令和6年度 春期 システムアーキテクト試験 午後II 問1 人手前提業務への先進技術適用(論文)
この問題は2024(R6)春 システムアーキテクト 午後IIに出題されたものです。出題時点の法令・制度に基づく内容のため、現行の内容と一致しない場合があります。
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学習ガイド
認識AI・生成AI・RPAなどの先進技術で、人手でしか無理だと考えられていた業務を自動化した経験を論じるシステムアーキテクト午後Ⅱの問題です。模範解答は公表されないため、設問の要求分解と講評から評価される論述を組み立てます。講評では「入力業務」のような作業名だけで業務目的を掘り下げない答案が課題とされました。なぜ人手前提だったのかという理由の分析が、技術適用の説得力を決める構造になっています。
この記事で押さえる論点
- 対象業務の目的と人手でしか実現できないと考えられていた理由を明確化する
- 適用した先進技術と適用方法、効率化が可能と考えた根拠を論述する
- 適用時に生じた課題(精度・例外処理など)と対処を具体化する
出題情報
- 出題
- 2024(R6)春 システムアーキテクト 午後II 問1
- 配点
- 100点満点
- 模範解答
- 未公表(採点基準と解説から解答の方向性を読み取る)
出題趣旨・採点講評(IPA 公表)
画像や話し言葉を理解する認識AI,画像や文章などを作成する生成AI,複数のシステムを連携させるRPAツールなどの先進技術を,クラウドサービスやソフトウェアパッケージなどで容易に利用できるようになってきた。それに伴い,認識と判断のデジタル化の難しさや費用対効果が著しく小さいなど,システム化が困難であり,従来人手によってしか実現できないと考えていた業務の,大幅な効率化や自動化を実現することが可能になった。システムアーキテクトは,先進技術を適用した情報システムの構築を推進する必要がある。本問は,システム化計画の立案において,従来人手によってしか実現できないと考えていた理由,どのような先進技術をどのように適用して大幅な効率化や自動化を可能にしたのか,その適用の際に生じる様々な課題への対処方法について具体的に論述することを求めている。論述を通じて,システムアーキテクトに必要なシステム化計画の立案能力を評価する。
問1では,先進技術の適用によって,従来人手によってしか実現できないと考えていた業務を,大幅に効率化したり,自動化を実現したりした経験についての論述を期待した。多くの受験者が設問に沿って論述できていた。一方で,一部の受験者は,単なる作業を“入力業務”や“議事録作成業務”などとし,本来の業務目的を深く理解しないで論述していた。このような論述では,新技術の適用手順や方法,適用方針などが具体的に論述できていないものが多かった。例えば“銀行における振込依頼のための手書き依頼書の登録業務”など,業務目的を正しく理解して論述してほしい。また,実現した場合の効果である工数削減やコスト削減,信頼性向上などを述べるにとどまり,大幅な効率化や自動化が可能と考えた理由に触れていない論述も散見された。システムアーキテクトは,絶えず新技術を探求しつつ,業務の内容や目的を理解して適切に適用できるように心掛けてほしい。
問題本文
人手によってしか実現できないと考えていた業務への先進技術の適用について
認識AI, 生成AI, RPAツールなどを始めとした先進技術を, クラウドサービスやソフトウェアパッケージなどで容易に利用できるようになってきた。それに伴い, 認識と判断のデジタル化の難しさや費用対効果などの理由からシステム化が困難で人手によってしか実現できないと考えていた業務の, 大幅な効率化や自動化が可能になった。システムアーキテクトは, 先進技術を適用した情報システムの構築を推進する必要がある。例えば, 次のような業務への適用が考えられる。
- 医療機関の画像診断業務において, がん症例画像や正常画像を学習させた認識AIによって, がん疾患の発見を補助する。
- 広報部門の社外発表文を作成する業務において, 過去の発表文やコンサルタントの指摘内容などを学習させた生成AIに発表の趣旨を与えて発表文案を作成する。
- 注文業務において, RPAツールで入力, 連携を自動化し, 個別入力を排除する。
一方で, これらの先進技術を適用する場合, 様々な課題が生じることがある。例えば次のような, 課題と対策が考えられる。
