令和7年度 秋期 システム監査技術者試験 午後II 問1 新システム導入に伴う特有リスクの監査(論文)

マネジメントシステム監査リスクマネジメントシステム戦略・企画

この問題は2025(R7)秋 システム監査技術者 午後IIに出題されたものです。出題時点の法令・制度に基づく内容のため、現行の内容と一致しない場合があります。

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学習ガイド

未経験の開発手法や新技術を用いた情報システムの導入に伴う「特有のリスク」の監査を論じる午後Ⅱの問題です。模範解答は公表されないため、講評の指摘から要求水準を読み解きます。講評では、導入前から識別済みのリスクを書いてしまう答案や、AIやIaaSといった技術それ自体をリスクと呼ぶ答案が明確に退けられました。その導入だからこそ新たに生じるリスクを特定する論理の運びが合否を分けます。

この記事で押さえる論点

  • 未経験の手法・新技術の導入で生じる「特有のリスク」を既知のリスクと区別して特定する
  • リスク評価と許容範囲内への低減策の妥当性を論じる
  • 導入決定過程を対象とする監査手続を設定する

問題本文

組織においては,事業戦略の一環として,未経験の開発手法や新技術を用いた大規模システム,機微情報を海外拠点と共有するシステムなどの新たな情報システムを導入することがある。これらの情報システムでは,現行システムの開発及び運用で既に特定されているリスクだけではなく,当該情報システム導入に伴う新たなリスク(以下,特有のリスクという)が生じる可能性がある。したがって,当該情報システム導入の決定過程においては,特有のリスクを特定して評価するだけではなく,対応策を実施することによって,そのリスクの大きさがリスク許容範囲内まで低減できるかどうかを評価する必要がある。

例えば,国を越えて個人情報を共有するシステムの導入では,他国の個人情報を保有し,活用することで生じるリスクを特有のリスクとして特定する必要がある。また,国内の個人情報保護法に基づいた対応策だけでなく,各国のルールに基づいた対応策が求められる。特有のリスクが顕在化する要因は完全には予測できない可能性があるので,リスク顕在化の防止策だけでなく,顕在化の兆候の発見策も重要となる。これらの対応策によって,特有のリスクの大きさが十分に低減可能と評価できるようになる。

システム監査人は,情報システム導入の決定過程において,特有のリスクが適切な評価方法に基づいて評価され,対応策によってそのリスクの大きさがリスク許容範囲内まで低減できると評価されているかどうかを確かめる必要がある。

あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜ウに従って論述せよ。

設問と解答・解説

設問ア

あなたが関係した情報システムの概要及びその目的,並びに導入に伴う特有のリスクについて,400字以上800字以内で述べよ。

模範解答

模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。

採点基準(配点 33点)

知識・理解度(内容)(17点)

  • 17: 情報システムの概要・目的に沿った、新たな技術や開発手法等の導入に伴う「特有のリスク」が極めて明確かつ具体的に記述されている。
  • 13: 「特有のリスク」が明確に記述されている。
  • 8: リスクの記述はあるが、「特有のリスク」としての明確さや具体性にやや欠ける(既存リスクや技術そのものをリスクとする傾向がある)。
  • 4: リスクの記述が不十分、または既存システムのリスクが大半を占める。
  • 0: 設問で求められているリスクが記述されていない。

論理性(構造)(16点)

  • 16: 情報システムの概要及び目的と、特有のリスクとの関連性が極めて論理的かつ自然に展開されている。
  • 12: 情報システムの概要及び目的と、特有のリスクとの関連性が論理的に展開されている。
  • 8: 関連性は読み取れるが、論理展開に飛躍や不明確な部分がある。
  • 4: 情報システムの概要・目的とリスクとの関連性が希薄である。
  • 0: 論理的な構成がなされていない。

解説

設問の意図と背景

本問は、未経験の開発手法や新技術を導入した大規模情報システムにおける「特有のリスク」の特定と評価に関する監査をテーマとしています。システム監査人として、導入決定過程におけるリスクマネジメントの適切性を評価する能力が問われます。

高得点のポイント

  • 特有のリスクの明確化: 他のシステムや導入前システムで既に識別されている既存のリスクではなく、新技術や新開発手法の導入に伴う「新たなリスク」に焦点を当てること。

  • リスクそのものの具体化: AIやIaaSなどの「技術そのもの」をリスクとするのではなく、それらを導入することによって生じる具体的な事象(例:学習データの偏りによる不適切な判断、クラウド設定ミスによる機密情報漏えいなど)を記述すること。

