2026年度宅建試験の統計対策:一次資料で読む不動産市況
2026年度(令和8年度)の宅建試験に向けて、地価、住宅着工、土地取引、不動産業の業績、宅建業者数、空き家の動向を整理します。押さえたいのは、地価は上昇が続く一方、新設住宅着工は減少していることです。価格、建設戸数、取引件数はそれぞれ異なる指標なので、一つの動きからほかの統計を推測しないようにしましょう。
数値と動向の根拠は、国土交通省、財務省、総務省統計局、不動産適正取引推進機構(RETIO)が公表した原資料です。資料の確認基準日は2026年10月1日。学習上の重点や確認問題は、これらの資料に基づくSpine独自の整理です。今年度の出題資料・出題内容が確定しているという意味ではありません。
統計は資料名と対象年をセットで読む
宅建の統計問題では、試験の年と統計の対象年が一致するとは限りません。例えば、令和7年度の問48では、令和7年地価公示、令和6年計の住宅着工、令和5年度の法人企業統計、令和7年版土地白書が使われています。RETIOの令和7年度試験問題・問48で確認できます。
この記事で扱う主な資料と対象時点は、次のとおりです。
| 資料 | 記事で扱う対象時点・期間 | 公表時期 |
|---|---|---|
| 令和8年地価公示 | 2026年1月1日時点。変動率は前年との比較 | 2026年3月 |
| 建築着工統計調査報告 令和7年計 | 2025年1〜12月 | 2026年1月 |
| 令和8年版土地白書 | 土地取引は2025年、国土利用は2023年 | 2026年7月 |
| 法人企業統計 令和6年度 | 2024年度 | 2025年9月 |
| 法人企業統計 令和7年度 | 2025年度 | 2026年9月 |
| 宅建業法の施行状況調査 令和6年度 | 業者数は2025年3月末 | 2025年10月 |
| RETIOの令和7年度末統計 | 2026年3月末 | 2026年6月 |
| 令和5年住宅・土地統計調査 基本集計 | 2023年10月1日 | 2024年9月 |
特に法人企業統計は、昨年度の出題で使われた資料の年次から考え、令和6年度を先に学ぶ構成としています。これは学習順序の提案です。最新版の令和7年度も併記しているので、問題文が指定する年度に合わせて使い分けてください。
地価は5年連続で上昇
令和8年地価公示による、前年からの地価変動率は次のとおりです。地価公示は毎年1月1日時点の標準地の価格を示すもので、この表は2026年中の今後の値動きを予測した数字ではありません。
| 地域 | 全用途平均 | 住宅地 | 商業地 |
|---|---|---|---|
| 全国 | +2.8% | +2.1% | +4.3% |
| 三大都市圏 | +4.6% | +3.5% | +7.8% |
| 東京圏 | +5.7% | +4.5% | +9.3% |
| 大阪圏 | +3.8% | +2.5% | +7.3% |
| 名古屋圏 | +2.3% | +1.9% | +3.3% |
| 地方圏 | +1.2% | +0.9% | +1.6% |
全国・三大都市圏・地方圏では、全用途平均・住宅地・商業地がいずれも5年連続で上昇しました。ただし、全国の住宅地の上昇率は前年と同じです。東京圏・大阪圏では3区分とも上昇幅が拡大し、名古屋圏では3区分とも縮小しました。地方圏は全用途平均・住宅地の上昇幅が縮小し、商業地は前年と同じでした。
国交省は、都市中心部のマンション需要や店舗・ホテル需要、オフィスの収益性向上などを地価上昇の背景として説明しています。
ここで区別したいのが、上昇幅の縮小と価格の下落です。名古屋圏の住宅地は前年の+2.3%から+1.9%になりましたが、価格自体は上昇しています。また、全国平均の上昇は、すべての地点の上昇を意味しません。
新設住宅着工は約74万戸で3年連続減少
令和7年の新設住宅着工戸数は740,667戸で、前年比6.5%減、3年連続の減少でした。ここでいう「令和7年」は2025年1〜12月の暦年です。4月から翌年3月までの年度計とは区別します。
| 区分 | 令和7年の戸数 | 前年比 | 連続減少 |
|---|---|---|---|