- 画像診断業務を自動化すると, “医師でなければ, 医業をなしてはならない” という法律に抵触するおそれがある。そのため, 画像診断結果を元の画像上に表示するにとどめて, 最終的に医師が診断するなど, 自動化の範囲を限定する。
- 生成AIで学習データにインターネット上の情報を利用すると, 偏った内容や誤った内容を回答してしまうおそれがある。そのため, 根拠となる情報や参考情報を一緒に提示する。
設問と解答・解説
設問
あなたの経験と考えに基づいて, 設問ア〜ウに従って論述せよ。
(1)
あなたが先進技術を適用した業務について, 業務の内容と, その業務が人手によってしか実現できないと考えられていた理由を, 800字以内で述べよ。
模範解答
模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。
採点基準(配点 34点)
知識・理解度(内容)(17点)
- 17点: 先進技術を適用する対象業務の内容と、その業務が従来人手によってしか実現できないと考えられていた理由が、明確かつ具体的に記述されている。
- 13点: 業務の内容と人手でしか実現できない理由が記述されているが、一部具体性に欠ける部分がある。
- 8点: 業務の内容と人手でしか実現できない理由が記述されているが、表層的な記述にとどまっている。
- 4点: 業務の内容または人手でしか実現できない理由のいずれかが欠落している、あるいは両方が非常に曖昧である。
- 0点: 設問で求められている内容が記述されていない。
論理性(構造)(17点)
- 17点: 単なる作業(例:入力業務)としてではなく、本来の業務目的に照らし合わせた上で、システム化が困難であった背景が論理的に説明されている。
- 13点: 業務目的に沿った説明となっているが、システム化が困難であった背景の論理展開にやや飛躍がある。
- 8点: 業務目的の理解がやや浅く、「入力業務」などの作業レベルの記述が中心となっている。
- 4点: 業務目的が理解されておらず、事実の羅列になっており論理的なつながりがない。
- 0点: 全く論理的でない、または設問の意図から完全に逸脱している。
解説
設問の目的と背景
本問は、システムアーキテクトに必要な システム化計画の立案能力 を評価するものです。
クラウドサービスやソフトウェアパッケージの普及により、認識AI、生成AI、RPAツールなどの 先進技術 が容易に利用可能となり、従来はシステム化が困難(認識・判断のデジタル化が困難、費用対効果が小さいなど)で 人手に頼らざるを得なかった業務 を大幅に効率化・自動化できる環境が整いつつあります。設問アでは、その対象となった業務と、従来人手が必要だった理由を問うています。
高得点のポイント
- 業務目的の深い理解に基づく記述
- 単なる「入力業務」や「議事録作成業務」といった作業レベルの抽象的な記述ではなく、「銀行における振込依頼のための手書き依頼書の登録業務」のように、本来の業務目的を正しく理解 した上で具体的に論述することが求められます。
- 人手でしか実現できないと考えられていた理由の明確化
- これまでなぜシステム化が難しかったのか(例:複雑な判断が必要、非定型な言語や画像を扱うためシステム化の費用対効果が合わなかった等)を、対象業務の特性と結びつけて論理的に記述することが重要です。
(2)
設問アで述べた業務に, どのような先進技術をどのように適用したのか。大幅な効率化や自動化が可能と考えた理由を含めて, 800字以上 1,600字以内で具体的に述べよ。
模範解答
模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。
採点基準(配点 33点)
知識・理解度(内容)(17点)
- 17点: 採用した先進技術(認識AI、生成AI、RPA等)の種類とその適用方法が、手順や方針を含めて自身の経験に基づき非常に具体的に記述されている。
- 13点: 先進技術の種類と適用方法が記述されているが、手順や方針の具体性がやや不足している。
- 8点: 先進技術の種類と適用方法は記述されているが、一般的な説明にとどまり、具体性に欠ける。
- 4点: 先進技術の適用内容が極めて抽象的であるか、既存技術の枠組みを出ていない。
- 0点: 先進技術の適用について全く記述されていない。
説得力(考察)(16点)
- 16点: 単なる導入効果(工数削減等)だけでなく、なぜその技術を使えば大幅な効率化や自動化が可能と考えたのかという「理由・根拠」が、業務特性と技術の適合性の観点から説得力を持って記述されている。