  • 論理性: 情報システムの概要・目的と、特定した特有のリスクとの間に論理的なつながりを持たせること。

設問イ

設問アで述べた特有のリスクを特定した理由,そのリスクの大きさを含めた評価方法,並びにその特有のリスクに対する防止策及び発見策について,700字以上1,400字以内で具体的に述べよ。

模範解答

模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。

採点基準(配点 33点)

知識・理解度(内容)(17点)

  • 17: 特有のリスクである理由が極めて明確であり、リスクの大きさの評価方法、防止策及び発見策が具体的に過不足なく記述されている。
  • 13: 特有のリスクである理由、評価方法、防止策及び発見策が明確に記述されている。
  • 8: 理由、評価方法、対応策のいずれかの具体性が不足している。
  • 4: 理由が不明確であり、対応策の具体性にも欠ける。
  • 0: 設問で求められている内容が記述されていない。

論理性(構造)(16点)

  • 16: 特定した理由から評価方法、防止策・発見策に至る一連の記述が極めて一貫しており、論理破綻がない。
  • 12: 一連の記述に一貫性があり、論理的に構成されている。
  • 8: 対応策の一貫性がやや不足している、または論理展開に飛躍がある。
  • 4: 各要素のつながりが不自然であり、一貫性に欠ける。
  • 0: 論理的な構成がなされていない。

解説

設問の意図と背景

本問では、設問アで挙げた「特有のリスク」を特定した理由、そのリスクの大きさの評価方法、さらに防止策と発見策の具体性と一貫性が問われています。

高得点のポイント

  • 理由の明確性: なぜそれが既存システムにはない「特有のリスク」と言えるのか、背景技術や業務特性を踏まえて明確に説明すること。

  • リスク評価の具体性: 発生可能性と影響度など、リスクの大きさをどのように評価したかの手法を具体的に記述すること。

  • 対応策の一貫性: 防止策(リスク発生を防ぐ手段)と発見策(リスク発生を検知する手段)を両方挙げ、それらが特定したリスクに対して一貫して有効な対策となっていることを論理的に示すこと。

特有のリスクである理由が不明確であったり、その対応策が一貫していなかったりする記述が散見された。

設問ウ

設問イを踏まえて,特有のリスクが適切に評価され,対応策によってそのリスクの大きさがリスク許容範囲内まで低減できることが適切に評価されているかどうかを確かめるための監査手続について,700字以上1,400字以内で具体的に述べよ。

模範解答

模範解答は公表されていません。下の採点基準と解説から、解答に求められる要素を読み取ってください。

採点基準(配点 34点)

知識・理解度(内容)(17点)

  • 17: リスク評価の適切性と、対応策によるリスク低減の評価を確かめるための監査手続が、設問イを踏まえて極めて具体的に記述されている。
  • 13: リスク評価と対応策によるリスク低減を確かめる監査手続が具体的に記述されている。
  • 8: 監査手続の記述はあるが、対応策の確認に偏るなど、特定・評価の確認手順としてはやや具体性に欠ける。
  • 4: 監査手続の記述が抽象的であり、設問イとの関連性が薄い。
  • 0: 設問で求められている監査手続が記述されていない。

説得力(考察)(17点)

  • 17: リスク特定・評価の決定過程に深く踏み込み、システム監査人としての実効性のある高度な監査手続が設定されている。
  • 13: システム監査人としての視点に基づく有効な監査手続が設定されている。
  • 8: システム監査人としての視点は感じられるが、監査手続の実効性や説得力にやや欠ける。
  • 4: 監査手続としての説得力が乏しく、表面的な確認にとどまっている。
  • 0: 監査手続としての妥当性がない。

解説

設問の意図と背景

設問イの内容を受け、システム監査人としてリスク特定・評価が適切に行われ、対応策によりリスクが許容範囲内に低減できるかを確かめるための監査手続を設定する能力が問われます。

高得点のポイント

  • 決定過程への着目: 単に対応策が実装されているかを確認するだけでなく、導入決定過程においてリスク特定・評価が適切に実施されたかを確かめる手続を含めること。

  • 実効性のある監査手続: どのような文書や記録を閲覧し、誰にどのようなヒアリングを行うのかなど、監査証拠を入手するための具体的かつ実現可能な手順を記述すること。

  • 総合的な説得力: リスクの大きさが「リスク許容範囲内」まで低減できると判断した根拠が妥当であるかを評価する視点を持つこと。

対応策の監査手続だけを記述している解答が散見された。