| 総戸数 | 740,667戸 | −6.5% | 3年 |
| 持家 | 201,285戸 | −7.7% | 4年 |
| 貸家 | 324,991戸 | −5.0% | 3年 |
| 分譲住宅 | 208,169戸 | −7.6% | 3年 |
| 分譲住宅のうちマンション | 89,888戸 | −12.2% | 3年 |
| 分譲住宅のうち一戸建住宅 | 115,935戸 | −4.3% | 3年 |
まず覚えたいのは、持家・貸家・分譲住宅の主要3区分がすべて減少したことと、持家だけは4年連続の減少であることです。総戸数には給与住宅も含まれます。また、表のマンションと一戸建住宅は分譲住宅の内訳であり、分譲住宅と重ねて足しません。
新設住宅着工床面積も前年比6.6%減で、4年連続の減少でした。土地の価格を示す地価公示と、建設を始めた住宅の数を示す住宅着工統計は、測っている対象が異なります。地価上昇と住宅着工減少は両立するため、「地価が上がったので着工も増えた」と判断しないようにしましょう。
出典:国土交通省「建築着工統計調査報告 令和7年計」資料7。
土地取引件数は約130万件でほぼ横ばい
令和8年版土地白書によると、令和7年の全国の土地取引件数は約130万件で、ほぼ横ばいです。法務省「登記統計月報」を基に国交省が整理した数字で、数えているのは売買による土地所有権の移転登記の件数です。相続等を含めた所有権移転全体や、土地の筆数とは異なります。
地価が上がっていても、売買の登記件数まで大きく増えたとはいえません。「価格」と「取引件数」を分けて理解してください。
同白書に掲載された令和5年の国土利用も確認しておきましょう。国土面積は約3,780万haで、森林が約2,501万ha、農地が約430万ha。両者で国土の約8割を占めます。住宅地・工業用地等の宅地は約199万haです。白書は令和8年版でも、この国土利用の数字は令和5年のものです。
出典:国土交通省「令和8年版土地白書」本文7・10頁、図表1-2-1・1-3-1。白書の公表日は2026年7月10日です。
不動産業は令和6年度が増収増益で令和7年度が減収減益
財務省の法人企業統計では、年度によって不動産業の業績の増減方向が変わっています。試験直前に新しい数値を見たときも、古い年度の数値をすべて置き換えるのではなく、対象年度と結び付けて覚えてください。
令和6年度の不動産業
| 指標 | 金額 | 前年度比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 58兆8,245億円 | +4.2% |
| 営業利益 | 7兆1,742億円 | +12.9% |
| 経常利益 | 7兆9,796億円 | +8.7% |
令和7年度の不動産業
| 指標 | 金額 | 前年度比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 58兆6,809億円 | −0.2% |
| 営業利益 | 6兆7,590億円 | −5.8% |
| 経常利益 | 7兆2,123億円 | −9.6% |
令和6年度は3指標とも増加し、令和7年度は3指標とも減少しました。例えば、「不動産業の営業利益は7兆円を超えた」という記述は、令和6年度についてなら正しく、令和7年度についてなら誤りです。
営業利益と経常利益も区別します。営業利益は本業による利益を示し、経常利益には受取利息や支払利息などの営業外損益も反映されます。「利益」という一語でまとめて暗記すると、金額を取り違えやすくなります。
出典:財務省「年次別法人企業統計調査 令和6年度」第1〜3表、同「令和7年度」第1〜3表。公表日はそれぞれ2025年9月1日、2026年9月1日です。
宅建業者数は増加が続く
宅建業者数は、国交省の施行状況調査とRETIOの年度末統計を、資料ごとに確認します。
| 資料と対象時点 | 業者数 | 前年度比 | 連続増加 |
|---|---|---|---|
| 国交省の令和6年度施行状況調査 2025年3月末 | 132,291業者 | +1.3% | 11年 |
| RETIOの令和7年度末統計 2026年3月末 | 133,727業者 | +1.2% | 12年 |
