り当てる方法があるほか,処理を明示的に分離する方法もある。例えば,安全性・セキュリティへの対応,応答性,又はライセンスの制限への対応においては,特定の処理を実行するコードを特定のCPUコアに明示的に割り当て,ほかからのアクセスを制限する。

マルチコアプロセッサでは,複数のコアがメモリを共有することなどによって,コア間の通信を高速に行うことができる利点があるものの,メモリなどの資源の競合の問題が発生し得る。また,あるコアで実行しているプログラムに不具合があった場合に,ほかのコアの処理にまで影響を及ぼす可能性もある。特に,機器の制御を行う組込みシステムでは,安全性の観点から,これらの問題が発生しないよう,また,発生しても極力影響を限定するような処置を取ることが求められる。

組込みシステムでのマルチコアの利用においては,組込みシステムが実現する機能・性能に鑑み,適切なマルチコアプロセッサを選択し,各コアに処理をどのように割り当てるか,コア間・タスク間の通信をどのように制御するか,安全性・セキュリティにも考慮して設計することが求められる。

あなたの経験と考えに基づいて,設問ア~ウに従って解答せよ。
なお,解答欄には,文章に加えて,図・表を記載してもよい。

設問と解答・解説

設問ア

あなたが携わったマルチコアプロセッサを用いた組込みシステムについて,組込みシステムの用途,構成要素,マルチコアプロセッサを利用するに至った経緯・目的,及び目標を 2 ページ(800 字相当)以内で答えよ。

模範解答

模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。

採点基準(配点 34点)

知識・理解度(内容)(17点)

  • 17: 用途、構成要素、経緯、目的、目標が、対象システム固有の特徴を踏まえて非常に具体的に記述されている。
  • 13: 要求された各要素が具体的に記述されているが、一部にやや一般的な説明が含まれる。
  • 9: 各要素について一通り記述されているが、具体性に欠ける部分が多い。
  • 4: 記述内容が不十分であり、対象システムの特徴が明確に伝わらない。
  • 0: 全く記述されていない、または設問の趣旨に反する。

論理性(構造)(17点)

  • 17: 経緯から目的、目標に至る論理展開が極めて自然であり、システムの要件が非常に明確に理解できる。
  • 13: 論理展開は概ね自然であり、全体としてシステムの要件が理解できる。
  • 9: 経緯や目的の関連性がやや不明瞭であるが、最低限の筋は通っている。
  • 4: 論理展開が不明確であり、目的と目標の整合性が取れていない。
  • 0: 全く論理的でない、または無関係な内容が記述されている。

解説

本問は、あなたが携わったマルチコアプロセッサを用いた組込みシステムに関して、システムの基本的な特徴や要件、そしてマルチコアプロセッサを採用するに至った背景を明確にすることが求められます。

高得点のポイント

  • 対象とする組込みシステムの用途と構成要素を具体的に示していること。
  • マルチコアプロセッサを利用するに至った経緯と目的について、単なる一般論ではなく、携わったシステム固有の事情(処理性能の不足、リアルタイム性の要件など)に基づき説明していること。
  • その目的から導出されるシステムの目標が定量的・定性的に明確に設定されていること。

設問イ

設問アで答えた組込みシステムにおいて,マルチコアプロセッサを利用する上での組込みシステムの制約,各コアに対してどのような理由でそれぞれにどの処理を割り当てたか,コア間の通信において考慮した事項,安全性・セキュリティなどの考慮,解決すべき課題とその解決方法について,2 ページ(800 字相当)以上,かつ,4 ページ(1,600 字相当)以内で具体的に答えよ。

模範解答

模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。

採点基準(配点 33点)

知識・理解度(内容)(17点)

  • 17: 制約、処理割当てとその理由、コア間通信、安全性等の各項目が、対象システムの制約を踏まえて極めて詳細に記述されている。
  • 13: 概ね具体的に記述されているが、一部の項目でやや深みが不足している。
  • 9: 求められた項目に言及しているが、記述が表面的な一般論にとどまる箇所が多い。
  • 4: 記述内容が乏しく、特定部分の単なる実装報告になっているなど、不十分である。
  • 0: 全く記述されていない、または設問の趣旨に反する。

説得力(考察)(16点)

  • 16: 課題とその解決策がシステム全体の最適設計の観点から非常に説得力をもって論じられている。
  • 12: 解決策に妥当性があり、一定の説得力を持って論じられている。
  • 8: 解決策が提示されているが、論拠が弱く説得力にやや欠ける。
  • 4: 解決策の提示が曖昧であり、課題との関連性が薄い。
  • 0: 考察が全く見られない。

解説

本問では、設問アで提示したシステムを前提に、マルチコアプロセッサを利用する上での具体的な設計や課題解決のプロセスが問われます。

高得点のポイント

  • マルチコアプロセッサを利用する上でのシステム固有の制約を明確にしていること。
  • 各コアへの処理の割当てについて、その理由(負荷分散、リアルタイム性の確保など)とともに具体的に示していること。
  • コア間通信安全性・セキュリティに関する考慮事項が、システムの特性を踏まえて詳細に述べられていること。
  • 課題とその解決方法が一般論にとどまらず、特定部分の実装報告に偏ることもなく、システム全体の最適設計の観点から論理的に記述されていること。

設問ウ

設問イで答えた内容において,目標の達成度,解決方法の評価,今後の課題について,1.5 ページ(600 字相当)以上,かつ,3 ページ(1,200 字相当)以内で具体的に答えよ。

模範解答

模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。

採点基準(配点 33点)

知識・理解度(内容)(17点)

  • 17: 目標の達成度、解決方法の評価、今後の課題が、これまでの記述と整合し極めて具体的に述べられている。
  • 13: 各項目について具体的に述べられているが、一部の関連性がやや弱い。
  • 9: 項目について一応の記述はあるが、深掘りされておらず抽象的である。
  • 4: 記述が大幅に不足しており、客観的な評価や課題の提示が不十分である。
  • 0: 全く記述されていない、または設問の趣旨に反する。

説得力(考察)(16点)

  • 16: 自身の行った課題解決策を客観的かつ論理的に評価し、的確な今後の課題を導き出せている。
  • 12: 解決策の評価は妥当であり、今後の課題にも一定の説得力がある。
  • 8: 評価や今後の課題の根拠が乏しく、説得力が不十分である。
  • 4: 主観的な記述に終始しており、説得力がほとんどない。
  • 0: 全く考察されていない。

解説

本問では、これまでに述べた解決方法の有効性を振り返り、結果の評価と今後の展望を論じることが求められます。

高得点のポイント

  • 設問アで掲げた目標に対する達成度を客観的に評価していること。
  • 採用した解決方法の有効性や妥当性について、具体的な成果や生じた問題点を含めて評価していること。
  • 評価に基づき、将来のシステム拡張や運用に向けた今後の課題を的確に抽出していること。