- 12点: 大幅な効率化や自動化が可能と考えた理由は記述されているが、技術と業務の適合性についての考察がやや浅い。
- 8点: 大幅な効率化や自動化が可能と考えた理由に触れてはいるものの、単なる「効果(工数・コスト削減など)」の記述に偏っている。
- 4点: 大幅な効率化や自動化が可能と考えた理由が全く記述されておらず、導入後の効果のみが書かれている。
- 0点: 設問の要求事項に対して的確な考察がなされていない。
解説
設問の目的と背景
設問イでは、設問アで提示した業務に対して、どのような先進技術をどのように適用したのか、そして なぜそれで大幅な効率化や自動化が可能と考えたのか を具体的に論述することが求められます。単に新技術を使ったという事実だけでなく、システムアーキテクトとして技術の特性と業務要件の適合性をどう評価・立案したかが問われます。
高得点のポイント
- 先進技術の具体的な適用手順・方法・方針の明記
- 単に「AIを導入した」と書くのではなく、クラウドサービスやパッケージソフトをどう組み込み、どのような方針・手順で業務プロセスに適用したのかを具体的に記述する必要があります。
- 「効果」ではなく「可能と考えた理由」を論述する
- 多くの受験者が陥りがちなミスは、工数削減やコスト削減、信頼性向上といった 導入後の効果 を述べるにとどまってしまうことです。本問では、技術的特性(例:AIの画像認識精度の向上により手書き文字の読み取りが実用水準に達したため)など、大幅な効率化・自動化が可能だと判断した根拠・理由 に焦点を当てて説得力を持たせることが高得点の鍵となります。
(3)
設問アで述べた業務に先進技術を適用した際に, どのような課題が生じ, どのような対策を取ったのか。600字以上 1,200字以内で具体的に述べよ。
模範解答
模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。
採点基準(配点 33点)
論理性(構造)(17点)
- 17点: 先進技術適用時に生じた課題と、それに対する対策が論理的かつ整合性を持って記述されており、システム化の推進プロセスとして自然な展開となっている。
- 13点: 課題と対策は記述されているが、両者の関連性や論理展開にやや飛躍や不明瞭な点がある。
- 8点: 課題と対策のつながりが弱く、一般的なトラブル事例とその対応策を単に羅列したような記述になっている。
- 4点: 課題または対策のいずれかが欠落している、あるいは整合性が全く取れていない。
- 0点: 設問で求められている課題と対策が記述されていない。
説得力(考察)(16点)
- 16点: システムアーキテクトの視点から課題の本質を的確に捉え、業務要件やシステム要件の調整・仕組み作りを伴う現実的かつ具体的な対策が講じられており、高い説得力がある。
- 12点: 対策は現実的であるが、システムアーキテクトとしての専門的な視点や仕組みとしての工夫がやや不足している。
- 8点: 対策が現場レベルの単なる運用対処(人手でのカバーやチェック強化など)にとどまっており、システム的解決策としての説得力に欠ける。
- 4点: 対策が抽象的(「関係者と協議した」「テストを十分に行った」など)であり、具体的な解決策となっていない。
- 0点: 全く考察されておらず、単なる感想や事実の羅列となっている。
解説
設問の目的と背景
設問ウでは、先進技術を実際の業務に適用する過程で直面した 課題 と、その課題を乗り越えるためにシステムアーキテクトとして講じた 対策 について論述します。先進技術には予期せぬ制約や精度上の限界(例:AIの誤認識の発生、RPAの画面レイアウト変更に対する脆弱性など)がつきものであり、これらにどう向き合ったかが評価の対象となります。
高得点のポイント
- 先進技術特有の課題の抽出
- 従来のシステム開発とは異なる、先進技術ならではの課題(例:AIの学習データ不足による精度低下、非定型業務における例外処理の増加など)を具体的に挙げることが求められます。
- システムアーキテクトとしての主体的な対策
- 単に「運用でカバーした(人手で再確認した)」といった対症療法にとどまらず、システム要件の見直し、業務プロセスの再設計、フェールセーフの仕組みの導入 など、システムアーキテクトとしての専門的な工夫や仕組みによる解決策を提示することで、論述の説得力が大きく向上します。