国交省の令和6年度調査では、宅建士の総登録者数は約121万人です。約13万の業者数と、約121万の宅建士登録者数を混同しないようにしましょう。登録者数は、そのまま宅建業に従事している人数を表すものでもありません。
出典:国土交通省「令和6年度宅地建物取引業法の施行状況調査結果」。
RETIOの令和7年度末統計では、法人業者は121,747業者で1.7%増、個人業者は11,980業者で3.1%減です。全体の増加と、個人業者の減少が同時に起きています。
なお、RETIOの冊子は遡及入力等を反映しており、比較対象の令和6年度末を132,124業者としています。上表の国交省の132,291業者とは一致しません。異なる資料の数値を引き算して増加率を作らず、指定された資料の比較値を使うことが大切です。
出典:RETIO「令和7年度末 宅建業者と宅地建物取引士の統計について」宅建業者の概要、統計概要の公表ページ。
空き家は総数と内訳を区別する
総務省統計局の令和5年住宅・土地統計調査の確報では、2023年10月1日時点の状況は次のとおりです。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 総住宅数 | 6,504万7千戸 |
| 空き家総数 | 900万2千戸 |
| 空き家率 | 13.8% |
| 賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家 | 385万6千戸 |
| 上記の空き家が総住宅数に占める割合 | 5.9% |
空き家総数と空き家率は過去最高です。ただし、900万2千戸には、賃貸用、売却用、別荘などの二次的住宅も含まれます。これらを除いた空き家は385万6千戸です。「賃貸・売却用や別荘等を除いた空き家が900万戸」という記述は誤りになります。
13.8%と5.9%は、どちらも総住宅数を分母とする割合です。5.9%は「空き家全体のうちの割合」ではありません。また、2018年の空き家率13.6%から13.8%への変化は、0.2ポイントの上昇と表します。
出典:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計結果」本文1〜3頁。
確認問題で年度と増減方向を確かめる
以下は、本文の一次資料に基づくSpine作成の確認問題です。本試験の問題を転載したものではありません。まず正誤を考え、その後で答えを確認してください。
- 令和8年地価公示では、地方圏の住宅地は下落した。
- 令和7年の新設住宅着工戸数は、持家・貸家・分譲住宅がすべて前年より減少した。
- 令和6年度の不動産業の営業利益は7兆円を超え、前年度より増加した。
- 令和7年度の不動産業の売上高・営業利益・経常利益は、すべて前年度より増加した。
- 令和5年の空き家率13.8%は、賃貸・売却用や別荘等を除いた空き家の割合である。
- 令和8年版土地白書に掲載された令和7年の土地取引件数は、全国約130万件である。
| 問題 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| 1 | 誤り | 地方圏の住宅地は+0.9%。上昇幅は縮小しましたが、価格は上昇しています。 |
| 2 | 正しい | 主要3区分とも減少。総戸数は740,667戸で3年連続の減少です。 |
| 3 | 正しい | 令和6年度は7兆1,742億円、前年度比12.9%増です。 |
| 4 | 誤り | 令和7年度は3指標とも減少しています。令和6年度と区別します。 |
| 5 | 誤り | 13.8%は空き家全体の割合。賃貸・売却用及び二次的住宅を除く場合は5.9%です。 |
| 6 | 正しい | 売買による土地所有権の移転登記件数で見た数字です。 |
復習では、資料名、対象年、指標、増減方向の順に説明できるかを確かめましょう。特に「上昇幅の縮小と下落」「暦年と年度」「総数と内訳」「営業利益と経常利益」の区別が、選択肢の読み違いを防ぎます。
過去問の使い方は宅建の過去問ドリルの回し方、試験全体の配分は宅建の分野別出題分析で解説しています。